高市早苗内閣が発足直後から異例の高支持率を記録した。
読売新聞の緊急世論調査では、支持率71%。石破政権末期の倍以上で、歴代5位にあたる好スタートだ。なにより注目すべきは、支持の中心が若者と現役世代に大きくシフトした点である。
18~39歳では80%、40~59歳では75%が支持。高齢層でも63%に達した。
石破政権が「高齢者政権」と揶揄されたのに対し、高市政権は「若者政権」と呼んでもいい。とくに石破時代に冷ややかだった若年層が、一気に高市支持に回った。
理由は明快だ。石破政権が財務省主導の緊縮路線を突き進んだのに対し、高市政権は「積極財政」を掲げている。
物価高対策を最優先に、経済を動かす政治を打ち出したことが、若者や現役世代の心をつかんだ。
地域別では、高市氏の地元・奈良を含む近畿が76%と突出。維新との連立効果も重なり、西日本で圧倒的な支持を集めている。男女差もほとんどなく、政治的支持がまんべんなく広がっている点も特徴的だ。
政党支持率にも明確な変化が現れた
自民党は32%と5ポイント上昇。高市への交代効果が数字に表れた。
連立入りした維新は5%まで回復し、低迷していた支持を取り戻した。一方、国民民主党は9%から5%へと急落。
石破政権への反発で国民支持に流れていた保守層や現役世代が、高市誕生を機に自民党へ回帰したとみられる。
参政党は7%と堅調を維持。草の根運動の強さが底堅さを支えている。
立憲民主党は6%と微増。野田佳彦代表が首班指名にこだわらず、国民民主の玉木雄一郎代表を野党統一候補に担ごうと呼びかけた柔軟姿勢が好感された。
公明党は4%と小幅上昇。連立離脱を支持する創価学会員が一定数いることをうかがわせる。
全体では「自民+維新」で37%。野党4党(立憲・国民・参政・公明)を合わせても自民に10ポイント届かない。
“石破疲れ”から一転、“高市旋風”が永田町を覆い始めた。
公明離脱も追い風、自民・維新連立に支持
世論は公明党との決別をおおむね歓迎している。
「妥当」とする声が77%に達し、自民党側から見ても「連立解消はよかった」と受け止められているようだ。
自民と維新の連立を「評価する」は57%。
維新が閣外協力にとどめたことを「妥当」とする声が58%で、無理に閣僚を出さなかった判断も肯定的に受け取られている。
では次にどの党と組むべきか。
1位は国民民主党(30%)、2位は参政党(17%)、3位は立憲民主党(15%)。公明は9%にとどまった。
つまり国民・参政がキャスティングボードを握る構図が明確になりつつある。
政権側は右寄りの現役世代に支えられ、野党側は高齢層を中心に支持を広げる。政界再編の前兆が見える。
「安倍モデル」を踏襲する高市政権の権力設計
高市総理が布陣した官邸人事は、安倍政権の再現といっていい。
経産省出身で“影の総理”と呼ばれた今井尚哉氏を内閣官房参与に、政務秘書官には経産省の後輩・飯田祐二氏を登用。
さらに官房副長官には警察庁出身の露木康浩前長官を据えた。
経産省と警察庁を軸に、財務省を押さえ込む。これは安倍政権が確立した「官邸主導の統治モデル」の再現だ。
安倍政権は高支持率を背景に、2014年と2017年に二度の衆院解散を断行して圧勝した。
高市政権も、この高支持率を武器に早期解散に踏み切ることを目指すだろう。
勝負は「1月冒頭解散」
読売調査で「早期解散がよい」と答えたのは43%、「よくない」は49%で拮抗。
世論は賛否半々だが、支持率が高いうちに解散すれば自民単独過半数奪還のチャンスがある。
高市総理は就任会見で「当面は物価高対策を優先」と述べ、早期解散を否定した。
だが、歴代総理の「解散否定発言」がそのまま信じられた試しはない。
臨時国会は12月17日まで。年末は予算編成に追われ、年内解散は現実的でない。
通常国会が召集される来年1月、その冒頭解散こそ最大のタイミングだ。
ここで打てば“圧勝シナリオ”、先送りすれば“防戦ジリ貧”。
高市政権の命運を分けるのは、1月。
彼女が「解散権」という究極のカードを切るかどうか――その一手が、次の日本政治を決定づける。