立憲民主党の野田佳彦代表は衆院解散目前の党首討論で、石破茂首相に「裏金隠し解散だ」と迫り、裏金事件を総選挙最大の争点に掲げる姿勢を鮮明にした。最大派閥・安倍派を中心とした裏金議員を大量落選させることで自公与党を過半数割れに追い込み、政権交代を実現させる戦略を描いている。
だが、石破首相が非公認を決断した安倍派重鎮の4選挙区は、いずれも野党候補が乱立。このままでは裏金批判票が分散し、無所属でも安倍派重鎮たちが当選する可能性が高いのが現状だ。
🔸東京24区 萩生田光一
立憲 有田芳生
維新 さとう由美
国民 浦川祐輔
参政 よくらさゆり🔸東京11区 下村博文
立憲 あくつ幸彦
維新 大豆生田みのる
共産 イハまさのり🔸兵庫9区 西村康稔
立憲 橋本けいご
維新 加古きいちろ
共産 高田よしのぶ🔸福井2区 高木毅
立憲 つじ英之
共産 おやなぎ茂臣
維新 斉木武志
無 山本拓(元自民・高市早苗氏の夫)
安倍派重鎮が無所属で出馬する4選挙区は、いずれも立憲と維新が競合しており、さらに国民や共産が擁立している選挙区もある。
東京24区や東京11区、兵庫9区は無党派層が多く、「裏金議員vs野党候補」の一騎打ちに持ち込めば勝機は十分にある。福井2区は保守地盤が強いが、高市早苗氏の夫である山本拓氏(元・自民党衆院議員)が無所属で出馬し保守分裂となるため、野党が一本化できれば三つ巴の混戦となろう。
野党候補の一本化は全国の選挙区でほとんど進んでいない。
野田代表はせめて裏金議員を落選させるための一本化を進めようと呼びかけているが、解散時点では実現していない。このまま安倍派重鎮の4選挙区でさえ一本化できず、その結果として大物裏金議員の当選を許したら、野党の首相候補である野田代表の統率力に疑問符がつく。
石破首相が土壇場で打ち出した裏金議員の非公認問題は、野田代表のリーダーシップを問う試金石にもなった。ここで維新をはじめ野党を束ねることができなければ、仮に自公与党が過半数割れしたところで、立憲中心の野党連立政権を樹立することは困難との見方が広がるだろう。
今回の総選挙は 石破政権の主流派vs安倍派を中心とした反主流派vs野党という三つ巴の戦いとみていい。野田代表の政治的立ち位置は、安倍派より石破首相に近い。財政は緊縮派だし、金融所得課税の強化を含めて格差是正派だ。その意味では安倍派の裏金議員を大量落選させれば、自民党内の勢力地図が大きく塗り変わり、石破政権と消費税増税を旗印とした大連立という選択肢も浮かんでくる。
野田代表は、いきなり政権交代を実現できなくても、安倍派を大量落選させれば、総選挙後の政局展望が広がるとみているのだろう。
野田代表にとっても正念場だ。萩生田氏ら大物裏金議員の選挙区でも一本化できずに当選を許せば、野田代表にとって大きな政治的失点となる。