政治を斬る!

政界地殻変動〜トランプ関税“90日猶予”が日本政治を揺さぶる――自民・立憲のねじれと政界再編の予兆

米国のトランプ大統領が発表した関税引き上げ――その実施には90日の猶予が設けられた。この「90日」という期間が、日本の政局を根底から揺さぶっている。

偶然か、あるいは計算か。猶予期間の満了は、今年夏に予定されている参院選のまっただ中にあたる。すなわち、関税24%の“爆弾”が、日本の選挙に直撃する可能性があるのだ。

岸田政権の支持率低迷を受けて、昨年の総選挙では裏金問題が直撃し、自民・公明与党は歴史的な敗北を喫した。もし今回の参院選もトランプ関税が引き金となって敗北すれば、政権の存続すら危ぶまれる展開となる。

その命運を託されているのが、石破茂内閣と、トランプ政権との交渉役に任命された赤沢亮正経済再生担当相だ。

しかし、赤沢氏は石破首相の地元・鳥取選出であり、自民党内に仲間が少ない石破首相の最側近として抜擢されたに過ぎない。実績も交渉力も未知数。政権内部では「赤沢ではトランプに太刀打ちできない」という悲観論が強まっている。

トランプは農業・防衛・外交の全方位で譲歩を迫ってくるだろう。農業での譲歩は自民の大票田を危機に陥れ、防衛費やウクライナ支援の増額要求が世論の反発を招けば、参院選は壊滅的打撃になりかねない。

石破首相は、かつて安倍政権で貿易交渉の前線に立ち、トランプ政権ともパイプを持つ茂木敏充前幹事長に、交渉役を打診したという。

だが、茂木氏はこれを辞退。背景には、石破降ろしを狙う麻生太郎元首相の存在がある。

「次のチャンスがあるお前が、石破の泥をかぶる必要はない」と麻生氏が茂木氏を制止したという報道もある。ここに、石破政権を窮地に追い込みたい旧主流派の思惑が透けて見える。

一方、思わぬ援軍となったのが、立憲民主党の枝野幸男元代表だ。枝野氏は「トランプとの交渉が最重要であり、いま内閣不信任案を出して政治空白を作るべきではない」と発言。結果的に石破政権の延命に加担する形となった。

さらに、枝野氏は「参院選目当ての消費税減税は無責任なポピュリズム」と発言し、減税論に傾く与野党双方を一喝。減税を訴える党内の一部勢力に対して「別の党を作ればよい」とまで言い放ち、政界再編の火蓋を切ったのである。

この発言は、政権を支えるのが与党内部ではなく、野党内の一部主流派であるという奇妙なねじれ構図を象徴している。

いま政界では、
①石破首相・森山幹事長ら自民主流派と、野田佳彦代表や安住淳衆院予算委員長ら立憲主流派による「増税大連立」構想が水面下で動き、
②一方で、国民民主党が立憲の減税派を吸収し、自民党の減税派とも連携して政界再編の核になる流れもできつつある。

石破政権を揺るがすのは野党の攻勢ではなく、身内からの突き上げとトランプという外圧だ。

このねじれ構図こそが、来たる参院選、そしてその後の政界再編を決定づける要因となるだろう。

トランプ関税は、単なる通商政策ではない。まさに“時限爆弾”として、日本の政治を根底から変えつつある。