政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(26)ストップ!裏金・金権・腐敗政治 オーストラリアで始まる新しい政治のかたち~そして日本も~今滝美紀

前回は「政権交代のハードルは有権者の“疑心暗鬼”だ」という労働党の選挙ディレクターのメッセージを紹介しました。これは、過去に国民が選んだリーダー(首相)を党内抗争で失脚させたこと、公約を不誠実に守らないことで、生まれるものでした。しかし、政権交代後、新たな“疑心暗鬼”が生まれ、それを解消できるかどうかが次の選挙のポイントのようです。

オーストラリアでも、金権・既得損益政治が次々と明らかになり、新しい“政治不信・疑心暗鬼”が広まりました。これを“国民に光をあてた政治”に変え、二大政党の限界を超えようと独立系(無所属)議員たちがチームを組み行動を起こしています。

日本の二大政党では、党の方針に反対すれば、公認を外されたり、支援を受けられなかったり、また、与野党共謀で汚職腐敗を集団で隠し、お茶を濁して幕引きをするような、民意に反する方向への団結があることも見えてきました。

オーストラリアでは、特に前政権の約9年間、大手寄付者・特別な地域への優遇(これを豪州では“豚肉の樽詰め/ Pork barrelling”ご褒美と揶揄されます)・中抜き・公金の膨大な無駄遣い等が明らかになり、“政治の浄化”と“国民のための政治”が求められています。

第12回で紹介したClimate200という、政党ではない政治コミュニティ―から、三つの政策(①クリーンな政治②環境問題③女性への尊重と安全という)の同意で、支援を受ける議員たちです。この政党に属さないより自由な独立系議員たちが訴える“国民のための政治”への転換が2022年豪州での政権交代の一つのポイントとなりました。

神戸学院大学の上脇教授の調査で明らかになった自民党の裏金腐敗政治は、うやむやのままの幕引きが図られています。その腐敗を正さず、利用して“裏金解散”選挙で、自民党勝利の目論見が指摘され、開いた口がふさがりません。(SamejimaTimes YouTube

泉房穂さんは、鮫島さんの「(立憲民主党が)長時間演説や解任決議案で徹底抗戦したのは、予算案の年度内成立を阻止し、参院審議の日程闘争を通じて、“裏金議員の証人喚問”を実現するためではなかったのか?本日採決で与党と合意し衆院通過を許すのなら深夜国会は、やってる感を演出するアリバイ作りだったことになる。ひどい」というとのコメントに、「同感です」と投稿していました。

また泉房穂さんは、何度も繰り返して恐縮だがとしながら「『政倫審』なんかじゃ全容は解明されない。最低限、嘘が罰せられる『証人喚問』、本来は『第三者調査委員会』の設置だ。野党もマスコミも、どうしてそう訴えないのか、不思議でならない・・・」ともコメントしていました。 

裏金・金権政治を明らかにし、腐敗・汚職をストップするには、自民党政権をストップし、救民チームへ政権交代しなければ、実現しないことが伺えます。

2月26日、カーティン議員は「オーストラリアの独立系議員たちは、汚職・腐敗政治を正すために“豚肉の樽詰め(既得損益政策)の禁止・寄付の透明性・縁故主義と既得損益での採用禁止・ロビー活動・政治広告の真実性”に関するする法案を提出した。だからコミュニティ―は私たち独立系(無所属)の議員を必要としている」とXに投稿しました。

維新と自民党が組み強引に進める、税金の壮大な無駄遣い大阪万博はまさにこれらの問題を含む象徴的なものでしょう。

 汚職防止委員会

オーストラリアのビクトリア州、インディという地方で選ばれた独立系のヘレン・ハイネス議員は、汚職防止委員会法を提出した“国民のための政治”への先駆者です。

選挙区の人々から、汚職政治を撲滅するために 「ヘレン、牙のある誠実な国家汚職防止委員会ができるまで休んではいけない」という声を国会で紹介し、地域のマスコットであるカカトゥーと呼ばれる豪州のオウムのブローチが贈られたことを国会で伝えました。その特別なオウムには牙が付けられているそうです。

ヘレンさんの2022年11月の国会でのスピーチは、日本で起こっていることとの共通点や打破のためのヘレンさんの取り組みが分かるものでした。下にまとめました。

国会議員として、私たちは、国民の最善の利益のために決定を下すために、代表として国会に派遣されています。公共の利益のために法律を制定し、最も価値のある目的に、可能な限り最も効率的な方法で公的資金を支出することを法律にすることです。                                   

私たちは、公職の倫理を守り、重要な権限を誠実に実行するためにここにいます。しかし、残念なことに多くの場合、これはオーストラリアの人々が目にすることではありません。

