国民民主党の候補者取り下げ騒動で注目を集めた衆院東京１５区（江東区）補選（４月２８日投開票）。実は与野党ともに大揺れの選挙戦となりそうだ。
自民党は大逆風の衆院３補選のなかでも東京１５区は最も厳しいとみている。そもそも公選法違反で逮捕・起訴されて自民党を離党した柿沢未途氏の議員辞職に伴う補選だ。その前に東京１５区で当選した秋元司氏も収賄事件で逮捕・起訴され自民党を離党した経緯がある。二代続けてのスキャンダルで江東区では自民批判が高まっており、とても勝てる状況ではない。
しかも東京都連会長を務めるのは、安倍派の裏金事件で批判の真っ只中にある萩生田光一前政調会長である。その萩生田氏率いる自民党東京都連は１５区補選の候補者の公募を行う方針を決めたが、自民党本部はこれに異例の「待った」をかけた。
補選に３敗すれば「岸田おろし」が再燃する恐れがあるため、勝つ見込みの薄い東京１５区は最初から「不戦敗」とし、あと二つを２勝か１勝１敗で乗り切ろうという思惑がにじむ。
さらに焦点となっているのは、小池百合子・東京都知事が国政復帰を目指して１５区補選に出馬することが取り沙汰されていることだ。小池氏は「初の女性首相」への執念を燃やし続けているといわれる。４月の衆院補選で国政復帰し、自民党に入党して９月の総裁選に出馬し、いきなり総理・総裁を目指そうというわけだ。
小池氏は自民党とは二階俊博元幹事長や萩生田氏と通じており、先の八王子市長選でも自公候補に土壇場で加勢して勝利に導き、存在感を発揮した。
小池氏が自ら１５区補選に出馬すれば、自民党に勝ち目はなく、むしろ小池氏を推薦することで「１勝」を確実に手に入れたほうがよい。小池氏が出馬を見送っても、都民ファーストが候補者を擁立すれば公明党とともに相乗りし、「野党に勝った」とアピールすることもできる。
小池氏が４月補選で国政復帰すれば、岸田文雄首相にとってはやっかいだ。「小池潰し」を狙って衆院３補選を吹き飛ばす「４月解散・総選挙」を模索する可能性もあるだろう。
野党はこの東京１５区補選で、裏金事件で低迷する自民党に対抗し、次の総選挙でどこまで共闘できるのかが問われることになる。
しかし、現時点では維新と共産が独自候補の擁立を決定。国民も元フリーアナウンサーの高橋まり氏の擁立を発表していたが、「過去のラウンジ勤めと生活保護の不正受給」騒動で取り下げた。
立憲の泉健太代表は「東京１５区は自民党に勝たせない。自分たちの候補者擁立を含め、最大限の努力をしている」というが、維新は野党共闘を拒否する姿勢を強めており、野党一本化への道は険しそうだ。
野党各党も小池氏が出馬すれば勝ち目は薄く、それならば独自候補を擁立し、次の総選挙に向けて自党の党勢拡大を優先したほうがよいという現実的な判断もあるのだろう。
気になるのは、れいわ新選組だ。資金不足から衆院選への候補者擁立が他党より遅れているが、東京１５区補選は野党乱立が有力視され、全国的な注目度も高い。ここは独自候補を擁立して自公との対決姿勢のみならず立憲や維新との違いをアピールする絶好の機会である。政策担当の長谷川ういこ氏を擁立し、総選挙の前哨戦である主戦場へ参入したほうがよいと思う。