東京都の小池百合子知事はいまなお知事選(6月20日告示、7月7日投開票)への出馬を表明していない。立憲民主党の蓮舫参院議員が電撃的に出馬表明し、当初の選挙戦略が狂ったためだ。
告示まであと2週間。土壇場の選挙情勢調査で勝てるかどうかを見極め、最終判断するとみられる。
では、小池知事と蓮舫氏が激突したらどうなるか。前回の2020年都知事選と2022年の参院選東京選挙区の結果から大胆に予測してみよう。
2020年 都知事選 投票率55.00%
小池 366万1371
宇都宮(無所属) 84万4151
山本(れいわ) 65万7277
小野 (維新) 61万2530
前回知事選は小池氏の圧勝だった。JX通信社によると、当時の小池支持率は70%。立憲や共産が推した宇都宮氏とれいわの山本太郎代表が共闘していても勝ち目はなかったかもしれない。
しかし、今回の小池支持は33%に急落(不支持も33%)。小池氏が当初は反自民を掲げて知事選に当選したのに、その後の2期8年で裏金自民と結託したことが鮮明となり、支持率急落を招いた。
今回は前回の366万票には遠く及ばないのは間違いなかろう。
2022年 参院選 東京選挙区 投票率56.55%
①自民 朝日 92万2793 ③共産 山添拓 68万5224
②公明 竹谷 74万2968 ④立憲 蓮舫 67万0339
⑤自民 生稲 61万9792 ⑥れいわ 山本 56万5925
・無所属 乙武 32万2904 ・立憲 松尾 37万2064
・都ファ 荒木 28万4629 ・社民 服部 5万9365小池陣営 計 289万3086 蓮舫陣営計 235万2917
参院選候補者のうち、自民2候補、公明、都民ファーストに加え、無所属の乙武洋匡氏(今年4月の衆院東京15区補選に小池知事に担がれて出馬・落選)を加えた5候補の得票を「小池陣営の基礎票」と仮定すると約289万票となる。
一方、立憲2候補、共産、れいわ、社民の5候補の得票を「蓮舫陣営の基礎票」を仮定すると約235万票となる。
その差は54万票だ。これをもとに両陣営の増減要因を検討してみよう。
小池陣営の不安は、何といっても自民党の裏金事件に対する猛烈な批判だ。
小池知事が自民党の推薦を受ければ世論の大逆風の直撃を受けることになる。とはいえ、自民党の推薦を受けなければ、参院選2候補が獲得した160万票から自民組織票が逃げていく恐れがある。裏金自民との距離の取り方が勝敗を左右しそうだ。
自民党と連携して東京五輪や都心再開発を進めてきた小池都政に対する支持低下も看過できない。JX通信社の調査では、小池都政の「継続」を求めるのは24%にとどまり、「交代」の42%を大きく下回った。
一方、蓮舫陣営にも不安要素がある。
蓮舫氏は参院選東京選挙区でトップ当選を重ねてきたが、前回は立憲民主党の低迷の影響を大きく受けて4位当選に甘んじた。蓮舫氏自身の勢いもかつてほどはない。
さらにれいわ支持層が蓮舫支持に回るかも見通せない。蓮舫氏は、消費税増税を進めた野田佳彦元首相の側近である。消費税廃止を唱えるれいわの支持層には蓮舫支持への抵抗感もある。
その他の重要な要因は、維新だ。
維新は大阪万博への公金投入で失速したとはいえ、首都圏でも二大政党に反発を強める無党派層から一定の支持を集めている。前回都知事選では小野氏が61万票を獲得、前回参院選でも海老沢氏が53万票を得た。
今回の都知事選には独自候補を擁立するのかなお決定していない。50万票前後はあるとみられる維新票の行方が小池知事vs蓮舫氏の勝敗を左右する可能性は十分にある。
維新と小池知事の関係は必ずしも円滑ではない。一方、維新は立憲にはライバル心をむき出しにしている。維新の動向は読みにくい。
2014年都知事選に出馬して61万票を獲得した元航空幕僚長の田母神氏の出馬も波乱要因だ。右派には人気が根強く、今回も数十万票を得る可能性がある。田母神氏に蓮舫支持層が流れる可能性は低いとみられ、割りを食うとしたら小池知事かもしれない。
日本保守党の出方も見通せない。4月の衆院東京15区補選にはアラビア語に堪能な飯山あかり氏を擁立した。小池知事が国政復帰を目指して東京15区補選に電撃出馬するとの憶測を踏まえ、「アラビア語対決」を演出する狙いがあった。だが、右派に人気の日本保守党には、小池知事よりも蓮舫氏への抵抗が強い。独自候補を擁立すれば蓮舫氏を利する可能性があり、今後の出方が注目される。
もっとも読みにくいのは、YouTubeで人気の広島県安芸高田市の石丸市長の出馬だ。ホリエモンやひろゆきら著名人が支持の構えをみせている。ひろゆきは東京15区補選で、小池知事が担いだ乙武氏を応援した。石丸氏の出馬が小池知事と蓮舫氏のどちらの票を減らすのか、見通すのは極めて難しい。
今後も新たな候補が出馬表明する可能性はある。いずれにせよ、小池知事が出馬すれば蓮舫氏との大激戦となる公算が高い。