新聞記者を辞めることにしたーー。そんな書き出しで始まる連載「新聞記者やめます」を開始したのは2021年2月28日でした。私が朝日新聞社に退職届を出し、たったひとりで小さなメディア「SAMEJIMA TIMES」(サメタイ)を立ち上げてから1年が経ちました。毎日数千人以上の方にサイトを訪問していただき、感激しています。
「新聞記者やめます」序章【私は会社の誘いに乗った】
昨年5月末に正式に退社し、6月から「政治を読む」や「マスコミ裏話」のコーナーで政治やマスコミに厳しく切り込むとともに「政治倶楽部」の無料会員を募集し、双方向のサイト運営を心がけてきました。登録会員数は1500名を超え、コメント欄などで活発な意見交換をしていただいています。他メディアのコメント欄と比較しても、かなり密度の濃い議論が展開されていて、私も新たな発見が多く勉強させていただいています。コメント欄から企画した記事もたくさん掲載させていただきました。
手弁当で寄稿してくれる「筆者同盟」の方々も6名になりました。おかげさまでこの1年間、1日も休むことなく新しい記事の公開を続けることができました。北海道在住のSさんにはボランティアで校閲作業を続けていただいています。この場を借りて御礼もうしあげます。
読者の皆様からはサイトの収益化のため記事有料化をはじめさまざまなアドバイスを「お問合せ欄」へいただいています。なにぶんビジネスの経験がなく、未熟なサイト運営に対してご心配をおかけしているようです。
ただ、私は貧しい母子家庭に育ち、奨学金で大学まで通いました。経済格差にあわせて教育格差も拡大するなか、くらし向きに余裕がない方を含めてひとりでも多くの方に記事を読んでいただきたいという思いから、すべての記事を無料公開しています。それが今の私にできるせめてもの社会への恩返しであろうかと考えています。
これはひとえに読者の皆様からご寄付をはじめさまざまな形でご支援をいただいているおかげです。重ねて御礼もうしあげます。これからも息が続く限り「良質な記事」を「無料公開」することにこだわっていきたいと考えています。引き続きご支援ご声援のほどよろしくおねがいいたします。
私が「小さくてもキラリと光るメディア」を目指してサメタイを創刊したのは、私が27年間勤務してきた朝日新聞をはじめ新聞ジャーナリズムが「権力監視」の役割を放棄し、差し障りのない無難な記事を量産していることに我慢がならなくなったからでした。新聞ジャーナリズムの凋落は、政治の凋落をもたらし、それはコロナ禍での行政崩壊という形で私たちの生命を脅かす事態を招いています。
これからもサメタイは政治権力とマスコミ権力を厳しく監視し、彼らの不正や矛盾に目を凝らし、手加減することなく徹底的に切り込んでいく覚悟です。
それに加え、私はサメタイ2年目となる今年、もうひとつ大きな目標を掲げています。それはYouTubeへの本格進出です。
私は新聞記者出身です。カメラの前で話したり、カメラを回して撮影したり、画像を編集したりすることはまったくの素人でした。しかしインターネット時代における動画〜とりわけユーチューブ〜の影響力は急拡大しています。芸能人が芸能事務所から独立してユーチューバーに転身する事例が相次いでいることがそれを映し出しています。
私も昨年からYouTubeチャンネルを開設し、試行的に配信を試みてきました。プロからみればあまりに未熟な作り方で、気恥ずかしいところもありましたが、これからのジャーナリズムは動画配信抜きに成り立たないと考え、カメラや照明などの機材を整えつつ、編集技術などを研究し、すこしずつ配信を増やしてきました。
今年2月からは原則として毎週日曜日夜に新しい動画をYouTube「SAMEJIMA TIMES」で配信しています。まだまだ未熟ですが、チャンネル登録数はあっという間に3800人を超え、再生回数も1万回、2万回を超えるようになりました。
新聞記者時代に始めたTwitterはフォロワーが7万人を超え、サメタイをPRする有力ツールのひとつですが、YouTubeでの動画配信を始めて実感しているのは、まったく違う層にサメタイが浸透していることです。YouTubeは通信技術の発展でパソコンやスマホばかりかテレビでも気楽に視聴できるようになり、利用者が世代を超えて急速に拡大していることは間違いありません。やはり動画の裾野は広い。YouTubeはテレビが圧倒的に強かった日本のメディア界を足元から変革する威力を持っていると思います。
日本の政治に最も大きな影響を与えてきたメディアはテレビでした。テレビに出演し、お茶の間の好感度をあげた政治家が永田町でも大きな発言力を持ちました。テレビを制する政治家が権力を制してきたのです。
安倍政権以降、NHKをはじめテレビ各局が権力監視の役割を放棄して国家権力に迎合するようになり、政治は急速に劣化し、日本の行政は崩壊しました。日本維新の会が昨年の衆院選で躍進した最大の原動力は関西のテレビに出演しまくったことでしょう。
そこへ登場したのがYouTubeです。YouTubeにはテレビ主導の政治ジャーナリズムを転換させる可能性があります。テレビの政治報道を立て直すよりもYouTubeの世界で新しい政治報道を確立させるほうがジャーナリズム再建への近道ではないでしょうか。私がサメタイ創刊2年目の最大の目標に「YouTubeへの本格参入」を掲げる狙いはそこにあります。
資金力も技術力も話術もテレビ局にはまったくかないません。しかし、政治以外の分野では若いユーチューバーたちがテレビを上回る存在感を発揮し、若い世代のテレビ離れは加速しています。地上波テレビはほとんど見ず、YouTubeやネットフリックスしか見ないという人たちも増えてきました。
ITの発展はめざましいものがあります。パソコンが大の苦手だった私が一年前、サメタイのウェブサイトを自力で開設することができたように、動画の世界でも最新技術の力を借りれば、膨大なコストをかけることなく良質の動画を配信できることが可能な時代になりました。テレビ局の優位は崩れつつあります。
サメタイの記事で新聞社に挑み、サメタイのYouTube番組でテレビ局に挑む。そのような大志を抱いて2年目に突入したいと思います。
以下は最新のユーチューブ動画です。まだまだ至らぬ面もありますが、ぜひご覧になってチャンネル登録し、叱咤激励を送っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。