政治を斬る!

減税包囲網が二大政党を襲う――なぜ自民と立憲は逆らい続けるのか

ガソリンも、コメも、光熱費も。値上げラッシュが続くなか、国民の「もう我慢できない!」という怒りが、永田町を包囲しつつある。今、街頭でもネットでも、「消費税を下げろ!」の声が渦巻いている。

この民意にいち早く呼応しているのが、野党各党だ。れいわ、維新、国民、共産などが次々と「消費税減税」を掲げ、公明党までもが追随する。

ところが、日本の二大政党である自民党と立憲民主党だけが、頑なに減税に踏み込まない――なぜか。

今夏に控える参院選を前に、与野党が繰り広げる減税をめぐる攻防を読み解いていくと、そこに浮かび上がるのは「誰のための政治か」という根源的な問いだ。

一時しのぎの現金給付に怒る世論

自民党内でまず検討されたのは、消費税減税ではなく「一律の現金給付」だった。3万円、あるいは5万円を一度だけ配るという案である。これは、消費税を下げるよりも財政負担が軽く、何より「後戻りしなくて済む」策として財務省が推したものだ。

だが、国民はそんな小手先の対応に騙されなかった。SNSでは「一回きりの給付なんか要らない。減税を!」という怒りの声が溢れた。世論調査でも支持はまったく伸びず、結局この案は立ち消えに。

一方、野党各党もこの給付案に猛反発。立憲すらも批判に加わり、自公が少数与党となった現状では、補正予算すら通らない。こうして、自民党の物価高対策は初手から躓くことになった。

なぜ自民は「直接支援」を嫌うのか

次に政府が打ち出したのは、業界への補助金だ。電気・ガス・ガソリンに加え、自動車業界への支援が検討されている。これは、価格を間接的に抑えることで生活を支援するという建前だ。

だが、こうした間接支援には「中抜き・ピンハネ」のリスクがつきまとう。コロナ禍のGOTOトラベルや医療法人への支援金配分は、個人への直接支給ではなく、あくまでも業界への補助金バラマキでしかなかった。どれだけのお金が現場に届かなかったことか。結局は、大手業界が潤い、庶民の生活は置き去りにされてしまう。

なぜ、直接国民に現金を渡す政策が敬遠されるのか。そこには、自民党と業界との「持ちつ持たれつ」の関係がある。業界にカネを流せば、選挙支援や政治献金、天下りで政治家や官僚に見返りがある。だが、個人への支援には見返りがほとんどない。ゆえに、いつまでも「業界支援」にこだわる――その姿勢が、自民党の構造的欠陥として露呈している。

消費税減税はなぜ支持されるのか

消費税減税は、まさに「国民への直接支援」だ。だからこそ、自民と立憲を除くすべての主要政党が、この政策を掲げている。

公明党は「減税が柱、つなぎで現金給付」。国民民主は「消費税を時限的に一律5%に」、維新は「食料品の消費税ゼロを2年間」、れいわは「消費税廃止」。いずれも明快だ。

これらをマスコミは「選挙対策」と批判するが、それこそ見当違い。選挙で民意を反映させるのが民主主義の原則である以上、有権者が求める政策を掲げるのは当然の戦略だ。むしろ、批判すべきは、民意に逆らうほうではないか。

自民党内部でも、参院サイドでは危機感が高まっている。特に松山参院幹事長らは減税を明確に主張。参院選で勝ち抜くためには、もはや減税しか手はないというリアルな声が噴き出している。

そして立憲――「本気で政権を取る気があるのか」

最も不可解なのは、立憲民主党だ。

野党第一党である以上、選挙で政権交代を狙うなら、自民党と異なる立場で国民の支持を集めるのが基本である。だが、野田佳彦代表ら執行部は、なぜか自民党と足並みをそろえ、減税に反対している。

これは、「政権交代を目指す気がない」と言われても仕方がない。むしろ減税阻止を口実に、自民党との大連立を模索しているのではないか――そんな疑念すら広がる。

民主党政権時代の教訓も忘れてはならない。当初は「子ども手当」や「戸別所得補償」など、個人への直接支援を掲げていたが、途中から財務省の手のひらで踊り出し、消費税増税に突き進んだ。あの失敗の再来になる恐れが、今の立憲にはある。

とはいえ、立憲内部からも減税を求める声は強まっている。現に「食料品の消費税ゼロ案」や「時限的な一律5%案」が出されている。もし執行部がこれを退ければ、党の分裂や減税派の国民民主党への合流すらありうる。

石破首相もこの動向を注視しているはずだ。立憲が減税に舵を切れば、自民も追随せざるをえない。逆に立憲が踏ん張れば、自民も安心して減税を拒否できる。まさに、立憲の野田代表が「減税の命運を握る存在」になっている。

減税を実現するのは、私たちの声

今、政界は明確に二分されている。

自民と立憲が「業界支援・減税反対」の立場を取り、 公明、国民、維新、れいわが「直接支援・減税推進」に回る構図だ。

有権者一人ひとりが、物価高に対して何を求めるのか。選挙に行き、票で示すことが、この「減税包囲網」の行方を決定づける。