国民民主党が参院選に向けて「右旋回」を加速させている。
選択的夫婦別姓に対する姿勢を一転させ、立憲民主党や連合との距離を広げることで、保守層の取り込みを狙う戦略に出ているのだ。
また、国民民主党は減税政策を掲げ、自民党の石破政権と距離を置くことで支持率を上げてきた。
はたしてこの戦略は成功するのか?その行方を詳しく分析してみよう。
①選択的夫婦別姓への慎重姿勢:立憲と決別?
国民民主党は、昨年の衆院選では「選択的夫婦別姓」を公約に掲げていたが、最近になってその姿勢に変化が見え始めた。
玉木雄一郎代表は2月6日に連合の芳野友子会長と会談。芳野会長は「今国会で法制化してほしい」と迫ったが、玉木氏は歯切れの悪い返答に終始。
記者会見では「基本的に進める立場」と述べつつも、「旧姓使用の拡大ではなく、選択的夫婦別姓にしなければならない事例がどれほどあるのか」と慎重な言い回しをした。
さらに榛葉賀津也幹事長は「大人は選択できても、子供は半ば強制になる。不幸になる」と発言。
これは自民党内の反対派の論理とよく似ており、事実上の「慎重姿勢」への転換を示唆している。
この変化の背景には何があるのか?
②保守支持層の分裂:国民民主党への追い風?
安倍晋三元首相亡き後、保守勢力は分裂し、支持層が迷走している。
昨年の総裁選では石破茂氏が首相に就任し、高市早苗氏は決選投票で敗北。これにより、保守層の中には自民党への不信感を抱く者が増えた。
また、自民党は杉田水脈氏の擁立を見送ったことで保守層の離反を招いたが、参院選では比例区に杉田氏を擁立し、支持を取り戻そうとしている。
一方、百田尚樹氏率いる日本保守党は当初こそ注目されたが、内部対立が激化。保守論客からの批判が相次ぎ、支持層が分裂している。
こうした状況の中、国民民主党が「新たな保守の受け皿」として浮上しているのだ。
経済政策においても、高橋洋一氏らの支持を受ける国民民主党は、財務省を批判しつつ減税政策を掲げ、経済系の保守層の期待を集めている。
③減税政策 vs. 右旋回:どちらが勝てる?
国民民主党の躍進の要因は「減税政策」にある。
現在の政治の対立軸は、「右か左か」ではなく、「増税か減税か」にシフトしている。
自民党は安倍政権時代に減税・積極財政を掲げていたが、石破政権のもとでは財務省寄りの増税・緊縮路線が主流となった。
立憲民主党も、野田佳彦代表が消費税増税を進めた過去があり、「増税政党」としてのイメージが強い。
そんな中で、国民民主党が掲げる減税政策は、二大政党がともに増税を推し進めることへのアンチテーゼとして機能している。
しかし、「右旋回」しすぎることで減税支持層の中間層が離反するリスクもある。
国民民主党は減税政策を堅持しつつ、どこまで保守層に寄せるのか。参院選に向けて戦略の岐路に立っている。
④自民・立憲の動きと参院選への影響
国民民主党の「右旋回」は自民党にとって脅威となる。
日本の政治は「右が3」「左が2」「無関心が5」と言われており、通常であれば自民党は安定した支持を得られるが、「右からの攻撃」には弱い。
また、立憲民主党は蓮舫氏を参院選の「顔」として擁立する方針を示している。
しかし、昨年の東京都知事選で蓮舫氏は共産党などの支持層の熱烈な応援を受けたものの、中間層の支持を失い、石丸伸二氏に票を奪われた。
同じ現象が参院選で起これば、中間層は国民民主党に流れる可能性が高い。
国民民主党は、自民・立憲の双方にとって脅威となる存在になりつつあるのだ。
国民民主党の戦略、吉と出るか凶と出るか
・国民民主党は選択的夫婦別姓への慎重姿勢を強め、立憲民主党と距離を取る
・保守層の分裂を背景に、国民民主党への支持が拡大している
・減税路線を貫くか、右旋回を強めるか、参院選戦略の分かれ道
・自民党は「右からの攻撃」に脆弱で、国民民主党が脅威に
・立憲民主党は蓮舫氏の擁立でリベラル層強化を狙うが、中間層の離反が懸念される
国民民主党の参院選戦略が成功するか否か、今後の動向に注目が集まる。