政治を斬る!

国民民主党の玉木雄一郎代表が参院選で仕掛ける「世代間闘争」―石破政権の大失態「高額療養費問題」で浮き彫りになった「高齢世代の自民・立憲vs現役世代の国民民主」の対決構図

石破茂首相が突如、「高額療養費の引き上げを全面凍結する」と方針転換した。これにより、衆院で修正したうえで可決したばかりの新年度予算案を参議院で再び修正し、衆議院に戻して審議し直すことになった。前代未聞の事態である。

これに最も激しく反発したのが、国民民主党の玉木雄一郎代表だ。

「国会を舐めるな!」と声を荒げる玉木氏。その主張には、一理ある。

  1. 修正するなら衆院採決前にやるべきだった!
    これは当然の指摘だ。衆院で可決した予算案を、後から覆すのは「ガバナンス崩壊」と言われても仕方がない。
  2. 引き上げを前提に予算案に賛成した議員たちはどうするのか?
    自民、公明、維新の議員たちは、引き上げ前提で賛成票を投じたはず。それを「やっぱり凍結します」と言われたら、説明責任をどう果たすのか。
  3. どうせやり直すなら、減税議論もやり直せ!
    石破政権は、国民民主党が求める所得税減税やガソリン税減税に拒否し、予算案を衆院で可決した。高額療養費の引き上げを見直すなら、減税も再審議すべきであるという主張だ。

結果的に、石破総理の決断が国会を大混乱に陥れるのは火を見るより明らかだ。

玉木の本当の狙い――「世代間闘争」の火付け役に?

玉木氏の主張を政策面から分析してみよう。その核心は「現役世代の負担軽減」だ。

  1. 小さなリスクは自己負担、大きなリスクは社会全体でカバー
    高額療養費の引き上げ凍結は、社会全体でリスクを分担するという観点から評価できる。誰もががんや難病という大きなリスクに直面するリスクはある。
  2. しかし、その代償として現役世代の社会保険料引き下げが凍結!
    ここには猛反発! 国民民主党はサラリーマンを中心とした現役世代の中間層に支持を拡大し、昨年の総選挙で大躍進した。現役世代が待望する「減税」と「社会保険料の負担軽減」を旗印にしている。
  3. 後期高齢者医療制度の窓口負担を原則2割に!
    小さなリスクは個人負担で。後期高齢者の医療負担を増やし、現役世代の保険料負担を軽減する狙い。これは「現役世代 vs 高齢者」の構図を生み出す。

参院選の対決構図が鮮明に

この政策の背景には、7月の参院選対策がある。

自民党と立憲民主党の支持基盤は高齢者層にあるため、「社会保障の充実」は最優先課題だ。「減税して社会保障を削減」は絶対に回避。さらには「増税しても社会保障を充実」という路線である。

他方、国民民主党やれいわ新選組は「減税」を全面に打ち出し、現役世代の支持を狙っている。

最近の世論調査では、30代の支持率で 1位・国民民主党、2位・れいわ、3位・自民党 という衝撃的な結果が出た。これに焦った自民党は、年金制度改革関連法案の今国会提出を見送る方向で調整に入った。現役世代の反発をかわす狙いだ。

年金制度改革法案の内容は次のとおりである。

  • 基礎年金の給付水準を底上げ →「年金は増えます!」とアピール
  • パートへの年金適用拡大 → パート層には負担増! → 現役世代の反発必至

自民党は高額療養費の引き上げを凍結し、パートへの年金適用拡大(パートの社会保障費の負担増)も先送りすることで、高齢世代と現役世代の二兎を追っているといっていい。

一方、立憲民主党の野田佳彦代表は「提出見送りは無責任!」と明言。増税派としての立場を貫き、高齢者の支持を維持する戦略だ。

こうして、7月の参院選は以下のような三つ巴の戦いになりつつある。

  • 高齢層を守る立憲民主党
  • 現役世代の負担軽減を掲げる国民民主党
  • 二兎追う自民党

さて、あなたはどの政党の立場を支持しますか?

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