石破茂首相とトランプ大統領の会談がワシントンで2月7日(現地時間)にようやく行われる。この日米首脳会談は石破おろしの引き金を引く可能性がある。石破首相にとって「政局リスク」が極めて高いアメリカ訪問の裏側を解説する。
安倍晋三首相は一期目のトランプ政権が始まる前に会談に成功し、蜜月関係を築いた。石破首相も2期目のトランプ政権が始まる前の就任前会談を打診したが、トランプ氏に「就任前はどの国の首脳とも会わない」と断れれた経緯がある。
ところが、トランプ氏はカナダ首相やフランス大統領とは会った。石破首相のメンツは丸潰れになったのだ。
しかも、トランプ氏は安倍昭恵夫人とも会った。この会談をお膳立てしたのは、石破首相の政敵である麻生太郎元首相だったとみられている。麻生氏の側近の薗浦健太郎元外務副大臣が会談に同席したからだ。麻生氏が石破氏へのあてつけでトランプ・昭恵会談をセットした格好だ。
トランプ氏は昭恵氏との会談後、石破首相との就任前会談に応じる意向を示したが、石破首相は意固地になったのか、トランプ氏が大統領に正式に就任した後に会談する方針に転じ、2月7日会談に至った。
つまり、日米首脳会談が実現するまで紆余曲折があったのである。
しかもトランプ氏は石破首相とウマがあいそうにない。大統領選に勝利した直後、石破首相との電話会談はたった5分で終了した。韓国のユン大統領は倍以上話している。外務省幹部は電話会談に先立って①長話はしない②議論は吹っ掛けないーーの2点を石破首相に求めたというが、ネチネチと話す石破首相の話し方がトランプ氏に敬遠されることを恐れたのだろう。
さらにトランプ氏が首脳同士の直接取引(ディール)を好むことも不安材料だ。トランプ氏はロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記ら独裁者と相性がよい。独断即決で物事を決められるからだ。自民党内の政権基盤が弱く、さらには国会でも少数与党である石破首相は即断即決できる立場になく、トランプ氏は「こんなリーダーとは話し合っても仕方がない」と考えるかもしれない。
自民党内で3月の予算成立後にも石破おろしが始まるかもしれないという情報はトランプ氏にもあがっているはずだ。ますます石破首相を相手にしなくなる恐れもある。
一方、日米間の懸案は山積している。
トランプ氏は同盟国にも厳しい「アメリカ・ファースト」の姿勢を徹底させている。カナダやメキシコに関税引き上げを突きつけているのはその典型だ。
日本も関税引き上げだけではなく、日本製鉄のUSスチール買収計画の阻止や在日米軍をサポートするための防衛費増額などさまざまな要求を突きつけられる可能性がある。
石破首相が防戦一方になれば内閣支持率の下落を招くだろう。さりとてトランプ氏の要求をはねのければ日米関係が揺らぎ、これまた石破政権の体力を奪っていく。
日米首脳会談が終われば、次の山場は2月末の予算案の衆院採決だ。日米首脳会談を機に石破おろしの空気が強まり、予算案の衆院通過を機に本格化する可能性は十分にある