政治を斬る!

自民党内でじわりと広がる「高市包囲網」

総選挙で圧勝し、内閣支持率も高水準を維持する――。表向きは盤石に見える高市政権だが、その足元で静かに、しかし確実に「高市包囲網」が広がり始めている。政権の安定を裏付けるはずの新年度予算の成立が、逆に党内の不協和音を浮き彫りにした。

4月7日、参院本会議で新年度予算案は可決・成立した。賛成は126票。与党に加え、一部の無所属や小規模政党が賛成に回り、過半数をわずかに上回った。これにより、高市政権は参院でも事実上の過半数を確保し、法案成立における「参院の壁」は取り払われたかに見えた。

しかし、実態はまったく異なる。最大の障害は野党ではなく、自民党内――とりわけ参院自民党にある。予算案は成立したものの、年度内成立は見送られた。これは単なる手続き上の遅れではない。参院自民党が意図的にブレーキをかけた、いわば「サボタージュ」の色彩が濃い。

参院自民党の中枢には、いわゆる「アンチ高市」の勢力が陣取る。松山参院議員会長は旧岸田派、石井幹事長はかつての参院ドンの流れをくむ実力者。いずれも高市総理とは距離がある。旧安倍派が裏金問題で弱体化したことで、参院の主導権は別の勢力に移り、その中心が高市政権に対する警戒感を強めているのだ。

象徴的なのは、予算審議の最終局面での出来事だ。参院自民党の幹部がそろって官邸を訪ねたにもかかわらず、高市総理は面会に応じなかった。代わりに官房長官が対応したのだ。この対応は、参院側の不信感を一気に増幅させた。政権中枢と参院側の断絶は、もはや修復が容易ではない段階に入っている。

では、なぜここまで党内の反発が広がっているのか。

背景には「高市一強」への警戒がある。1月の電撃解散と総選挙での歴史的勝利により、高市総理は強大な権力を手にした。だが、その過程で党内調整を軽視し、独断で意思決定を進めてきたとの不満が積み重なっている。

政権の「生みの親」ともいえる麻生副総裁でさえ例外ではない。解散時の根回し不足、公約への介入人事――。こうした一連の動きにより、表向きは支える姿勢を見せつつも、内心では距離を置く動きが広がっている。外交の現場でも、首脳会談の舞台裏をめぐる情報が流出し、政権中枢への求心力低下をうかがわせる。

つまり、高市政権は「強すぎるがゆえに孤立する」という典型的な構図に入りつつあるのだ。

もっとも、高市総理も手をこまねいているわけではない。すでに9月の党役員人事を見据えた布石を打ち始めている。焦点は党執行部の刷新だ。これまでの体制を一新し、自らに近い勢力で固めることで、党内主導権を完全に掌握する構えである。

その軸となるのが旧安倍派の再結集だ。幹事長ポストをめぐっては萩生田光一幹事長代行や西村康稔選対委員長ら有力者の名前が取り沙汰され、実現すれば政権の性格は大きく変わる。また、別の選択肢として、旧二階派を受け継いだ武田良太元総務相を取り込む動きも水面下で進んでいるようだ。公明党との関係修復を見据えれば、公明に近い武田氏の起用が現実味を帯びる。

実際、高市総理は予算成立直後、保守系議員グループの会合に足を運び、丁寧に握手して回った。普段は距離を置く夜の会合にあえて出席したのは、党内基盤の再構築を急いでいる証左だろう。

今後の焦点は明確だ。9月の人事に向けて、自民党内の勢力は「高市派」と「アンチ高市派」に色分けされていく。その過程で、水面下の駆け引きや離合集散が一気に加速するはずだ。

外から見れば、圧倒的な議席と高支持率を誇る安定政権。しかし内側では、権力をめぐる緊張が臨界点に近づいている。強さと不安定さが同居する現在の高市政権――その行方を決めるのは、国会ではなく、自民党内の権力闘争にほかならない。