れいわ新選組の山本太郎代表は今回の参院選で、同党が比例区で獲得する貴重な1議席を、世界で最も障害が重い研究者の一人といわれる天畠大輔さんに割り振った。
れいわを旗揚げした3年前の参院選で、難病患者の舩後靖彦さん、重度障害者の木村英子さんを比例区特定枠に担いで当選させたのに続いて、今回は天畠さんを特定枠に登載したのである。
れいわが比例区にどのような目玉候補を擁立するのか、特定枠をどう使うのかは、支持者たちからも注目されていた。山本代表は天畠さん擁立を発表した記者会見でこう切り出したのだった。
おそらく人によってはすごく、悪く聞こえるかもしれません。これから言うことは。今日ご紹介した天畠さんをご覧になった方の中には否定的な方もいらっしゃると思います。また、れいわ新選組、障害者出すのかって思われた方もいらっしゃるかもしれない。実際に記者の皆さんから手が挙がりづらいっていう部分に関しては、ある意味で腫れ物に触るような気持ちもあると思うんですね。でも違うんですよ。「また健常者出すのか?」っていう選挙ってあると思います? 候補者発表で。また健常者ですか、ってことはないですよね。健常者の中にも様々な人がいらっしゃるってことです。障害を抱えた方の中にも様々いらっしゃるってこと。天畠さんは、医療ミスによって中途障害者になられた。その後、様々な苦労をなさって自分自身の発話、発語方法を編み出したわけですよね。その後、研究者としてもそれを深められてきたというような、これまでれいわ新選組が、れいわ新選組として国会議員になられたお二人とは全く違う人生、全く違う出発点の方なんですよね。
この参院選を通じて、天畠さんは3年前の舩後さんや木村さんほど注目を集めることはなかった。選挙戦に与えるインパクトという意味では3年前に及ばないことは、山本代表は十分に予測していたに違いない。選挙戦術としてはあまり器用なものとはいえないだろう。
それでもなお山本代表が天畠さん擁立にこだわった真意について、私は参院選をとおしてずっと考えてきた。投開票日までに自分自身の答えを打ち出したいと思ってきた。
昨夜 YouTubeで公開した動画は、私がたどりついた一つの答えである。
あれこれ考えていた最中、子ども政策を徹底的に拡充することで人口を増やし、税収まで増やすことに成功したとして全国的に注目を集めている兵庫県明石市の泉房穂市長が、れいわの木村英子参院議員を明石市に招いて会談したことを知った。新刊『朝日新聞政治部』の版元である講談社のはからいで、泉市長と私の対談が実現。この対談で泉市長と十分に語り合うことを通じて、私は山本代表の真意が見えた気がしたのである。
今回の動画は山本代表が天畠さんを擁立した記者会見にはじまり、私と泉市長の対談で終わるという、一見つながりのない構成になっているのだが、実はふたつの映像は根底で深くつながりあっている。それは「誰一人見捨てない」という政治理念こそ、いまの日本社会に最も欠けているものであり、さらにはそれを実現するための経済政策が絶対に必要であるということだ。
この動画は昨日夕刻になんとか仕上がり、私はドタバタのなかで昨夜10時からのプレミア公開に臨み、視聴者の方々とチャットをしながら見たのだが、パソコン画面をみながら不覚にも泣いてしまった。
泉市長のインタビューも、山本太郎の演説もいい。ぜひご覧ください。
泉房穂(明石市長)X鮫島浩(政治ジャーナリスト)の対談詳報は、現代ビジネスで7月8日から3日間にわたって連載形式でお届けします。とても充実した内容ですので、ぜひご覧ください。
7月8日公開 なぜ明石市にできることが国にはできないのか?「改革市長」泉房穂に鮫島浩が直撃インタビュー!