東京都議会議員選挙が始まった。この都議選は、7月に予定される参院選の前哨戦として、中央政界にとって極めて重要な意味を持つ選挙だ。投開票日は6月22日である。
国政では、国民民主党の大失速、小泉進次郎農水相の登場、そして石破茂総理による現金バラマキ――政局が大荒れの様相を呈している。
こうした混乱の影響を最も直接的に受けるのが、まさにこの東京都議選である。
では、実際に有権者の民意はどう動いているのか。
朝日新聞社が実施した最新の情勢調査をもとに、東京都議選の動向を読み解いていきたい。
「ネット調査」が示す新たな潮流
朝日新聞の都議選情勢調査は、インターネットによるアンケート調査だ。国政選挙では固定電話や携帯電話を組み合わせた調査が主流だが、東京に限っていえば、いまやネット調査のほうが民意に近いとされる。
その理由は明快だ。若年層を中心に、電話調査は敬遠される傾向が強まっている。携帯電話に見知らぬ番号から着信があっても、出ない人が多い。一方で、ネット調査なら気軽に回答できる。さらに、高齢者の間にもインターネットが普及しつつあり、調査対象の偏りが少なくなっている。
もうひとつのポイントは、「トレンド」を重視するということだ。絶対値の支持率よりも、「上向きか、下向きか」という勢いの変化こそが選挙結果に直結する。だからこそ、週単位で調査を繰り返し、その動きを追うことが重要になる。
朝日新聞が実施した今回の調査は2回。第1回は6月6日・7日、第2回は6月13日・14日だ。
第1回調査は、国民民主党が「山尾ショック」と玉木雄一郎代表の失言で支持率が急落した直後。一方、自民党は小泉進次郎農水相の登場による追い風を受けていた。
第2回調査では、立憲民主党が内閣不信任案の提出を見送り、大連立への機運が高まった時期。そして自民党は石破総理の現金バラマキ発表後で批判の真っ只中だった。
この2回の調査結果を比較することで、都議選の趨勢が見えてくる。
自民の復調と国民民主の失速
まず注目すべきは自民党だ。第1回の支持率は31%、第2回では28%へと微減している。進次郎農水相の登場で一時は盛り上がりを見せたが、石破総理の現金給付策が逆風となり、勢いが鈍った。
それでも、裏金問題による一時的な壊滅的状況からは回復傾向にあり、「惨敗回避」の見方が徐々に広がりつつある。
一方で、国民民主党の失速は深刻だ。昨年の総選挙で大躍進し、立憲を上回る支持を得た勢いそのままに都議選へ参戦したものの、山尾志桜里氏の参院選出馬をめぐる混乱と、玉木代表の軽率な発言が響いた。
第1回調査では12%、第2回でも11%と、一見すると健闘しているように見える。しかし選挙におけるトレンドが下向きであることが致命的だ。当初想定されていた「国民民主旋風」は完全に消え去ったといっていい。
立憲民主党は第1回が15%、第2回が14%。国民民主の失速によって浮上してきたが、大連立への懸念や、野田代表の内閣不信任案見送り報道などが影響し、支持は伸び悩んでいる。
結果として、都議選は自民・立憲という二大政党がともに信頼を失い、第三極が台頭する構図が強まっている。
無党派層が流れる先――都民ファーストと新興勢力
では、都民の期待はどこへ向かっているのか。
都民ファーストの会は第1回が10%、第2回が12%と、じわり上昇している。無党派層が自民・立憲に見切りをつけ、消去法で都民ファーストに流れている様子がうかがえる。
小池百合子都知事個人への強い支持はないものの、「既存政党にNO」という意思表示としての選択肢として機能している。
さらに注目すべきは、新興勢力だ。
れいわ新選組は5%をキープし、維新(3%)を上回る存在感を見せつつある。都議会初の議席獲得も視野に入る状況だ。
参政党も4%で安定しており、支持層を固めつつある。大量の候補者擁立作戦が功を奏してきた感がある。
逆に驚きだったのは、石丸伸二氏が旗揚げした「再生の道」が2%止まりで低迷していることだ。昨年夏の都知事選で旋風を巻き起こした石丸氏だが、その勢いは完全に消え去りつつある。
都議選の行方、そして参院選へ
今回の調査を総括すれば、自民党には復調の兆しが見えるものの、都民の間では二大政党への不信感が根強い。国民民主党が自壊し、代わる受け皿を探しているのが今の有権者の心情だ。
都民ファーストがその受け皿の筆頭であり、れいわや参政党といった新興勢力も着実に支持を伸ばしている。しかし、いずれも決定打にはなりきれていない。
問題はこの先だ。都民ファーストは東京限定の地域政党であり、7月の参院選に本格参戦はしない。では、都民ファーストに流れた民意は、どこに向かうのか。自民党や立憲への回帰か、それとも新たな受け皿が現れるのか。
昨年の総選挙では、「減税」と「手取りアップ」を掲げた国民民主党が無党派層を席巻したが、今夏の参院選ではその座が空席になっている。
この空白を埋める勢力が現れるのか。無党派層の心に刺さるメッセージを掲げた政党が、夏の主役に躍り出る可能性は十分にある。
東京都議選の結果は、その行方を占う最初の試金石となるだろう。