「高市早苗が総理大臣でよいのかどうか。主権者たる国民の皆さまに決めていただく」
高市早苗総理は、解散会見の冒頭でそう宣言した。
2月8日投開票の総選挙は、単なる与野党対決ではない。
高市内閣の信任投票であり、自らの進退をかけた大勝負だというのである。
勝敗ラインは「自民と維新の与党で過半数」。
負ければ辞めるという宣言だ。
内閣支持率は70%台。歴代トップ水準を維持し、高市人気は圧倒的だ。
一方で、自民党の支持率は30%前後にとどまり、横ばいが続く。
だからこそ、高市総理は「自民党」ではなく「高市」を前面に押し出す戦略をとった。
しかし、この解散は、麻生太郎にも相談せず、衆院議員の任期が3年近く残る中で決断された、独断の解散である。
圧勝できなければ、かえって危ない。
「高市人気は思ったほどではなかった」と見られた瞬間、求心力は一気に失速しかねない。
解散の大義と本音
高市総理は、解散の理由として「責任ある積極財政」をはじめとする重要政策の大転換を挙げた。
これらは前回の衆院選では公約に書かれていなかった。
就任以来、選挙の洗礼を受けていないことを気にかけてきた。
補正予算で当面の物価高対策を行い、衆院はギリギリ過半数、参院は過半数割れという不安定な状況を3か月間、身をもって実感した。
長い通常国会に入る前に、まず国民の信任を得る。
そうすれば、その後の政策を一気にスピードアップできる。
これが高市総理の説明する「1月解散の大義」である。
もちろん、「今なら勝てる」「国会が始まればスキャンダル追及で支持率が落ちる」「立憲と公明の新党が浸透する前の方が有利」――
そんな本音があることも否定はできない。
勝敗ラインの落とし穴
問題は、解散の大義よりも、勝敗ラインの設定だ。
前回総選挙で石破総理は「自公で過半数」を勝敗ラインに掲げた。
結果は惨敗。それでも石破総理は辞めなかった。
約束を破ったのである。
高市総理が掲げた「自民と維新で過半数」は、「政権選択の選挙」で進退を判断するラインとしては一応、筋が通っている。
しかし、今回の総選挙は、それだけでは済まない。
高市総理自身が、「高市内閣を信任するかどうか」を問う選挙だと位置付けた。
つまり、これは守りの選挙ではない。
議席が増えるほど、国民から強く信任されたことになる。
過半数ギリギリでは、国民の半分近くは高市内閣を信任しなかった、という評価が残る。
総理は続けられても、政策を加速させるだけのパワーは得られない。
しかも今回の解散は、党内に根回しのない非常識な解散だ。
自民党内には不満が充満している。
現状維持では、「高市人気はそれほどでもなかった」という総括が避けられない。
高市総理が胸を張って勝利宣言するには、自民党が単独過半数を回復する必要がある。
比例に表れた不安定さ
世論調査の比例投票先を見ると、自民党は34%。
支持率と同じく、頭ひとつ抜けている。
一方、立憲と公明の新党「中道改革連合」は9%にとどまった。
新党効果を考慮しても、期待感が高まっているとは言い難い。
これまで指摘してきた通り、中道は失速する――その傾向が数字に表れた。
維新と国民民主はともに10%。
参政党は7%と存在感を保っている。
自民も中道も敬遠する有権者は、第三極に流れていく。
国民は今回の総選挙を「自民か中道か」の一騎打ちとは見ていない。
アンチ自民票は分散する。
比例は自民が先行し、2位以下は大混戦。
中道が埋没する典型的な構図だ。
小選挙区は大乱戦へ
鍵を握るのは、全国289の小選挙区だ。
国民民主は立憲との候補者調整を極力やめ、全県に少なくとも一人の候補者を立てる。すでに立憲現職にもぶつけ始めた。
参政党も100人規模の擁立を目指す。
自民、中道、国民、参政が入り乱れる乱戦となる。関西圏ではここの維新も加わる。
この構図で最も割を食うのは中道だ。
票が割れれば、相対的に自民が浮上する。
現時点では、自民単独過半数の可能性はかなり高い。
中道がさらに失速すれば、250、260議席に届く展開もあり得る。
ただし、選挙は終わるまで何が起きるかわからない。
高市早苗は、歴代総理が避けてきた一か八かの大勝負に、自ら踏み込んだ。
圧勝か、失速か。
この総選挙は、日本政治の分岐点となる。