10月27日投開票の総選挙は自民党惨敗に終わった。マスコミ各社の出口調査では、自民党は議席を大幅に減らして単独過半数を失い、石破茂首相が掲げた勝敗ライン「自公与党過半数」も下回る可能性が高まっている。
石破首相は投開票日夜に退陣を否定し、続投へ意欲を示した。無所属を追加公認したり、野党議員を一本釣りしたりする多数派工作で過半数を回復し、総選挙後に召集される国会で首相に指名されることをめざす。
しかし、自公与党が過半数を大きく下回れば、多数派工作で過半数を獲得するメドが立たず、国会召集前に退陣表明に追い込まれる可能性もある。多数派工作で過半数を回復できたとしても、自ら掲げた勝敗ラインを割り込んで敗北した政治責任は免れない。
石破首相は「選挙の顔」として落第点がついた。来年夏の参院選は石破首相では戦えないという認識が自民党内に広がるのは間違いなく、来年春の予算成立を機に退陣に追い込まれる展開が予想される。
野党はバラバラで、立憲民主党の野田佳彦代表を首相に担ぐ野党連立政権が発足する機運はない。このため、自公与党は過半数に届かなくても少数与党として政権を担う可能性が高いが、立憲民主党も日本維新の会も国民民主党も自公連立に加わることを否定している。
野党各党は自公与党と是々非々で対応する可能性が高いが、総選挙で激しく批判した石破首相が続投した場合は政策協議に応じにくい。野党からも石破退陣圧力が強まるのではないだろうか。
いずれにせよ、石破政権の余命は長くて半年だろう。それより先に野党の反発で国会が立ち往生し、退陣に追い込まれる可能性もある。
日本政界は自公与党の過半数割れで大激動の時代に突入した。
自民党の敗因は3つだ。
ひとつめは裏金問題。そもそも岸田政権下の政治資金規正法改正が骨抜きだったことに世論は反発していた。さらに石破政権に交代しても総選挙で裏金議員の大半を公認したことに世論の怒りは沸騰した。総選挙最終盤、非公認候補に公認料2000万円を支給していたことが発覚したことがトドメに一撃となった。
次は石破首相がぶれまくったことだ。解散時期を含め、総裁選での発言をことごとく覆し、国民の信用を失った。石破首相が何を言ってもコロコロ変わるという印象を与えてしまったのだ。
最後は総裁選で高市早苗氏を支持した保守層が石破政権を嫌って離反したことだ。一部は日本保守党などに流れ、一部は棄権した公算が大きい。さらに連立相手の公明党の組織力も低下し、自民党の支持基盤が大きく崩れた選挙だった。
自民党は党勢立て直しを迫られるが、求心力を失った石破首相のもとでは難しいだろう。来夏の参院選までには退陣に追い込まれ、再び総裁選となる可能性が高い。