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オーストラリアから日本を思って(10)欧州各国で広がる「左翼狩り」と「極右主流」 危険な予兆は日本でも~今滝美紀

英国ジョンソン前首相(保守党)がコロナ・ロックダウン中、首相官邸でパーティーを開いて辞職に追い込まれた問題が、岸田文雄首相が首相公邸で親族たちと開いた忘年会と比較され、話題を集めました。しかし、大きく報道されていないものの、それよりも気になるニュースがありました。

英国野党の労働党が、党内左派(より公平で庶民のための政治家)を追いやる「左派狩り」をしているというニュースです。

ヨーロッパでは、極右政党が次々と幅を利かせているというニュースもありました。そのことと日本について書きたいと思います。お付き合いしていただければ幸いです。

日本でも2017年に起きた「希望の党騒動」での左派の排除、与党と対峙してきた左派議員の相次ぐ落選、小西洋之参院議員の「サル発言」の扱われ方、原口一博衆院議員の癌治療の副作用による容姿への発言、れいわ新選組をターゲットにした懲罰発議の連発…。一方で、これらを擁護し応援する人々の声も高まりました。

Samejima Timesも、近く総選挙が行われば、立憲民主党が大幅に議席を減らし、れいわ新選組や共産党も伸び悩む一方、日本維新の会が躍進する可能性を指摘しています(こちら参照)。

Guardianによると、労働党のスターマーStarmer党首は、2020年4月の党首選で「コービンCorbyn前党首からの左派的公約を引き継ぐ、コービン氏とは友達で良い同僚だ、党内の左右をまとめる」と宣言し当選しました。

しかし、労働党執行部は今年、多くの左派の現職議員を基準に合わないとして公認しませんでした。40年間労働党で下院議員を務めたコービン前代表も候補者から降ろされ、驚きが広がりました。北部でのJamie Driscoll(労働党)市長は、労働党から除籍されたKen Loach映画監督とアートイベントに出席したというだけの理由で再出馬を禁止されました。

労働党は何をしたいのか? まるで保守党と同じではないか? そういう声に、労働党のスターマーStarmer党首は「気にしていない。I don’t care.」と答えたそうです。左派寄りの公約も御破算のようです。ブレア前首相(労働党)のように労働者階級より富裕層のための政治への支持は高まるのでしょう。

英国保守党の失態続きのため、労働党の支持率が伸びて上回っていますが、一方で、政権を期待できる左派勢力を含む政党を失い、「政治に興味を失った」という声や政治離れが指摘されていました。グリーン党など第三勢力の党が伸びて、過半数割れを願う意見が出ています。(こちら参照)

二大政党といってもどちらも似たような政党です。富裕層が優遇され、ウクライナ戦争もパレスチナの紛争も援助を続け、庶民への増税、どちらになっても代り映えのしない政治。どちらがましかだけという、実際は一党制の政治。選択肢がない、勝負が決まった選挙、公約が守られない政治で、投票率が低いと有権者だけを責めても良くなりそうにありません。

Ken Loach映画監督は、労働党にはWitch-hunt(魔女狩り)という、悪い事をしていなくても意見が違うというだけで、迫害したり罰するルールがあったと言っています。

コービンCorbyn前党首(労働党)や議員たちが、パレスチナ人の居住区がイスラエルにより奪われ、軍事的攻撃反対を訴えると、イスラエル人差別だと激しく非難されていました。イスラエルは英米日や西側が支援する国です。それは「人種差別を批判すると差別だ」と応報しますが、改善されていないようです。

これは、ウクライナ東部の親露の人々がウクライナの極右派に弾圧されていると批判すると、ロシアの肩をもつのかと非難され、戦争を反対すると懲罰を受けていた時代に逆行している感覚さえ覚えます。

特定のグループが行う戦争や差別は、とがめられないルール(Rule-based Order)に沿って、主要メディアも一方の言い分を主に報道し、協力に余念がないようです。

Huffpostによると、左派は「より公平に人々のための政治」。例えば、富の再分配で、庶民へもある程度の質が高い医療・教育・公共施設や資源を提供すること。実際には、穏健な左と右の一部が混ざり合った考え方をもつ政党や人々も多いと思います。

