日本政治史に残るであろう2025年夏の参議院選挙が、いよいよ投開票日を迎える。だがその結果は、すでに大きな波紋を呼びつつある。
衝撃の予測――自公与党が衆院に続き、参院でも過半数を割る見通しだ。石破茂総理の退陣は早晩、避けられないだろう。国会議員がたった5人の参政党が「日本人ファースト」を掲げて比例で野党トップに躍り出るかもしれないという予測は、自公惨敗以上の衝撃を政界に与えている。グローバル化への反発という世界的潮流が、ついに日本にも到達したのだ。
反グローバリズムの旗手、参政党の急伸
今回の主役は、間違いなく「参政党」である。
たった5人の国会議員を擁する小政党が、わずか1ヶ月で政党序列を大きく塗り替えた。れいわ・共産などの第3集団を追い抜き、維新・国民・公明といった第2集団を飲み込み、自民・立憲と並ぶ勢力へと急浮上したのだ。
そのキーワードが「日本人ファースト」。
消費税やコメといった従来の争点を置き去りにして、「移民反対」というストレートな主張が選挙戦の主軸となった。
背景にあるのは、グローバル経済がもたらした現実だ。
移民政策、外国資本による土地や株の買い占め、輸入食品の添加物や農薬、医療・製薬利権への不信感。大手メディアや既存政党が正面から扱わなかった課題を、参政党は直球で取り上げた。
支持層の中心は、主婦や保守層だ。
治安や食の安全に敏感な生活者の声を吸い上げ、グローバル化への不安を明確に代弁したことで、既存政党に不信感を抱く層の受け皿となった。
欧米でトランプ現象や極右新党の躍進が示したように、これは「右」や「左」といった古いイデオロギーでは語れない。
大衆とエリート、生活者とグローバル資本の「上下対立」こそが、新たな軸なのだ。
与党惨敗と石破総理の限界
この参院選で自民党は、全国32の1人区の大半で敗れる見通しだ。
背景にあるのは、参政党が全選挙区に候補者を擁立し、自民支持層を切り崩したことである。立憲や国民が1人区で自民に競り勝つ構図は、参政党大躍進の副産物でしかない。
勝敗ラインとして掲げた「与党で過半数」も割り込むとなれば、本来であれば石破総理は即時の退陣が筋だ。
だが、昨年の衆院選でも勝敗ラインの与党過半数を割り込みながら何事もなかったように続投した過去を考えれば、今回も「居座り策」を講じる可能性は高い。
その口実が、トランプ大統領との関税交渉だ。
25%の関税引き上げが一方的に通告され、日本政府は8月1日までの猶予期間を得た。この10日間を「政治空白にできない」として政権延命を図る可能性がある。
しかし、政権の延命は長く持たない。
支持率は歴史的低水準の20%台、選挙後には1桁に突入する可能性すらある。党内ではすでに「石破おろし」の声が公然化しつつある。夏の盆休み前後には、ポスト石破レースが本格化するだろう。
与党再編と「連立相手」の争奪戦
自公政権が衆参ともに過半数を失えば、単独政権は成立しえない。
新たな総理は、立憲、国民、維新のうち、いずれかとの連立を模索せざるを得ない。参政党は衆院の議席が3人にとどまり、現時点では連立の交渉相手とはなりにくい。
立憲との「大連立」構想は、水面下で森山幹事長を軸に進んでいた。消費税増税を大義名分とする財政再建派連合だ。だが、選挙惨敗によって森山氏が失脚すれば、この構想は頓挫するだろう。
一方、国民民主は麻生派との連携を背景に、減税と引き換えに連立入りを狙う。維新も同様に、党勢回復のために政権参加を選ぶ可能性が高い。
要するに、次の総理を決める自民党総裁選は、「誰と連立を組むか」を軸に行われることになるのだ。
ポスト石破をめぐる争い
林芳正官房長官、高市早苗政調会長、茂木敏充前幹事長……。
候補者はいずれも一長一短であり、決定打に欠ける混戦状態だ。林氏は官房長官としての責任を問われ、最有力候補である高市氏は野党との人脈に乏しい。
小泉進次郎氏は農水大臣に就任してコメ改革で人気を上げたものの、農村部の反発を買ってまたもや失速した。今回は出馬を見送るのではないだろうか。
圧倒的に有力な候補はいない。
その隙間を狙うのが、茂木氏や岸田前総理だ。
なかでも岸田氏は、自公惨敗という非常事態において、党内融和と経験を強調し、再登板を画策しているともされる。大乱世だ。麻生太郎氏が再び表舞台に出る可能性さえ否定できない。
混迷する政局。
参政党という新勢力の衝撃は、単なる一過性のブームではなく、既存政治の枠組みそのものを根底から揺るがしている。
夏の参院選は、かつてない日本政治の大転換点となるだろう。