政治を斬る!

都知事選の序盤情勢「小池が大きくリード、蓮舫と石丸が追う」をどう受け止めたらよいのか?過去最多56人が出馬し「誰が都知事にふさわしいか」で投票したら票が分散して小池楽勝に!「打倒百合子」を最優先にした投票行動とは?

東京都知事選(6月20日告示、7月7日投票)は、小池百合子知事が優勢で、蓮舫氏は伸び悩み、石丸伸二氏が伸びている。

TBSは6月22日行ったインターネット調査の内容を報じた。小池氏が他の候補を引き離していて、蓮舫氏、石丸氏が追う展開だという。私のこれまでの取材や分析とほぼ一致している。

選挙はベクトルが重要だ。この情勢からすると、大逆転の奇跡を起こすとしたら、石丸氏ではないか。

TBS報道に先立って私がYouTubeでそんな分析をしたところ、たくさんの賛否をいただいた。

その多くは、蓮舫氏のここが嫌だ、石丸氏はここがダメだ、というものだった。小池知事を勝たせたいのかという抗議もあった。

私がいいたいのは、蓮舫氏と石丸氏のどちらが都知事にふさわしいかではない。どちらが小池知事を倒す可能性があるかだ。

そして、私たちは「どちらが小池知事を倒す可能性があるか」で投票先を決めるのがよいというのが私の結論である。

それはどちらなのか。

過去最多の56人が立候補した今回の都知事選で、有権者が56人から「一番好き」な人を選んで投票すれば票が分散し、現職の小池知事が間違いなく逃げ切る。

小池知事は裏金自民と結託した業界団体、公明党を支える創価学会、そして労働組合をまとめる連合といった組織票を握っており、200万票以上を獲得する可能性が高いからだ。

56人の人気投票になれば、とてもかなわない。

これは衆院選の小選挙区と似ている。自公与党は候補者を一本化して組織票を固めているのに、野党は候補者が乱立して政権批判票が分散する。これでいつも野党は負けてきた。

今回の都知事選は、いつもの衆院選以上に、アンチ小池票が分散する構図になっている。このままでは小池知事の楽勝である。

では、どうすればよいのか。

私は今回の都知事選の最大の争点は、小池都政を支持するか、支持しないかだと考えている。

私は、小池都政を支持していない。

小池知事は8年前の知事選に「反自民」を掲げて当選した。

ところがその後、大きく変節し、東京五輪や都心再開発といった巨大利権を、二階俊博氏や萩生田光一氏ら裏金自民党と結託して進めてきた。

反自民を期待して投票した有権者を裏切る政治的変節というほかない。

学歴詐取疑惑や明治神宮外苑の樹木伐採など、小池知事には批判されるべき点が多々あるが、やはり最大の失政は当初の公約を捨て、裏金自民党と結託したことにある。

この政治的変節を許すのかどうかが、今回の都知事選の最大の争点だ。

だとするならば「誰に都知事になってほしいか」ではなく「小池知事に勝つ可能性がいちばん高いのは誰か」で投票先を選ぶしかない。

これはまさに衆院選の小選挙区と同じだ。「自公与党を野党に転落させるためには誰に入れたらいいか」で考えるしかない。

都知事選の現時点の情勢は①小池知事②蓮舫氏③石丸氏の順で間違いないだろう。今日が投票日なら、私は蓮舫氏に投票する。

問題は7月7日の投開票日までこの順位が続くのかどうかだ。

各党の情勢調査の数字でも、世論の空気でも、蓮舫氏は失速している。本人もSNSで「どうせ届かない。現職は強い。無理だよ。それでも、私は勝ちたい」と弱音を吐いた。おそらく立憲独自の情勢調査でも相当厳しい数字が出ているのではないだろうか。

告示直後の現時点で候補者本人がこれほど弱気をみせれば、どんどん票は逃げていく。

有権者は、理念や政策で投票先を選ぶ人ばかりではない。むしろそれは少数派だ。多くは自分にとって得か損か、利害で選ぶ。

負けたくない。負けて干されるのは嫌だ。勝ち馬に乗りたい。

リベラルが選挙に弱いのは、その現実を受け入れていないからだ。みんな生活がかかっている。負け馬に乗るわけにはいかないのだ。だからこそ「自分は勝つ」と鼓舞しなければならない。

候補者本人が告示日直後から弱音を吐いたら勝てる選挙も勝てない。結局、蓮舫氏自身が敗北した後の政治人生(衆院への鞍替え)を考え、「優しい蓮舫」という自らのイメージアップを優先しているのではないか。そのような空気がにじんだ途端に、ますます票は逃げていく。

いまの蓮舫氏の戦い方は「小池さんと、私と、どちらが好きですか」と問いかけているようにみえる。これでは現職知事にはとても勝てない。

蓮舫氏が優しいかどうかはどうでもいい。とにかく小池知事を倒してほしい。なりふり構わず、倒してほしい。そのようなアンチ小池の声を集結させない限り、大逆転の奇跡は起きない。

選挙はベクトルだ。勢いがあるところに人も票も集まってくる。

蓮舫支持層からは「蓮舫氏の街頭演説の人だかりをみてほしい」という声も届くが、これはあてにならない。その多くは共産党支持層をはじめとする動員だからだ。街頭演説の人の数で判断するのなら、4月の衆院東京15区補選(江東区)は日本保守党が圧倒的に多かった。区民ではなく全国から支持者が殺到したからだ。

伸び悩む蓮舫氏よりも、未知数で急伸している石丸氏のほうが、まだ大逆転の奇跡の可能性があるというのが私の分析である。

もちろん、こればかりは蓋を開けてみないとわからない。

幸い、投票日1週間前の6月29日、30日の週末の多くのマスコミが最終情勢調査をするだろう。

そのとき、蓮舫氏と石丸氏のどちらに勢いがあるか、どちらが小池知事を倒す可能性が高いか。

その時点の数字で判断するのがよいというのが私の結論だ。

だから、はやめに不在者投票に行くのはおすすめしない。

まずは小池知事を倒すこと。個々の候補者の好き嫌いではなく、「打倒・小池」を最優先に投票先を決めること。

これは次の衆院選挙にもつながる思考である。

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