与党席からヤジが飛んだ。向けられた先は、玉木雄一郎。国民民主党代表である。
「おかしなことは言っていない。建設的な呼びかけをしている」
そう声を張り上げても、ヤジは止まらなかった。
ついこの前まで、自民党内では玉木氏を財務大臣として迎え入れる連立拡大論がささやかれていた。それが一転、いまや与党席から公然とヤジを浴びる存在になった。
何が起きたのか。答えは単純だ。自民党が圧勝し、もはや国民民主の力を必要としなくなったのである。
デジタル化をめぐる一幕
2月25日、代表質問に立った玉木氏は「国会のデジタル化」を切り出した。紙の原稿を読み上げる自らの姿を示しながら、タブレット持ち込みが「品位」を理由に認められていない現状を問い直した。
国民民主党は総選挙で28議席を獲得し、そのうち新人は7人。自民党は戦後最多の316議席、そのうち新人は66人。玉木氏は与野党の若手議員に広く呼びかけた形だ。
「自民党総裁として指示し、本会議場でのタブレット使用を認めてほしい」
矛先は高市早苗総理に向いた。ここで与党席からヤジが飛ぶ。玉木氏が「与党席からヤジを飛ばすのはやめてください」と応じると、かえってヤジは噴出した。壇上で一瞬言葉を失いながらも、「建設的な呼びかけだ」と訴え続けたが、空気は冷えたままだった。
議場を収めたのは、衆院議長の森英介。「ご静粛に」と助け舟を出した。終了後、玉木氏はXに「タブレットよりヤジの方が品位に欠ける」と投稿。戸惑いは隠せなかった。
麻生切りと一強体制
背景には、総選挙後の力学変化がある。解散前、衆院は自民と維新などで辛うじて過半数、参院は過半数割れ。自民党副総裁だった麻生太郎氏は、玉木氏や幹事長の榛葉賀津也氏と気脈を通じ、連立拡大を模索していた。
だが高市総理は1月解散を断行。結果は316議席の圧勝。衆院で3分の2を超え、参院否決法案も再可決できる。国民民主を連立に加える必要は消えた。
とどめは、麻生に衆院議長就任を打診した人事だった。事実上の本部からの“棚上げ”。麻生氏は拒否し、両者の関係は決裂。玉木氏と自民を結んでいたパイプも途切れた。
森議長は麻生派の重鎮。玉木氏を制止したのは自然な流れだ。しかし党内の大勢はすでに「高市一強」に傾いている。ヤジはその空気の表れだった。
「対決より解決」の岐路
国民民主党は「対決より解決」を掲げてきた。与党と全面対決せず、政策を提案し、年収の壁引き上げやガソリン税暫定税率廃止などを前進させる。予算にも賛成する現実路線だ。
この戦略が機能したのは、与党が過半数を割っていたからである。だが今は違う。数の力で押し切れる与党にとって、国民民主は不可欠ではない。玉木株は急落した。
「ゆ党」という立場は、必要とされてこそ意味を持つ。必要とされなければ、ただの少数野党に戻る。
国民会議とスキャンダル
高市政権は社会保障と税の一体改革を協議する「超党派の国民会議」を提案した。だが消費税廃止を掲げる政党は呼ばれず、参加の是非が新たな踏み絵となった。
そこへ浮上したのが「カタログギフト」問題である。玉木氏は「法律上は問題ない。予算委員会で時間を使う問題ではない」と距離を置きつつ、「国民がどう受け止めるか」と牽制した。スキャンダル追及に深入りしない姿勢は一貫している。
だが政治は言葉より数で動く。必要とされた時代は終わった。いま、国民民主は岐路に立つ。
それでも「対決より解決」を貫くのか。
連立入りを断念し、対決路線へ転じるのか。
ヤジが響いたあの日の本会議場。
それは玉木雄一郎に突きつけられた、冷厳な現実そのものだった。