右派は「伝統や宗教、その社会の慣習を大切にし維持する政治」。それはポジティヴなことですが、それに加え、自由が謳われ、資本主義が発達し、貧富の差が拡大し、自己責任の社会もその特徴です。

これらの保守の特徴が過剰に働くことが極右へと繋がり、自分たちと違う他者を抑圧し、切り捨て、差別するようになるということです。

GuardianのJones氏の記事をまとめると、以下のようになります。

すでに戦時中のウクライナはもとより、東欧のハンガリーでは極右独裁政権が支配し、ポーランドも強権的政府で、第二党には更に右寄りの政党が躍り出ているそうです。オーストリア、フランス、ドイツ、スウェーデン、そしてスペインで、主流派と極右の間のファイアウォールFirewallという壁が崩れつつあり、イタリアでは極右出身の首相が誕生し、ヨーロッパ全土で、極右が勢力を広げ、それが普通に見えることが、一層恐ろしいということです。

ノーマライゼーションNormalisationという、非日常や極端なことが日常になるプロセスで、かつては恐怖や憤りを覚えたことも、やがてほとんど気にならなくなる。極右の常態化は民主主義世界の至るところで起きています。

2022年の調査では、アメリカ人の5人に2人が、今後10年間に内戦が「少なくとも多少は起こりうる」と考えていることが示され、ある政治学者は、2030年までに米国で右翼の独裁政権が誕生する可能性を口にしています。それだけ、不満が高まっているということでしょう。

私たちはどうやってこの状況にハマったのでしょうか? 

高まる経済不安と不平等がスケープゴート(言い逃れ)となり、その解決方法を提供するのが極右政党になったことに疑いの余地はないでしょう。(しかし、豪州では物価高やエネルギーの高騰で、企業の利益は賃金と比べ増大しているので、便乗値上げだ。経済不安・インフレは作られたものではないか、との指摘があります。

その怒りを適切な敵へ、例えば社会保障を削減する政治家、低賃金の仕事を提供する上司、世界を危機に招いた金融システムなどへ向けることに成功していれば、極右がそれほど支持を集めることはなかったでしょう。

西側諸国では、主流政党は極右に激しく対抗し、代わりの未来像を示していません。それどころか、極右の言動や政策を受け入れ真似する傾向にあります。彼らが成し遂げたことは、極右の熱狂者を正当化し、極右が条件を設定し議論することを許したことだけです。

この記事は「私たちは歴史上最も暗い瞬間から学んだと思っていました。しかし、極右が政治の枠を超えたものとして再び扱われない限り、新たな恐怖が待っているだろう」と結ばれていました。

これを読み終えて、なぜ政権に極右が承認されるのか?何を目指しているのか?という疑問が湧いてきました。

そして、より右翼化する与党、更に過激に見える野党(「ゆ党」とも言えるような勢力)の支持が高まっている現象、貧富の差や生活苦・生き辛さが広がる日本の現状も重なってきました。

何度も目にする「○○党をまずは叩きつぶす」という公での表現。過激で乱暴に感じます。しかし、これも普通のように受け止められていないでしょうか。私は子どもたちに、聞かせたくないと思います。

Samejima Timesの読者の方々は、政治に興味がある方々だと思います。でも一般的には、これらは、不快で避けられがちな話題でしょう。生活を守るために、より多くの人々に気づいてもらい、選挙に足を運んでほしいと思い書くことにしました。

逆にブラジルのように過激な右派から、戦争を否定し人々のための左派政権に変わった国もあります。

以下の動きのように、野党分断工作や排除の理論に乗ることなく、公平公正で健全な民主主義のために、野党の連携の輪が広がり、多くの人々に熱意が伝わってほしいと思います。

🔸共産党の仁比そうへい参議員、自民党の不正を追及し、山本太郎参議院を擁護するチームプレー

🔸石川大我参院議員が大石あきこ衆院議員に声を掛け参加が実現した視察。入管法廃止を目指して、野党超党派で集まるとパワフルでした。

🔸インボイス税制度、野党がまとまって、ぜひ廃止にしてほしいです。


住まいに接する小径脇が雑草で荒れていたので、数年前ボランティアで耕し植物を植えて、世話をしています。近所の猫がそこへ遊びに来るようになりました。



今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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