今後の政局の行方を分析するうえで重要な世論調査(6月22、23日実施)がいくつか発表された。順に分析していこう。
まずは読売新聞の調査。内閣支持率は23% (前月比で3ポイント減)で過去最低だった。他社の世論調査ではすでに10%台に突入しているが、読売でも過去最低というあたり、いよいよ岸田内閣は国民から見放されたことがうかがえる。
岸田首相はこの6月、政治資金規正法を改正し、定額減税を実施して反転攻勢に出るつもりだったが、その戦略は根底から崩れたといっていい。
一方、「自民党中心の政権の継続」を求める人は46%(4ポイント増)にのぼり、「野党中心の政権に交代」の42% (横ばい)を上回った。このところ、政権交代を求める声が自公政権の継続を上回る世論調査が続いていたが、潮目が変わってきた感じがする。
この世論調査から類推できることは、以下のふたつだろう。
①立憲民主党は自民党の裏金事件で高まった政権交代を求める機運をいかし切れず、好機を逃しつつある。
②国民世論は岸田内閣の退陣を強く望んでいるものの、9月の自民党総裁選で首相が交代すれば、自公政権の継続でもやむを得ないと考え始めている。
こうした世論の潮目を映し出しているのが、東京都知事選だ。
現職の小池百合子知事を自公与党が実質支援し、立憲民主党と共産党が応援する蓮舫氏と激突している。そこへ人気ユーチューバーの石丸伸二・前安芸高田市長が割って入る対決構図だ。
TBSが報じたインターネット調査によると、小池知事が「大きくリード」し、蓮舫氏と石丸氏が追っているという。
世論調査で「大きくリード」と表現する場合、ふつうは15〜20ポイントはリードしている。告示前の各党調査では小池知事のリードはおおむね5〜10%だった。告示後、むしろ差が開いているとみていい。
小池知事が余裕の表情で選挙戦を展開する一方、蓮舫氏はSNSで早くも「どうせとどかない。 現職は強い。 無理だよ」と弱音を吐いたのも、こうした情勢調査の数字を踏まえたものだろう。
日経調査では、小池知事が「やや優勢・リード」で、蓮舫氏と石丸氏が追うとなっているが、いずれにしろ、蓮舫氏に勢いはなく、伸び悩んでいるのは間違いない。
立憲が「党の顔」である蓮舫氏を擁立しながら、自公が応援する小池知事に大敗すると、立憲は4月の衆院3補選と5月の静雄岡県知事選の4連勝の勢いがとまり、政権交代の機運が萎みかねない。こうした流れは、先述の読売調査の結果とも符合しており、都知事選が世論の潮目の変化をさらに後押しする可能性が高い。
立憲は「小池知事への挑戦者」(蓮舫氏)と悠長なことを言っている場合ではない。都知事選に敗北すれば裏金事件でせっかく高まった政権交代の機運がしぼみ、立憲は再び低迷期に入るという切迫感を持つべきだ。
岸田内閣はいやだけれども、9月の自民党総裁選で首相が交代すれば自公政権継続でもかまわないーーという方向で世論は向かいつつある。その場合は、新内閣が発足した直後の10月解散が現実味を帯びてくる。
とはいえ、ポスト岸田は本命不在のレースの様相だ。
以下は「次の首相」は誰が良いかという世論調査の結果である。()の数字は前回調査。
読売新聞調査(総裁にふさわしい政治家は?)
①石破 23 (22)
②小泉 15 (16)
③菅 8 (6)
④高市 7 (7)
⑤河野 6 (10)
⑤上川 6 (7)
⑤岸田 6 (4)
毎日新聞調査(8人から選んでもらう)
①石破 20
②高市 9
③上川 8
④小泉 7
⑤菅 6
⑥河野 5
⑥岸田 5
(茂木は最下位で1)
世論人気の一位は石破氏であるのは間違いない。だが、石破氏は安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁に嫌われ、党内で不人気なのが最大のネックだ。
それでも政権交代の機運が高まり、自民党内に危機感が広がれば、「石破氏でもやむなし」という空気になる可能性はある。
しかし、世論の潮流は逆に向かいつつある。都知事選で立憲が失速し、政権交代の機運が萎めば、「石破氏を担ぐ必要はない」として石破氏を敬遠する空気が自民党内を覆い、本命不在の総裁選になだれ込むだろう。