7月の参院選の前哨戦と位置付けられた東京都議会議員選挙が6月22日に投開票され、各党の現在の勢いが鮮明になった。
結果は、驚くべき「全員敗北」に見える。自民・公明の与党勢力はともに惨敗。共産党も大幅減。野党勢力の立憲民主党と国民民主党も伸び悩んだ。維新の会、れいわ新選組、そして石丸伸二氏が旗揚げした「再生の道」は、議席ゼロ。
勝者なき選挙……かに思えたが、実は明確な勝ち組が存在する。それが小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」と、急浮上してきた「参政党」である。
この都議選が映し出したのは、既存勢力の弱体化と、新興勢力への期待感だった。そしてそれは、目前に迫る参議院選挙への布石にほかならない。
自公の惨敗、進次郎人気も都市部では通用せず
まず、政権与党の自民党は過去最低の21議席にとどまり、第一党の座を失った。これは単なる選挙区事情ではなく、自民党の根深い構造問題を浮き彫りにしている。
首都・東京では、旧安倍派の裏金事件に端を発した不信感が根強い。幹事長経験者6人を非公認とするなど「自浄努力」をアピールしたが、もはや焼け石に水だった。出口調査では、自民党は支持層の半分程度しか固められず、2割程度が都民ファーストに流れた。
全国では小泉進次郎農水大臣の「コメ増産」などの改革姿勢で一定の支持を集め始めていたが、都市部の有権者には響かない。裏金問題のダメージが上回った形だ。参院選に向けて、進次郎人気で勢いづく自民党に冷や水を浴びせたと言えるだろう。
そして、公明党。創価学会の牙城・東京で8回連続の「全員当選」の記録が途絶え、3人が落選した。支持母体である創価学会の高齢化、そして長年の与党病による政策面での曖昧さが背景にある。公明党にとっても、参院選での苦戦は避けられない状況だ。
野党陣営も失速、国民民主党の限界露呈
続いて野党勢力だが、国民民主党の「中途半端な躍進」が象徴的だ。ゼロ議席から9議席への増加は、一見すると「健闘」に映る。しかし目標は11議席以上だった。昨年の衆院選での躍進から考えれば、本来は2桁当選が確実視されていたのだ。
支持率低迷の要因は明白である。山尾ショックに加え、玉木代表自身の相次ぐ失言。これにより、勢いは完全にしぼんでしまった。都議選で勢いを示せなかったことは、7月の参院選にも暗い影を落とす。
立憲民主党も同様だ。2議席増で17議席となり、共産党を抜いて第4党に浮上したものの、決して「野党第一党」の貫禄ではない。むしろ、自公批判票の受け皿になりきれていないという民意が浮き彫りになった。
一方、共産党は5議席減の14議席。高齢化が進み、固定支持層の衰退が止まらない。立憲の議席増も、この共産党からの移動票によるものであり、無党派層の支持拡大によるものではない。
そして、維新・れいわ・再生の道は、全員落選。維新は大阪ローカル政党に戻りつつあり、れいわは参政党の台頭で埋没。石丸伸二氏が率いる再生の道は、話題づくりだけで終わり、もはや消滅へ向かうだろう。
勝ち組は「小池百合子」と「参政党」
この惨状の中で唯一、明確な勝者は小池百合子知事率いる「都民ファースト」だった。31議席で第一党に返り咲き、自公との与党3党体制の中でも存在感を発揮した。
注目すべきは、都民ファーストが無党派層の受け皿になった点だ。自公批判票は、立憲にも国民にも流れず、小池知事に流れたのである。
小池知事は政界復帰を模索し続けてきたが、昨年は学歴詐称問題や都知事選での石丸氏の台頭などで足場を失っていた。しかし、国民民主党と再生の道が同時に失速したことで、再び存在感を増し、「国政復帰待望論」が再浮上する可能性がある。
さらに台風の目になりつつあるのが参政党だ。わずか4人擁立して3人が当選する快挙。わずか半年前まで支持率0.3%に過ぎなかった新興勢力が、都議選をきっかけに一気に注目を集めた。
特に、れいわ支持層の一部が参政党に移行している可能性がある。参院選では、これまで第三極を担ってきた国民民主党やれいわに代わって、参政党が「受け皿」となる可能性がある。
都議選の民意が指し示す参院選の構図
都議選の結果から見えてきたのは、二極化の進行だ。裏金事件で傷ついた自公与党、それでも頼り切れない立憲民主党・国民民主党。そんな中で、小池知事率いる都民ファーストと参政党が、怒れる無党派層の受け皿になりつつある。
参院選では、これまでの「自公 vs 野党連合」という単純な構図ではなく、「与党疲弊」「野党不振」「第三極再編」が本格化するだろう。とくに、参政党の動向は見逃せない。
7月3日公示の参議院選挙は、この都議選の延長戦だ。すでに「政界再編」の火蓋は切られている。