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東京都議選が政界再編の起点に?——カギを握る「再生の道」と自公の決裂

6月、東京が熱を帯びる。
今年の東京都議会議員選挙は、7月の参院選を控えた“前哨戦”として、例年以上に全国的な注目を集めている。単なる地方選挙ではない。ここで勝てば参院選も制し、その先には政界再編への道が開かれる。まさに、2025年の日本政治のターニングポイントになり得るのだ。

「都議選に勝つ者が、参院選を制す」

都議選は、首都・東京を舞台に繰り広げられるだけに、無党派層の動向を占うバロメーターとなる。これまでも都議選での結果が、国政選挙の結果を先取りする形になるケースは多かった。つまり、都議選での勝利は、政党にとってその後の政治戦を制するための布石になる。

今回の選挙では、既成政党に加え、新興勢力が次々と参戦する。注目は、昨年の都知事選で善戦した石丸伸二氏が旗揚げした新党「再生の道」、そして総選挙で躍進した国民民主党とれいわ新選組だ。
こうした新勢力の登場により、自民・公明・都民ファーストが築いてきた“指定席”が崩れる可能性が出てきた。都議会の構図が大きく変わることも十分あり得る。

現時点での立候補予定者数を見ると、自民党39人、都民ファースト33人、公明党22人に対し、「再生の道」は38人と並ぶ規模で挑む。国民民主も11人を擁立予定で、れいわも3人を立てる。各党の戦略と連携が、票の行方を左右することになるだろう。

自民と公明、ついに決裂——裏金問題の影響

特に注目されるのが、自民党と公明党の関係だ。国政レベルで長年連立を組んできた両党だが、今回の都議選では選挙協力を解消。自民党は、裏金問題をめぐって都議6人の公認を取り消す事態に陥った。これを受けて公明党は、自民候補を一切推薦しないという異例の対応をとる。

背景には、昨年の総選挙で公明党が裏金議員を推薦し、大きな批判にさらされた苦い経験がある。自民党との関係維持よりも、有権者への信頼回復を優先した判断だ。
とはいえ、これが自公関係に大きな亀裂を生むのは避けられない。都議選の決裂が、参院選、そしてその先の国政にも波及する可能性が高い。

小池知事と玉木代表――兄弟政党のジレンマ

都民ファーストを率いる小池百合子知事と、国民民主党の玉木雄一郎代表は、かつて「希望の党」をともに主導した“同志”だ。
また、国民民主の支持母体である連合東京も、小池知事と良好な関係にある。こうした背景から、都民ファーストと国民民主は、都政では“兄弟政党”のような関係にある。

しかし、現在の国民民主党は、減税を掲げて無党派層を中心に支持を拡大中。今こそ候補者を大量擁立し、都議会に足場を築く好機であるにもかかわらず、小池知事への配慮から擁立を現時点では11人にとどめている。
この“遠慮”が、国民民主の飛躍を妨げる要因となりかねない。

とはいえ、この控えめな姿勢は、夏の参院選における協力体制の布石ともいえる。国民民主は、都議選では抑え気味に出ることで、参院選で小池知事の支援を引き出す思惑がある。

立憲・共産の「タッグ」に限界

立憲民主党と共産党は、東京都内では選挙協力の歴史が長く、今回も一定の連携を維持する構えだ。しかし、昨年の都知事選で立憲が推した蓮舫氏と共産の共闘は惨敗。特に、現役世代からの支持をまったく得られなかったことが明らかとなり、両党の“高齢支持層頼み”に限界が見えた。

さらに、今回は無党派層に訴求力のある新興勢力が加わり、票の分散は避けられない。立憲・共産にとって、投票率が下がるほど有利になるという、歪んだ構図に依存せざるを得ない苦しい状況だ。

一方、大阪発の日本維新の会は、万博への逆風で勢いを失っており、東京では苦戦が予想される。その維新を支持率で追い抜いたのが、れいわ新選組だ。少数候補ながら、インパクトのある選挙戦で都議会進出を狙う。

台風の目、「再生の道」

そして、台風の目となりそうなのが、石丸伸二氏率いる「再生の道」だ。
公募によって選ばれた候補者を大量擁立し、選挙区調整なしで突き進むスタイルは、従来の政党とは一線を画す。

ただし、候補者同士の競合による“共倒れ”の懸念もあり、議席獲得数は読めない。今回は議席数よりも、「再生の道」や石丸氏自身の知名度アップを重視した戦略と見られる。

一方で、昨年の都知事選をめぐる石丸氏の選挙違反疑惑が、今後の選挙戦に影を落とす可能性もある。だが、自民や立憲といった既存政党への不満の受け皿として、一定の票を集めることは間違いない。

都議選の勝者が、政界再編の主役となるか

6月の都議選は、単なる地方選挙ではない。
それは、7月の参院選への道筋であり、そしてその先の“政界再編”の布石となる。

既成政党の崩壊、新興勢力の台頭、自公の決裂、小池知事の影響力、そして石丸伸二氏の動向——。
あらゆる要素が絡み合い、日本政治の地殻変動を引き起こす可能性を秘めている。

「都議選を制した者が、参院選を制す。そして、政界再編を制す」
その予言が現実となるかどうか。東京発の新たな政治ドラマから、目が離せない。