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石破政権は「辞めなくていい」?——ねじれた民意が示す“玉木政権”の可能性

石破内閣の支持率が低迷している。だが、それ以上に注目すべきは、「支持しないが辞任も望まない」という民意のねじれである。

TBSが8月2〜3日に実施した電話世論調査では、内閣不支持率が60.5%と過半数を超える一方で、「石破総理は辞任すべきではない」と答えた人が47%にのぼり、「辞任すべき」の43%を上回った。国民の多くが「石破政権には期待しないが、自民党内の他の誰かが総理になるくらいなら、石破でいい」と考えている構図が浮かび上がった。

この世論は、単なる消極的支持ではない。「石破の方がマシ」という、冷めた合理性に基づいた選択だ。

自民党内では、裏金問題で傷ついた旧安倍派が主導する「石破おろし」が進むが、国民の視線は冷ややかだ。裏金事件で失脚した萩生田光一氏、西村康稔氏、世耕弘成氏らの顔ぶれが石破退陣を叫ぶたびに「それなら石破のままでいい」と反発が強まっているのだろう。

さらに、ポスト石破として名前が挙がる高市早苗氏や小泉進次郎氏に対しても、国民の評価は二分している。

高市氏は保守層に、小泉氏は若年層に一定の支持を得ているが、高市氏は野党支持層に、小泉氏は高齢世代に拒否感が強く、幅広い支持を集めているとは言いがたい。昨年の自民党総裁選では、「消去法」で石破氏が選ばれたという事実を忘れてはならない。

調査結果の中で、政党支持率にも顕著な変化が見られた。自民党の支持率は20.4%と低迷を続け、いよいよ10%台が射程圏に入った。一方で、参政党が10.2%に急伸し、ついに野党トップに浮上。続く国民民主党も8.7%と支持を伸ばしている。立憲民主党は6.9%で、かつての野党第一党の面影はなく、支持率では「野党第三党」に転落した。

こうした数字は、「自民か立憲か」というこれまでの二項対立構造が完全に崩れ去りつつあることを示している。日本政治はいま、「四極構造」——自民、参政、国民、立憲——の時代に突入したといえるだろう。

では、次に有権者が期待している政権の形は何か。

調査によると、「自民・公明を中心とする政権の継続」が39%に対し、「野党を中心とする政権に交代」が49%を占めた。

ただし、「野党」という概念自体が曖昧化している。

参政党が野党支持率でトップに立ち、国民民主がこれに続く今、「野党政権」といっても、そのイメージは人によって大きく異なる。現実的に立憲、国民、参政が一体化して連立を組む可能性は極めて低く、むしろ、自公連立にどの野党が「加わるか」が、今後の焦点になっている。

世論調査で連立入りを最も期待されているのは国民民主党(23%)。以下、立憲民主党(17%)、参政党(15%)、維新(14%)と続く。

ただ、参政党は衆院に3議席しか持たず、数合わせとしては力不足だ。維新も代表の吉村洋文氏が国会議員でないため、首相候補にはなれない。

このような中で現実味を帯びてくるのが、「国民民主党の玉木雄一郎代表を首相に据える連立政権」である。

立憲の野田佳彦代表を担ぐ大連立構想も一部で取り沙汰されているが、立憲自体が参院選で後退し、世論の支持も低い。敗者同士の連立では、内閣支持率の回復は望みにくい。一方、玉木代表率いる国民民主党は参院選で躍進を遂げており、世論の「新しい顔」への期待にも合致している。

こうなると、次期自民党総裁選は、従来のような「総裁=次期総理」を前提としない、「総総分離」の選挙になる可能性もある。これは、総裁と総理を別々の人物にするという、自民党内で古くから囁かれてきたアイデアだ。

だが、今回はその「分離」の度合いがさらに進む。他党の代表を総理に担ぎ、自民党総裁は政権を側面支援する——まさに1990年代の自社さ連立による村山政権の再来である。

石破は支持しないが、辞めなくていい——。この奇妙な民意の底にあるのは、既存政治への深い倦怠と、新しい選択肢への渇望だ。混迷する永田町の先に、玉木政権という“非常識な常識”が現実味を帯びてきている。