政治を斬る!

人間関係を知るほど、選挙は面白い――和歌山1区と福井2区、怨念が支配する総選挙

今回の解散総選挙は、「与党か野党か」という単純な二択では語れない。
自民、中道、維新、国民、参政――全国各地で与野党がぐちゃぐちゃに入り乱れる大乱戦だ。しかも争点は政策ではない。人間関係、それも長年こじれにこじれた怨念である。

象徴的なのが、和歌山1区と福井2区だ。
ここで起きているのは、理念や政策の競争ではない。政治の世界で積み重なってきた裏切り、遺恨、復讐が前面に出た、泥沼の選挙である。

和歌山1区――与党も野党も分裂する怨念の戦場

和歌山1区は、与党も野党も分裂し、骨肉の争いとなった。
前回は自民党の山本大地と、維新の林佑美が124票差で激突。山本が辛うじて逃げ切り、林は比例復活した。

だが、その林が維新の党運営に反発して離党。今回は国民民主党の公認で出馬する。
国民民主党は過去2回の国政選挙で躍進したが、実は近畿では選挙区勝利がない。和歌山1区は、結党メンバーの岸本周平が知事転身まで守ってきた特別な選挙区であり、岸本の急逝後、国民にとっては「どうしても取り戻したい」場所だ。そこで白羽の矢が立ったのが、現職の林だった。

当然、維新は黙っていない。
元県議の浦平美博を擁立し、林への復讐戦に打って出た。本拠地・大阪ならともかく、保守王国・和歌山で自民党に勝てる見込みは乏しい。狙いは勝利よりも、「裏切り者」を叩くことにある。

国民と維新の関係も、もはや修復不能だ。
前原誠司は国民を離れ維新へ。維新を離党した足立康史は国民へ。そこへ林の引き抜きが重なった。選挙というより、怨念の応酬である。

和歌山1区の結末――3人そろって国会へ?

そこに立憲・公明の中道改革連合、参政党も参戦し、5大勢力が激突する象徴的選挙区となった。
これだけ票が割れれば、有利なのは自民現職の山本だろう。維新の浦平は比例復活が視野に入る。国民の林も接戦に持ち込めば比例で救われる可能性がある。

結果次第では、自民・国民・維新という因縁の3人が、仲良く国会に並ぶという皮肉な結末すらあり得る。怨念の戦いが、全員当選という形で終わる可能性があるのだ。

福井2区――高市総理と義理の息子

福井2区もまた、政策ではなく人間関係がすべてを支配する。
焦点は、高市総理の義理の息子の出馬である。

前回は、自民党が真っ二つに割れた。
裏金問題で公認を得られなかった高木毅は無所属で出馬。そこに、高市の夫で元議員の山本拓も無所属で参戦した。両者は30年前のスキャンダル対応をめぐり、完全に決裂していた。結果は共倒れ。自民は議席を失った。

今回、高木は出馬を断念。山本拓も出馬せず、代わりに長男の山本健が名乗りを上げた。
自民党県連は公認を上申したが、党本部は却下した。背景には、週刊誌によるスキャンダル追及や、高市自身が掲げてきた「世襲制限」との矛盾があるとみられる。

それ以上に大きいのは、高市が解散を麻生副総裁や鈴木幹事長に相談なく決断したことだ。
不満を抱く党重鎮への遠慮から、公認を押し切れなかった。福井2区は、高市の党内基盤の弱さを映し出している。

福井2区の行方――利用される斉木議員

自民党は、維新を離党して自民会派に入った斉木武志を「支持」すると決めた。
前回、斉木は比例復活したが、今回は無所属出馬で比例はない。衆院解散で数合わせの意味が薄れ、斉木は「必要不可欠」ではなくなった。

自民は斉木を使い、高市の世襲批判をかわそうとしたとも言える。

山本は公認を却下された後も、無所属で出馬する意向を表明した。ところが、その直後に出馬断念に転じた。世襲批判をかわすため、党本部から抑え込まれたのであろう。
一方、保守分裂・野党乱立の前回の福井2区を制した立憲の辻英之は今回、中道公認で出馬し、前回は敵として戦った公明党の票をどこまでまとめられるかが焦点となる。

怨念が交錯する福井2区。
表に出てこない主役は、高市総理その人かもしれない。