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国連の女性差別撤廃委員会が男系男子に限る天皇制に異議!外務省の対抗措置から浮かぶ天皇制の根源的問題〜皇族たちの基本的人権はあるのか?

皇位継承を男系男子に限る日本の皇室典範について、国連の女性差別撤廃員会が改正を勧告した。日本の天皇制度は女性差別だと指摘した格好だ。

これに対し、外務省は対抗措置を発表した。日本が国連に拠出しているお金を女性差別撤廃委員会が使うことを拒否したのが柱だ。

マスコミは「国連の委員会に抗議する外務省の対応は異例だ」と報じている。

けれども日本の拠出金が同委員会に使われたことはこれまでなかった。同委員会の活動に支障が出るなどの実質的な影響はなく、あくまでも抗議の意を表明したに過ぎない。

外務省は国連と激突するつもりはない。一方で、天皇制を女性差別とみなす勧告を無視すれば自民党内右派から激しく追及される。これも回避したい。

その結果、国連に抗議するポーズを国内向けに見せながら、国連には実質的障害が出ないようにして対立は避けるという、いかにも官僚的な対応から生まれた対抗措置といえる。

けれども外務省が対抗措置にあたって発した「根拠」は、天皇制が直面する根源的な問題を浮き彫りにしている。

外務省は「皇位につく資格は基本的人権に含まれない」と明言したうえ、「男系男子に限定されていることは女子に対する差別に該当しない」「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項だ。女性差別撤廃委員会で取り上げることは適当でない」と反論した。

皇位継承者には一般国民が日本国憲法で保障されている「職業選択の自由」は認められていないのである。

憲法は天皇制について「世襲」と定めるだけで、具体的な仕組みは「皇室典範」(法律)に委ねている(憲法2条)。これを受けて皇室典範で皇位継承資格は「男系男子」に限ると規定しているのだ。

つまり、女性天皇を認めるには憲法改正は必要なく、法改正(皇室典範の改正)で十分なのである。だからこそ、内閣や国会で女性天皇を認める法改正の議論が進んでいる。

憲法14条が定める「法の下の平等」(男女平等)は憲法2条が定める「天皇の世襲」には適用されないという法的構成になっている。皇位継承資格を男系男子に限るのか、それとも女系女性まで広げていくのかは、国会の立法措置に委ねている。

裏を返せば、皇位継承者は憲法が保障する基本的人権の枠外に置かれていることになる。「天皇に人権はない」と言われるゆえんだ。

天皇制を維持するために、皇位継承者には職業選択や婚姻の自由は保障されていない。これが外務省が主張する「国家の基本にかかわる事項」ということである。

それでは皇位継承資格がない女性皇族たちはどうか。愛子さまは日赤に就職し、眞子さまは結婚して皇室を離脱した。いずれも本人の意思に基づくものだ。

だが女性皇族も憲法や皇室典範に縛られている。なぜなら彼女たちは現在の皇室典範においては皇位継承資格を持たないが、「天皇は世襲」としか定めていない憲法上は潜在的には皇位継承資格を持ちうる存在だからだ。法改正(皇室典範の改正)さえ実現すれば、すぐに皇位継承者になるのである。皇位継承資格を持てば、男性皇族と同様に職業選択や皇室離脱の自由が制限されるのは当然だ。

しかも女性皇族たちは現在の皇室典範でも「摂政」になる資格はある。摂政は、天皇が成人に達しない場合は国事行為を行えない場合に置かれる。日本史では聖徳太子が有名だ。女性皇族に摂政の就任資格がある以上、一般国民と同様に基本的人権を認められるのは整合性が取れない。

眞子さまが世論の強い反対を押し切って結婚したのは、憲法24条の婚姻の自由に基づくものではない。あくまでも現在の皇室典範では皇位継承者ではないため、天皇制を維持するために婚姻の自由を制限する必要はないとう現実から可能になったに過ぎない。

皇族は、私たち一般国民と違って、憲法で基本的人権を保障されていないのだ。

もちろん皇族も人間であり、時代の変化に伴ってできる限り基本的人権を認めていくのは当然のことであろう。しかしそれは憲法上保障されたものではないことは確認しておく必要がある。

外務省の国連女性差別撤廃委員会への対抗措置は、天皇制が抱える根源的な問題を浮き彫りにしたいえる。ここを突き詰めれば天皇制廃止論に発展しかねない重大問題なのだ。

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