自民党の高市早苗経済安保相が来年の総裁選を視野に自ら主宰する勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足させた。水曜日を定例日とし、月1回か2回のペースで会合を開くという。現職閣僚が総裁選出馬を見据えて勉強会を立ち上げるのは、岸田内閣の求心力低下を象徴する現象だ。
高市氏は無派閥ながら安倍晋三元首相の強い支持を受けて前回総裁選に出馬し、岸田文雄首相や河野太郎デジタル相と闘った。安倍氏が他界して唯一の後ろ盾を失った後、安倍支持層には根強い人気があるものの、自民党内では孤立しつつあり、来年の総裁選に出馬できるか見通せない状況だ。
勉強会の旗揚げには、党内右派を中心に政治基盤を整備し、総裁選出馬に必要な推進人を確保する狙いがある。
内閣支持率が続落して岸田政権が危険水域に入るなか、非主流派の菅義偉前首相は河野太郎デジタル担当相、小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長との連携を強めている。二階俊博元幹事長や森山裕総務会長も菅氏と連携することが見込まれている。
これに対し、岸田首相は支持率急落で総裁選出馬そのものに黄信号が灯っている。岸田首相の後ろ盾である麻生太郎副総裁は、首相が再選を断念した場合は来春にも電撃辞任させ、臨時総裁選に茂木敏充幹事長を担いで主流派体制の維持を図るだろう。
いずれにせよ、「麻生・茂木・岸田の主流3派vs菅・二階・河野・小泉・石破の非主流派」の対決構図となる可能性が極めて高い。
高市氏は第三極の立場といえる。総裁選に勝利することは難しくても、キャスティングボートを握ることで次期政権でも要職にとどまり、一定の発言力を得る狙いだ。
高市氏にとっての誤算は、安倍氏が他界した後の最大派閥・安倍派が高市氏を受け入れず、5人衆(萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長)の集団指導体制に入ったことだ。5人衆には、そもそも安倍氏が前回総裁選で無派閥の高市氏を支持したことへの不満があり、高市氏との関係は冷え込んでいる。
一方、5人衆は後継会長の座をめぐって激しく牽制し合っており、岸田首相が電撃辞任してポスト岸田を争う総裁選に突入した場合は、誰を担ぐかをめぐって派閥分裂に発展する可能性がある。その場合、安倍氏に近かった右派の一部が高市氏支援に回ることが期待できるだろう。安倍派が総裁選を機に分裂する可能性もあり、その場合は安倍派の一部を吸収するかたちで「高市派」が誕生する展開もありえる。
また、作家の百田尚樹氏や名古屋市長の河村たかし氏が立ち上げた日本保守党の動きも注目だ。安倍支持層をはじめ右派での期待感が高まっている。この支持層は高市支持層とも重なるため、高市氏に日本保守党入りや連携を期待する向きもある。
高市氏はただちに自民党を離れるつもりはないだろうが、次の総裁選に敗れて干されることがあれば、日本保守党入りもひとつの選択肢として浮上してくるだろう。裏を返せば、日本保守党との連携をちらつかせながら、自民党内での発言力をキープしていくとみられる。
麻生・茂木氏は連合と関係を強化し、菅氏は維新との関係を強化し、高市氏は日本保守党との関係を強化する。野党を巻き込みながら自民党内政局が激しさを増していくことになりそうだ。