大阪地検トップの検事正を務めた北川健太郎容疑者(64)が準強制性交の疑いで大阪高検に逮捕された。この事件をめぐる検察当局の対応はあまりに怪しい。
高検は、逮捕容疑の詳細は「一切言えない」としている。理由は「被害者のプライバシー」だ。
朝日新聞報道によると、高検が逮捕を発表したのは6月25日午後。「下記被疑者を準強制性交等で通常逮捕した」とするA4の発表文1枚を報道機関に配っただけ。そこには容疑者の氏名や職業しか示されておらず、いつ、どこで、どのような相手に、何をしたのかという逮捕容疑の内容は記されていなかった。
高検は記者会見は行わず、報道各社の取材に1社ずつ応じる形式を取った。高検の小橋常和・次席検事は「被害者のプライバシーがある。特定につながることは一切差し控える」と繰り返し、現場は「日本国内」としか説明しなかったという。
マスコミの独自取材で①事件が発生したのは、北川容疑者が大阪地検トップとして在任していた時②被害者は当時の検察の部下③現場は官舎で、酒によって暴行したーーという実態がわかってきた。
北川容疑者は2019年に退官し、弁護士をして活動している。マスコミ報道が正しければ、事件が起きたのは5年以上前になる。被害を受けた部下が最近になって被害を訴えたのだろうか。それは考えにくい。被害直後に検察内で被害を訴えたのではないのか。
もしかすると、北川容疑者はそのため退官に追い込まれたのかもしれない。だとすれば、検察組織は北川容疑者を退官させることで事件に蓋をしようとした(つまり隠蔽しようとした)のではないのか。
それがここにきて抑えきれなくなり、ついに逮捕に踏み切ったのか。
検察が逮捕内容を一切公表しない以上、さまざまな疑問がわいてくるのは当然だ。いずれにしろ、検察当局が何かを隠そうとしている可能性は極めて高い。それを「プライバシー」の一言で片付けるのは、まったく説得力がない。
そもそも検察内部の不祥事を検察が自ら立件して処理してしまうのがおかしな話だ。警察が捜査にあたるとか、第三者の調査を入れるとかしないと、検察にとって不都合な部分を隠そうとしていると疑われて当然である。
マスコミは徹底的に追及すべきだ。(しかし、マスコミ社会部は検察当局とべったりである。あまり期待はできない)
まさにこのタイミングで、検察トップの検事総長に女性初となる畝本直美・東京高検検事長(61)が起用されるというニュースをマスコミ各社が報じている。
日本の検事総長は就任時しか記者会見に応じない。これは悪弊だ。自民党の裏金事件をはじめ、検察捜査への疑問が高まった時、検事総長は自らカメラの前に出て、捜査に対する疑問に答え、説明責任を尽くすべきである。
少なくとも今回の就任会見で、大阪地検のナゾの事件について、明確に説明すべきだ。マスコミ各社も厳しく問うことができるのか、改めて問われることになろう。