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麻生太郎と河野太郎、9月総裁選へ和解の兆し? 「担ぐ人がいない麻生氏」と「担がれたい河野氏」の呉越同舟は実現するか、総裁レースの焦点に 

自民党の麻生太郎副総裁と河野太郎デジタル担当相が5月21日夜、東京・赤坂の日本料理店で会食したことが注目を集めている。河野氏が派閥の「親分」である麻生氏の反対を振り切って2021年の自民党総裁選に出馬して以降、関係が冷え込んできたが、ここにきて和解の動きが出てきたようだ。

麻生氏は83歳。61歳の河野氏が台頭して世代交代の歯車が回ることを警戒し、抑え込んできた。21年総裁選では河野氏の出馬に反対。河野氏が麻生氏の政敵である菅義偉前首相に担がれて出馬したのに激怒し、岸田文雄首相を担いで勝利した。

以来、ふたりの関係は冷え込み、今年9月の総裁選でも対立関係は続くとみられてきた。

ところが裏金事件や派閥解消など大きな政治の動きがふたりの関係修復を後押ししたようだ。

まずは河野氏がマイナンバーカード問題で失速し、国民人気が低下。石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相にマスコミ世論調査の「次の首相」で遅れをとるようになった。菅氏も9月の総裁選で河野氏を擁立しても勝てないと判断し、石破氏や小泉氏を擁立する方向で準備を進めている。

しかし、河野氏は何としても9月総裁選に出馬したいようだ。そこで派閥の「親分」である麻生氏との関係修復を目指した。

裏金事件を受けて岸田首相が派閥解消を表明するなか、麻生派だけが存続を決定したが、河野氏は麻生派にとどまることを決意。派閥批判を恐れて派閥離脱をすすめる周囲の声を振り切り、麻生氏との関係修復を狙ったのである。

麻生氏も河野氏の派閥残留を評価したようだ。

その麻生氏は岸田首相との関係がぎくしゃくしている。岸田首相は就任2年を境に麻生氏からの自立を進め、麻生氏の反対を振り切って派閥解消や所得税減税を決定。麻生氏は岸田首相を牽制するためにポスト岸田候補を物色してきたが、子飼いの茂木敏充幹事長は党内外の人気があがらず、急遽押し立てた上川陽子外相は「女性がうまずして」の失言で失速した。そこで派閥の「子分」である河野氏に再注目した格好だ。

担ぐ人がいない麻生氏と、担がれたい河野氏。ここにきて両者の利害は重なってきたといっていい。

麻生氏はもともと宏池会(現岸田派)に所属していたが、お公家集団と呼ばれたエリート体質に肌があわず、干され続けた。加藤紘一元幹事長が派閥会長に就任したことに反発し、河野氏の父・河野洋平氏とともに派閥を離脱して1999年に小さなグループ「大勇会」を発足させた。これが麻生派のはじまりである。

麻生氏も河野氏も政治名門の世襲議員。タカ派とハト派で水と油といわれた二人は、アンチ加藤紘一に加えて政治名門出身という共通項もあり、手を握ったのだ。

河野洋平氏としては、麻生氏が引退した後は河野太郎氏に派閥が継承されるという期待もあったかもしれない。しかし麻生氏は小さなグループを自力で党内第二派閥に飛躍させたという自負があり、河野太郎氏に簡単に引き渡すつもりはなかった。

その麻生氏も83歳。最高齢の二階俊博元幹事長は次の総選挙に不出馬を表明した。麻生氏はなおキングメーカーとして政界にとどまる意向だが、裏金事件を受けて党刷新をアピールするために「退場」を促す声もくすぶっている。

ふたりの太郎の関係はどうなっていくのか。9月の総裁選の行方を左右する大きなポイントとなる。

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