自民党総裁レースの本命である小泉進次郎氏が出馬会見を行った。最大のポイントは「総理に就任したら、できるだけ早期に衆院を解散する」と表明したことだ。
総理になる前、しかも総裁選が始まる前に、解散時期に言及するのは極めて異例である。総裁選に勝つ自信があるうえ、「ボロが出る前に、できるだけ早く解散総選挙に挑む」と腹を決めているのであろう。
マスコミはこれまで「10月解散・11月10日投開票」の日程が有力と報じてきた。9月27日に新総裁が誕生した後、国会で新首相を指名し、組閣人事、所信表明、代表質問、さらには予算委員会で与野党の論戦を経て衆院解散は早くても10月18日ごろになるという見立てだった。
けれども私は、進次郎氏が首相になる場合、ボロが出る前に解散総選挙へ最短距離で進むと見ていた。具体的には丁々発止の討論で失言が出やすい予算員会を吹っ飛ばし、代表質問までで切り上げ、10月11日ごろに衆院解散して10月27日投開票へ突き進むシナリオである。
進次郎氏の出馬会見をみていると、やはり10月27日投開票の超短期決戦を念頭に置いているのではないだろうか。
進次郎氏は出馬会見直後に地元・神奈川新聞のインタビューに応じ、7月の東京都知事選で社会問題となった「掲示板ジャック」や「不適切な選挙ポスター」を防ぐための公職選挙法改正について、「国民の信を問うのが最優先だ」と述べた。与野党では、少なくとも公選法改正を経た上で衆院を解散することが暗黙の前提となっていたが、進次郎氏は公選法改正にこだわらず、早期の衆院解散を優先する姿勢を鮮明にしたのだ。
この発言もまた進次郎氏が10月27日投開票に突き進んでいることを示していると言えるだろう。
進次郎氏の出馬会見は、父・小泉純一郎元首相が短いフレーズを重ねて変革を訴えた姿をほうふつさせ、小泉劇場の再来を予感させた。
環境相時代には気候変動問題は「セクシーに取り組むべきだ」、温室効果ガス排出を2013年度比で46%削減する目標の根拠について「おぼろげながら(数字が)浮かんできた」と言って失笑を買ったことを踏まえ、フリー記者から「首相になってG7に出席したら、知的レベルの低さで恥をかくのではないか。それこそ日本の国力の低下にならないか。それでも総理を目指すのか」と突っ込まれたが、「私に足りないところがあるのは事実。それを補ってくれる最高のチームをつくる」とクールにかわしたのも印象的だった。
ネットでは好意的な書き込みが相次ぎ、進次郎氏は株をあげた。環境相時代に比べれば「防衛力」を身につけたようである。
けれども総裁選で石破茂元幹事長や茂木敏充幹事長らベテラン勢から事細かな政策論議を吹っ掛けられて立ち往生し、軽率な発言が再び飛び出すリスクは少なくない。総裁選を乗り切っても、その後の国会の予算委で立憲民主党代表選の勝利が有力視されている野田佳彦元首相らに丁々発止の論戦を仕掛けられ、うっかり口を滑らせる恐れもある。
だからこそ予算委を開催せず、ボロが出る前に解散総選挙にまっしぐらに急行する「10月27日投開票」の超短期決戦シナリオが練られているのだろう。
小泉劇場で自民党の裏金事件を吹き飛ばすーーそんな政治が許されていいはずがない。イメージ先行の小泉劇場にマスコミがどう向き合うのか。政治報道の真価が問われる局面がやってくる。