東京都知事選の告示(6月20日)まで1ヶ月を切った。学歴詐称疑惑が再燃している小池百合子知事は3選を目指して出馬するのかどうかを明言していない。
小池元側近の弁護士が、前回知事選前に学歴詐称疑惑を沈静化させたカイロ大の声明文は小池知事が作成したことを暴露し、小池知事が今回の知事選に出馬すれば公職選挙法で刑事告発すると表明している。
小池知事は選挙に強いという「小池神話」は崩れ、4月の目黒区長選挙と衆院東京15区補選で擁立候補が惨敗。都知事選に出馬して勝てるのかどうか、刑事告発をかわせるのかどうか、ギリギリまで情勢を見極める考えなのだろう。
5月17日の定例記者医会見は、告示が1ヶ月に迫るなかで行われた。この直前には、自民党が都知事選に独自候補擁立を見送り、小池知事と連携する方針を決めたと報じられた。しかもこの日、ユーチューブで政治のエンタメ化を掲げて人気を得ている広島県安芸高田市の石丸伸二市長が都知事選出馬を表明した。
記者会見の質問は都知事選への対応に集中したが、小池知事は明言を避け、煙に巻いた。
主なやり取りは以下だ。
Q 都知事選告示まで20日で1ヶ月。3期目を狙う考えは?
A 今、私、現職でございます。しっかりと毎日のこと、いろいろな種まきということに集中してやっていきたい。
Q 3期目を目指すと表明されたと理解してよいか?
A 現職として目下の課題にしっかりと取り組んでいる。それ以上でも以下でもない。
Q 表明の時期は?
A それも毎日の課題に取り組む中で考えていく。
Q 安芸高田市の石丸市長が出馬表明。東京一極集中を変えると訴えている。
A すでに立候補したいという方は十数名いるとうかがっている(苦笑)。いろんな方が手を挙げられるんだろうなと思うし、一極集中について、どういうご意見を持っておられるのか、私よく存じ上げません。多くの都知事選へのチャレンジャーがおられるんだという認識だ。
この日は出馬するかしないか明らかにしないと心に決めて記者会見に臨んだのは間違いない。
自公与党との連携には手応えを感じているものの、気になるのは、4月の補選全勝で勢いづく立憲民主党の動向だろう。すでに都知事選に候補者擁立を掲げ、数人に絞り込んだことを公表している。共産党がそこへ乗る可能性は極めて高い。まさに4月補選で全勝した「立憲+共産」で「小池+自公」に挑むという構図だ。
まずは立憲の擁立候補を見て、自らの対応策を決めるということだ。
加えて学歴詐称疑惑への批判が高まっていくのかも見極めるつもりだろう。小池知事は大手マスコミが集まる都庁記者クラブを押さえ込んでおり、マスコミ各社は学歴詐称疑惑をスルーしている。東京五輪や都市再開発で在京マスコミと小池都政は連帯感を強めており、学歴詐称疑惑への批判の広がりを抑え込めるのなら都知事選出馬に踏み切るということなのかもしれない。
小池知事は前回知事選も告示の6日前に出馬表明した。今回もギリギリまで情勢を見極める可能性が高そうだ。
さらに興味深かったのは、石丸市長出馬への反応である。ほとんど眼中にないという姿勢をあらわにして、プライドの高さをにじませた。
小池知事は「テレビの人」である。テレビキャスターから政界入りし、テレビの影響力を知り尽くし、テレビ局を味方につけてイメージアップに成功してきた。
一方、石丸氏は「ユーチューブの人」である。市議会やマスコミとの激突を動画で可視化する劇場型政治を徹底し、切り抜き動画を拡散させ、安芸高田市公式ユーチューブチャンネルの登録者数を全国自治体トップに押し上げた。まさにネット界で勢いづくインフルエンサー市長である。
ネットでの勢いは実際に得票にはなかなか結びつかないと言われてきた。ネット拡散を知り尽くす石丸市長がテレビを知り尽くす小池知事にどう挑むのか。都知事選はテレビvsユーチューブという新旧メディア対決の様相もはらんでいる。