政治を斬る!

自公連立崩壊で首班指名は大混戦 高市か玉木か、それとも第三の波乱か

自公連立政権の崩壊が、日本政治の地図を一変させた。自民党の高市早苗新総裁がなお本命ではあるものの、国民民主党の玉木雄一郎代表が急浮上し、衆院の首班指名選挙はかつてない混戦に突入している。麻生太郎副総裁が仕掛けた「公明切り」をきっかけに、政界は今、燃え盛るような権力闘争の渦中にある。

衆院議員は465人。過半数の233票を得た者が総理大臣となる。だが、第一回投票で誰も過半数に届かない見通しだ。決選投票では上位二人の一騎打ちとなり、過半数に届かなくても得票の多い方が総理に選ばれる。昨年秋の首班指名では自民の石破茂氏と立憲の野田佳彦氏が競り合い、無効票が84も出た末に石破氏が辛勝した。今回もその再現となる可能性が高い。

現在、自民党は196議席。高市氏を選んだばかりで、アンチ高市派の造反の余地は小さい。連立を離脱した公明党は24議席。斉藤鉄夫代表は「第一回投票では斉藤鉄夫と書く」と明言したが、決選投票では野党に投票するのは考えにくいとしている。とはいえ、離脱直後に高市氏へ投票する可能性は低く、「斉藤鉄夫」と書いて無効票を投じる公算が大きい。

野党に目を転じると、立憲民主党は148議席。野田代表では野党がまとまらないと見て、国民の玉木代表を統一候補に推す構えだ。

しかし、玉木・榛葉ラインは麻生氏とのパイプが太く、立憲との連立には後ろ向きだ。国民民主党(27議席)は「高市とは書かないが、立憲とも組まない」という姿勢を崩していない。維新(35議席)も玉木擁立論については「立憲と国民が合意すれば考える」と距離を置く。れいわ(9)、共産(8)、有志・改革の会(7)ら少数勢力の動向も、決選投票では無視できない。

この情勢から見えるのは三つのシナリオだ。

第一は「高市逃げ切り」パターン。自民単独で196票。決選投票で公明や国民の支持を得ることは難しい。維新を取り込めるかどうかが鍵だが、簡単ではない。196票止まりで終わる可能性が高い。

それでも麻生氏は、国民と立憲の連携を阻めば、公明抜きでも勝てると踏んでいる。玉木氏が立憲と距離を置く限り、野党が統一候補を立てられず無効票が増える。結果、高市氏がギリギリで逃げ切るという計算だ。

第二は「玉木政権爆誕」パターン。高市政権阻止の世論が高まり、立憲・維新・公明が「玉木雄一郎」で結束すれば、票数では高市氏を逆転できる。しかし、その実現性は低い。

仮に立憲・維新・公明(計207票)が「玉木擁立」で結束した場合、麻生氏は高市では勝てないと判断した瞬間に、玉木擁立へ舵を切るだろう。自民に担がれる玉木に、立憲はさすがに乗れない。

自民と国民で223票。過半数には届かないが、結果的に自民と国民の連立で玉木政権が誕生する構図だ。その際、高市氏は副総理・外相として入閣し、麻生氏はキングメーカーとして権勢を強めるだろう。

第三は立憲が石破総理や斉藤代表を担ぐウルトラCだ。玉木擁立が頓挫した場合、自民党を割るか、公明党を引き込むしか、勝利への道はない。

石破総理構想は立憲支持層に受けはいいだろうが、維新など他党の賛同は見込み薄だ。公明の斉藤代表を担ぐ場合も、自民・国民が「玉木」で固まれば及ばない。

立憲は国民を野党陣営に引き込まない限り、勝利は難しいのが現状だ。

いずれにせよ、現時点での本命は高市、対抗は玉木といえるだろう。