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国会で起きた「想定外の野党結束」――高市一強の裏側で何が動いたのか

国会で異変が起きている。
3月3日、ひなまつりの夜。これまでバラバラだった野党の幹部が国会に集結した。中道、国民民主、参政党、共産党、そしてチームみらい。右も左も、対決路線も現実路線も関係なく、これまで交わることのなかった面々が突然手を握ったのである。

きっかけは、自民党がついに振り下ろした「数の力」だった。戦後最多の316議席を得て圧勝した高市政権。内閣支持率は70%を超える。その自民党がこの日、予算審議の日程を委員長職権で決定し、いわば強行採決に踏み切った。野党は一斉に退席。結果として、野党を分断するどころか、逆に結束させてしまったのである。

国会の空気が変わったのは、衆院予算委員会の理事会だった。テレビ中継が入る委員会が表舞台なら、理事会は裏舞台。ここで与野党の激しい日程闘争が行われる。仕切るのは予算委員長だ。

2024年の総選挙で与党が過半数を割った後、このポストは立憲民主党が握っていた。石破政権の閣僚が追い込まれ、支持率が伸び悩んだ背景には、予算審議の主導権を野党に握られていた事情があった。

高市早苗首相が狙ったのは、この主導権の奪還だった。旧統一教会問題などの追及を警戒していた高市首相は、予算委員長ポストを取り戻すため、今年1月に衆院解散に踏み切る。結果は大勝。自民党は単独過半数どころか316議席という戦後最多の議席を獲得し、予算委員長ポストもあっけなく奪還した。

そのポストに起用されたのが坂本哲志衆院議員。石破政権で国会対策委員長を務めた国対のプロである。高市首相が坂本委員長に与えたミッションはただ一つ。「予算の年度内成立」だった。3月13日までに衆院で採決し、参院へ送る――国会対策のプロから見ればかなり無理のある日程だが、総選挙で圧勝した首相に逆らえる者はいない。

坂本委員長は3月3日の理事会で動いた。地方公聴会を8日、中央公聴会を10日に開く日程を提示。野党が反対する中、委員長職権で採決を決定したのである。自民党が圧倒的多数を背景に「数の力」を行使した最初の瞬間だった。

ところが、ここで想定外の事態が起きる。中道や共産党だけではない。これまで「対決より解決」を掲げて補正予算にも賛成してきた国民民主党、さらに参政党やチームみらいまで含め、すべての野党が抗議して理事会を退席したのだ。

これまで野党は分裂していた。中道と国民民主は野党第一党争いで対立し、参政党と共産党が同じ行動をとることも考えにくかった。国民会議に唯一参加していたチームみらいも、対決政治とは距離を置いてきた。それでも今回は全員が席を立った。

その夜、れいわ新選組を除く野党10会派の国会対策委員長が国会に集まり、与党の強行採決に抗議して衆参議長に「熟議」を申し入れること、さらに予算成立までの暫定予算編成を政府に求めることで合意した。

予算案は衆院を通過して参院で否決されても30日後には自然成立する。だが野党が結束して反対すれば、3月13日に参院へ送っても年度内成立は難しい。こうなれば、衆院で急いで採決する意味自体が薄れてしまう。野党を分断するのが国会対策の基本だが、今回の強行採決は逆に野党を結束させてしまったのである。

混乱はさらに続いた。翌4日の予算委員会では、片山さつき財務大臣が欠席したまま審議が始まった。中道の小川淳也代表は緊急動画で「財務大臣がいないのに審議が進んでいる。前代未聞だ」と批判。国民民主党の玉木雄一郎代表も「長年守られてきたルールだ」として政府・与党を強くけん制した。

参政党の神谷宗幣代表も「自民党が衆院選で勝ったとしても何をしてもいいわけではない」と批判を強めている。

実は高市首相は今国会に向けて、自民党内の国会対策体制を大きく動かそうとしていた。麻生太郎副総裁を衆院議長に棚上げするだけでなく、梶山弘志国会対策委員長の更迭を検討し、後任に萩生田光一幹事長代行を据える案まで浮上していたとされる。萩生田氏が固辞し人事は流れたものの、首相と国対幹部の間にわだかまりは残った。

つまり今回の国会運営は、国対のプロではなく、高市首相自身の強い意向が主導しているとみられている。党内には不満もあるが、圧勝した首相に公然と異議を唱える者はいない。

こうして始まった「高市一強国会」。だがその最初の一手は、野党を結束させるという思わぬ結果を招いた。
強いリーダーシップによる政治改革の序章となるのか。それとも与野党対立だけでなく、自民党内部の軋みまで生み出すのか。

前代未聞の国会は、いま確かなシナリオを持たないまま動き始めている。