れいわ新選組のYouTube戦略が面白すぎる。
日本維新の会が大阪で進めるカジノ構想のウソを描く「仁義なきカジノは、いらんやロワイヤル」はそのなかでも傑作だ(と私は思う)。
松井一郎大阪市長や吉村洋文大阪府知事は、カジノ計画に税金は投入しないと言ってきた。ところがどっこい、次々に公金投入の実態が明らかになるではないか。
そんな疑問を庶民(?)の立場から描くストーリーにぐいぐい引き込まれる。とくとご覧あれ!
れいわ新選組はお金がない。
山本太郎代表が2019年参院選で新党を旗揚げし、全国を駆け巡って寄付金4億円以上をかき集めたが、国政選挙に挑むとあっという間にお金は消えていく。
議席数に応じて配分される政党助成金で潤う自民党や立憲民主党と比べると、衆院3人・参院2人の弱小政党は資金力不足を独創性で補うしかない。
そこからオリジナリティーあふれるネット戦略が生まれてくる。れいわ新選組のYouTubeやホームページをのぞくと、隅々にまで創意工夫を凝らし、ひとりでも多くの人々へ届けたいという思いが詰まった動画が次々に現れてくる。そのクオリティーは自民、公明、維新、立憲など既存政党をはるかにしのぐ。
お金のないところから新たなアイデアは生まれるのだ。
れいわ新選組の各候補者も個性的なネット戦略を展開している。
そのなかでも注目株は長谷川ういこさんだ。山本太郎代表が「れいわ新選組の政策を中で作ってきた人が表に出てきた」と紹介した懐刀である。
長谷川さんは2011年の福島原発事故を受けて脱原発運動に身を投じた。そこで企画したイベントに現れたのが俳優の山本太郎氏だった。翌年には31歳で緑の党を旗揚げし、2013年参院選に挑んだ。しかし、自民党や民主党に跳ね返された。
彼女は考えた。脱原発運動だけでは支持は広がらない。多くの人々の関心を引き寄せるには、みんなのくらしに直接かかわる経済政策を練り上げるしかない。そこで経済政策、とくに積極財政を研究しはじめたのだ。
立命館大学の松尾匡教授らと始めたその研究会の門を叩いたのは、参院議員になった山本太郎氏だったーー。れいわ新選組の積極財政はそこから生まれるというストーリーはドラマチックだ。
長谷川さんが脱原発運動をきっかけにたどり着いたグリーンニューデール政策と積極財政をわかりやすく伝えているのが以下のYouTube動画である。お勉強っぽさはまったくなく、ストーリー性を感じる展開になっている。反緊縮政策を貫いたアイスランドと緊縮政策を進めたギリシャの明暗をテンポ良く解説するとともに、どのようにして政策を実現していくのかという政治的戦略をアメリカの実例をもとにクリアに指し示している。必見だ。
れいわの動画戦略をみていると、政党のあり方が大きく変わりつつあることを実感する。単にいい政策を練り上げるだけでは足りない。それを多くの人にどう届けるか。「伝え方」を磨く「メディア力」が不可欠だ。
自民党や立憲民主党はそれを大手広告代理店に丸投げしてきた。でも、れいわにはお金がない。だから自前でやるしかない。そこから生まれた動画の数々は斬新だ。新たな政治文化が生まれつつある。
それらクオリティーは少なくとも新聞社が制作している動画よりはるかに上であろう。若者のテレビ離れが進むなか、YouTubeを中心とした動画の世界は瞬く間にテレビの影響力を上回り、政治地図を塗り替えていくのではないか。
芸能界では一足先にテレビからYouTubeへ移る動きが加速している。芸能事務所を飛び出してユーチューバーとして独立する芸能人が相次いでいるのだ。マネジメントを芸能事務所に丸投げして徹底的に酷使される時代は終わりつつあるのだろう。
そのなかでも「中田敦彦のYouTube大学」は絶品だ。チャンネル登録数468万人。朝日新聞の発行部数に匹敵する規模だ。朝日新聞は右肩下がり、中田さんは鰻登りである。
吉本興業を2020年末に飛び出し、シンガポールに移住してYouTube配信を始めた。自宅でひとりで番組を企画立案し、ひとりで撮影機材を使って収録する。ウクライナ戦争から経済問題まで時事問題もわかりやすく解説する。芸人だけあって話術は見事だが、真骨頂はテーマの切り口だ。権力とは何か、人間とは何か、深い洞察力でえぐる。笑いながら考えさせられる番組だ。
最近では北条政子の視点で鎌倉時代を読み解いた以下の動画が見応えがあった。前後編で1時間、あっという間に時が流れてしまった。テレビよりはるかにおもしろい。とくに後編の北条政子が御家人たちに向かって放った大演説を生々しく解説する場面は圧巻である。
私も今年はじめにYouTubeへ本格参入すると宣言し、SAMEJIMA TIMESの記事執筆と並行して力を入れてきた。おかげさまでチャンネル登録数は8000人を超え、再生回数も2~3万回を数えるようになってきた。活字媒体とは桁違いの世界が広がっていると感じる。
動画編集は労力がかかる。記事執筆とはまったく違うセンスも必要だ。参入障壁は高い。だからこそ長年、この世界はテレビが独占し、世論形成に絶大な影響力を誇ってきた。
その独占市場がYouTubeの登場で音を立てて崩れている。
あらゆる面でまだまだ力不足ですが、いろんな人々の動画発信を研究して腕を磨いていきたいと思います。あたたかく見守っていただけると幸いです。