東京都都知事選は現職小池百合子氏がリードしている。小池批判票が蓮舫氏と石丸伸二氏に分散し、逃げ切る様相だ。
このまま小池知事が3選を果たせば、どうなるのか。東京都には小池帝国が確立する。小池氏は生涯、都知事に居座るかもしれない。
小池氏はもともと初の女性首相を目指していた 都知事は首相への腰掛けポストにすぎなかった。
2017年衆院選では「希望の党」を旗揚げして当時の野党第一党だった民進党を吸収、一時は政権交代の機運が高まり、小池政権誕生への期待も高まった。しかし、枝野幸男氏らリベラル派を受け入れない「排除」発言で失速し、小池氏自身は衆院選出馬を見送り、希望の党は空中分解して惨敗した。
次のチャンスは今年4月の衆院東京15区補選だった。小池氏が知事を電撃辞任して出馬し、国政復帰を果たしてうえで二階俊博元幹事長や萩生田光一前政調会長の手引きで自民党復党を果たし、9月の総裁選に出馬するというシナリオが検討されていたのである。ところが、補選目前に文春砲で学歴詐取疑惑が再燃し、小池氏は出馬を見送った。
小池氏の国政復帰→女性初の首相の野望はほぼ潰えたようにみえる。仮に7月の都知事選で3選を果たしても、そのあと国政復帰のタイミングはなかなかない。
小池氏はすでに71歳。知事選直後には72歳になる。
国政ではキングメーカーの麻生太郎副総裁の83歳は別格として、麻生氏とキングメーカーを争う菅義偉前首相は75歳だ。現首相の岸田文雄氏は66歳、ポスト岸田に意欲をみせる石破茂元幹事長は67歳 茂木敏充幹事長は68歳。いずれも9月の総裁選が首相へのラストチャンスと言われている。
女性初の首相候補として急浮上した上川陽子外相は小池氏と同じ71歳だ。彼女も9月の総裁選がラストチャンスだろう。それに続くのは、高市早苗氏63歳 野田聖子氏63歳。次世代には 小渕優子氏50歳が控えている。
9月の総裁選で岸田首相が退陣し、新首相が誕生すれば、そのまま10月解散総選挙に傾れ込む可能性が高い。知事3選を果たしたばかりの小池氏がすぐに知事を辞任して総選挙に出馬するのはほぼ不可能だ。次の次の総選挙は3年ないし4年先になるだろう。小池氏は75歳を超えてくる。
やはり国政復帰はほぼ絶望的だ。そこで浮上しているのが「生涯知事計画」である。
今回の知事選で小池氏が3選を果たせば、小池帝国は磐石になる。
最大の懸念だった学歴詐称疑惑も、小池知事は今回の知事選でも「カイロ大卒」で押し通した。元側近の小島弁護士が刑事告発したものの、知事選で勝利した現職を検察当局が公選法違反で立件する可能性はほとんどない。日本の検察は正義の味方ではなく、権力者の味方なのだ。3選を果たせば学歴詐称疑惑にケリをつけたという流れになろう。
自公与党と連合は小池氏を応援しており、都議会の政権基盤は安定する。自民都連会長の萩生田光一氏と会長代行の丸川珠代氏はともに安倍派裏金議員として批判を浴びたが、小池氏に救われる格好となり、ますます自民党との関係は強固になろう。
国政復帰は困難でも、都庁の伏魔殿に居座る限り、政治基盤は磐石だ。
小池氏は政治家をやめてもすることがない。「知事、知事」と周囲から持ち上げられ、さながら女帝のような気分を深めていくのではないか。都庁はますます伏魔殿になる。
この流れにストップをかけるのは、やはり選挙しかない。有権者が「だれに知事になってほしいか」という思いで56人の候補者から投票先を選んでいたら、既得権層に押された現職の小池氏を倒すのは困難だ。打倒小池を最優先に「小池を倒す可能性がいちばん高い候補」に票が集結すれば、大逆転の可能性はあろう。
現時点で、2位は蓮舫氏、3位は石丸伸二氏とされる。ふたりの票を足せば、小池氏を上回る可能性が高いとみられている。「誰が小池氏に勝てるのか」で決める戦略的投票が浸透すれば、小池落選の可能性が出てくる。
その音頭をとるべきは、立憲執行部だろう。石丸批判をすればするほど、石丸支持層は離れていく。
小池氏が討論会を拒否する中、私は蓮舫氏が石丸氏のユーチューブに出演して政策論争をかわすとともに「打倒小池」と一緒に訴えるのがいちばんいいと思う。石丸氏は拒絶しにくいだろう。
さて、それを受け入れる度量が蓮舫氏や立憲執行部にあるか。ウイングを広げなければ女帝は倒せない。
その構図は自公与党が候補者を一本化する一方、野党は候補者乱立で敗北してきた衆院選とまさに同じだ。