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小泉進次郎が本命へ浮上 高市早苗の牙城を崩すか——最新世論調査が映す総裁選の地殻変動

自民党総裁選はついに本格的な幕開けを迎えた。名乗りを上げたのは、小泉進次郎、高市早苗、林芳正、茂木敏充、小林鷹之の5人。最新の世論調査から浮かび上がるのは、小泉進次郎が本命としての足場を固めつつあるという構図だ。


進次郎が自民支持層で逆転

読売新聞が9月13、14日に実施した全国世論調査は、昨年の総裁選に出馬した9人のうち、石破総理を除く8人を対象に「次の総裁にふさわしい人物」を聞いた。全体では高市早苗が29%でトップ、小泉進次郎が25%で続いた。両者の二強対決構図に大きな変化はない。

しかし注目すべきは、自民党支持層に絞った場合の結果だ。ここでは小泉が33%でトップに立ち、高市は28%に沈んだのである。従来、世論全体では小泉が優勢でも、自民党支持層に限れば高市が強いとされてきた。その常識が逆転したのは大きな地殻変動だ。

背景には、昨年の総裁選後の政治的潮流がある。石破政権の誕生により、自民党を支えてきた保守層が自民支持をやめ、国民民主党や参政党、日本保守党へ流れていった。

この結果、世論調査で「自民支持」とは答えないが、「自民党の中で選ぶなら高市」と答える層が増えた。党員票で他候補を圧倒することが総理への条件だった高市にとって、これは大きな痛手だ。


麻生太郎が進次郎支持に転じる衝撃

もう一つの決定的要因は、麻生太郎元首相の動向だ。前回の総裁選で麻生は「石破阻止」の一点で高市支持に回ったが、今回は石破不出馬。高市を担ぐ理由は乏しい。

むしろ麻生は菅義偉、岸田文雄、森山裕らと連携して石破総理に退陣を迫った経緯から、彼らと共に小泉進次郎を次期総裁に推す動きを強めている。

85歳を迎える麻生にとって、これが最後の総裁選になる可能性が高い。反主流派として敗北し、政界を去ることは絶対に避けたい。勝ち馬に乗るしかないという切実な思いがにじむ。

麻生が進次郎支持に傾いたことで、党内には「進次郎で政権安定」「維新との連立で過半数回復」というシナリオが広がる。総裁選で負け組に回れば冷や飯を食う国会議員心理を突き、進次郎支持へと雪崩が起きる可能性がある。


林芳正は「ダークホース」になれるか

世論調査の3位以下は混戦模様だ。茂木敏充と河野太郎が7%、林芳正が6%、小林鷹之が3%。自民支持層では河野9%、林8%、茂木6%、小林5%と並ぶ。

河野は前回総裁選で惨敗して以降、党内での存在感を失った。それでも一定の支持が残り、その多くは最終的に進次郎へ流れると見られる。茂木は先手必勝で露出を重ね、前回より数字を伸ばしたが、大きな伸びは見込みにくい。

注目すべきは林芳正だ。石破票の受け皿となる一番手だ。小泉は「若すぎる」、高市は「右すぎる」と敬遠した層が石破に流れた前回の構図を思い返せば、今回は林に票が集まる可能性がある。ダークホースとして台頭する余地は十分にある。


世論と乖離する連立パートナー選び

調査は連立相手についても尋ねた。国民民主党が38%でトップ、維新が21%、立憲が20%と続いた。国民は減税を掲げる世論の期待を集めている。

しかし自民党内は逆のベクトルにある。麻生も茂木も減税に否定的で、むしろ維新との連携に傾いているのだ。世論が望む「自民×国民」よりも「自民×維新」が現実味を帯びている。

支持層の志向も分かれる。高市支持層の半数が国民民主との連立を望むのに対し、進次郎支持層は国民、維新、立憲に分散する。進次郎は維新・吉村洋文代表との関係が深く、政権誕生なら維新連立は既定路線とされるが、支持層にはまだ浸透していない。

総裁選を通じて「進次郎なら維新」「高市なら国民」といった色分けが鮮明になれば、最終局面で大きな潮流が動く可能性がある。


高市の苦境と進次郎の追い風

こうして見ていくと、総裁選の趨勢は明らかだ。高市は保守層の支持離れと麻生支持の喪失で、勝利への前提を根底から揺るがされている。巻き返すには国民民主との連携を打ち出し、党内の支持を再結集するしかない。

しかし自民支持層の高齢化と社会保障重視の流れが強まり、減税を前面に掲げる高市の旗印は空回りしつつある。

一方、小泉進次郎は世論と党支持層の双方で存在感を高め、党内の重鎮支持も取りつけた。林が追い上げを見せても、現時点で本命は進次郎とみるのが妥当だ。