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国民民主の沈没で火がついた「女帝復活劇」——小池百合子、国政復帰への野望

参院選の前哨戦とされる東京都議会選挙は、自民と公明が惨敗、立憲民主党と国民民主党は伸び悩み、小池百合子知事が率いる都民ファーストが大勝という結果に終わった。

都議選の背後で進んでいるのは、政界の主役交代。国民民主党の玉木雄一郎代表の転落と、小池知事の復活だ。

玉木氏はかつて「ポスト石破」の有力候補と目されていたが、いまやその勢いは見る影もない。逆に静かに息を吹き返しているのが“女帝”小池百合子である。

小池氏にとってこの都議選は、国政復帰への踏み台に過ぎない。その先に彼女が見据えているのは、悲願である「初の女性総理」の座だ。

そして、国民民主党の失速が、その野望に再び火をつけた。都議選は、政界再編の幕開けの舞台である。

国民民主党の崩壊——止まらない失速

国民民主党は都議選で議席をゼロから9へ伸ばした。「躍進」に見えるが、目標議席は11だった。一時の勢いからすれば二桁は確実とみられていただけに、伸び悩んだ感は否めない。

時事通信が6月に実施した世論調査によれば、参院選比例代表の投票先として国民民主党を挙げた人は6.0%。前月から5.2ポイントもの大幅減である。1ヶ月でほぼ半減した格好だ。

立憲民主党も1.1ポイント減の8.3%と苦しい状況だが、それでも国民民主党の落ち込みに比べればマシと言える。

さらに注目すべきは参政党だ。1.5ポイント増の3.5%となり、れいわ新選組や共産党を上回る勢いだ。国民民主党の支持層の一部が参政党に流れている構図が浮かび上がってくる。

都議選でも参政党は4人を擁立して3人が当選。議席ゼロに終わった維新、れいわ、再生の道を横目に、参院選で台風の目となる可能性が強まっている。

かつては「参院選で立憲を超える」とまで囁かれた国民民主党だが、その気配も完全に消えた。そして、この流れを先取りする形で注目されたのが、都議選だった。

都議選で失速が鮮明に——玉木代表の責任論へ

国民民主党はこれまで都議会に議席がなかったため、今回の都議選で初めて本格参戦する形になった。当初は4人区以上に候補者を絞りつつも18人を擁立。「候補者を立てれば当選者も増える」と期待していた。

しかし、国民民主党は都民ファーストの会を率いる小池知事との“蜜月関係”を重視し、都民ファーストと選挙区が競合しないよう配慮し、擁立を絞り込んだ。

その背景にあるのが、かつて小池氏が立ち上げた「希望の党」の存在だ。希望の党の残党が再結集してできたとも言えるのが、今の国民民主党である。

結局、都議選の主役は国民民主党ではなく、都民ファーストになった。国民民主党は参院選で、都民ファーストに流れた無党派層を引き戻せるか。参院選でも伸び悩めば、玉木代表の辞任論が浮上する可能性がある。

女帝・小池百合子、復活のシナリオ

そんな国民民主党の凋落を横目に、静かに復調ムードを漂わせているのが都民ファーストの会と、その“総帥”である小池知事だ。

国政レベルでは、国民民主党を離れた票の多くは自民党に戻っている。しかし、裏金事件で信頼を失った自民党に対しては、都政レベルで厳しい目が向けられた。都議選では、「自民党ではなく都民ファーストへ」という流れもみられた。

小池知事はこれまで、公明党や連合との関係を築きつつ、自民党とも手を結びながら都政を運営してきた。今回の都議選でも自民党と激突しているように見えて、実は“同じ船”に乗っているとも言える。

一方で、都議選での自民党の惨敗と国民民主党の伸び悩みで、小池知事の立場はむしろ強まった。玉木代表の凋落によって、国政復帰の足がかりとして国民民主党を“利用”する道が開けたとも言える。

これが、小池百合子の真骨頂——「自分ファースト」である。

小池百合子の最終目標——政界再編と女性総理への道

小池知事が狙う最終目標は言うまでもない。「初の女性総理」の座だ。

昨年の東京15区補選で国政復帰を画策したが、学歴詐称疑惑が再燃し断念。その後の都知事選では圧勝したものの、“主役の座”は石丸氏に奪われた。さらに秋の総選挙では国民民主党が躍進し、自民党反主流派や公明党が玉木氏を総理候補に据える構想まで浮上していた。

だが今、国民民主党の失速がその流れを根底から変えつつある。大連立に動く自民党主流派と立憲民主党に対抗するため、反主流派・国民民主残党が小池百合子を担ぎ、第三極として結集する——そんなシナリオもあながち否定できない。

小池百合子、ついに国政復帰。そして総理の座へ——。

彼女は今回の都議選を、その序章と考えているだろう。