むしろ、政治的利益のために公的資金が使われていると見られます。当選がぎりぎりの選挙区には、全ての輝かしいインフラ・プロジェクトが与えられます。一方、安全な選挙区には何も与えられない。地域の利益よりも主要な寄付者の利益のためと思われる決定が下されました。

私は、誠実な委員会設置が改革の優先事項であるという元司法長官の保証を信じました。しかし、2018年に提案し約束されても可決されない法案。年が経つにつれ、失速戦術だと分かり、それは侮辱的でした。議会だけでなく、オーストラリア国民に対しても。全てが茶番になっていると感じました。

前政権の法案は抜け穴だらけの役に立たない法案でした。今回は私の法案が基にされ進歩しましたが、“例外的状況”を除くこと、または明確に定義することを要求します。曖昧さは抜け道になる。なぜなら国民に、できる限り最高の誠実な組織を実現するために、この法案の最終ラインまで全力で取り組むことを約束したからです。

国家汚職防止委員会(NACC)法の私の修正案は、議会合同委員会にNACCの予算を12か月ごとに見直すことを要求し、予算に関してこの議会合同委員会の勧告から逸脱する場合には大臣に理由書を提出することを要求します。これらの修正により、審査機能が確実に活用され、国民と議会に資金要請に関する政府の決定を精査する機会が与えられ、監督する監察官の権限を強化できます。

結論として、私たちを今日この瞬間に導いたのは、粘り強い擁護です。市民社会から、議席から、オーストラリア国民から、プレッシャーをかけ続けることで、これが議題にされ続けました。

大きな改革はただ起こるものではありません。これらは、党派を超えて団結した、ありそうもない同盟者間の数十の静かな会話で構成されています。そしてこの時点で、私は、前回の議会での圧力という困難を乗り越え、この場所に健全性を回復するという信念を忠実に貫いた議員に敬意を表したいと思います。歴史が正しく判断するでしょう。

私は、すべての議員にこの法案に賛成するよう呼びかけます。

今日が“国政政治への信頼”と“国民生活への誠実さ”を回復するための長い道のりの第一歩となることを心から願っています。(こちら参照

肉の樽詰め(既得損益政策)の禁止

ヘレンさんはまた、国民や国のためにならない既得損益という無駄な公金の使用禁止の法案も提出しました。「一部の政治家は既得損益は“オーストラリアの民主主義の特徴”だと考えている人もいる。私たちはそうは思わない。国民の 80% 以上が、“豚肉の樽詰め”は汚職であると信じています。よく言えば失政、悪く言えば汚職だ。国民は自分たちが騙されていること、政治家が誠実さを欠いていることを知っており、それにうんざりしています。」とコメントしていました。

政治の大掃除

公益となるロビー活動(陳情)は必要ですが、私利私欲と既得損益のための談合が、民主主義の害になっています。

“政治の大掃除(ロビー活動)法案”を提出したライアンさんは、以下のように訴えています。


豊富な資金力を持つ何千人ものロビイスト(陳情する人々)が首都キャンベラのロビーを歩き回り、政策に影響を与えるために閣僚と密かに会合し、公共の利益ではなく既得権益を優先させてます。現在のロビー活動ルールには牙がなく、効果がありません。いい加減にしなければいけない。

だからこそ“政治の大掃除 ”(#CleanUpPoliticsAct) を導入しました。議会では、これはロビー活動(政府の誠実さと信頼の向上)法案2023として知られています。オーストラリアにおけるロビー活動を最終的に可視化し、説明責任を負わせる必要があります。そうすれば、政府が大手の石炭、タバコ、銀行のためではなく、国民のために決定を下せるようになります。そのために、

1 ロビイスト登録と行動ルール

すべてのロビイストに登録を義務付け、より厳しい行動基準を課します。

2 閣僚日記の公開

現時点では、閣僚が誰となぜ会談しているのかは分かりません。彼らの決定には公的資金が関与し、私たちに影響を与えるため、この法律により閣僚の日記が公開され、誰が政府に影響を与えているかが分かるようにします。

3 回転ドアを止める

大臣を退いた後、そのまま民間に移り、そこで個人的に利益を得ていることがあまりにも多い。この法律は、元大臣とその幹部スタッフが議会を去った後、最長3年間ロビイストになることを禁止することで、回転ドアを阻止します。

4 牙のあるルール

ロビイストが今のルールに違反しても、基本的に罰則はありません。この法律はその状況を変え、ロビイストや政府の意思決定者に責任を問うことができる強力なルールを設けます。

これはロビー活動を規制する最も野心的な提案として歓迎され、可決されれば、オーストラリアはアイルランド、カナダ、スコットランドを含む世界で最も強力なロビー透明化法に従うことになるそうです。  


米国での2大政党のほとんどの議員たちが、パレスチナとガザの悲惨な状況を日々目にしても頑なにイスラエル支持を表明するのは、民主党と共和党の両議員たちが、イスラエルと関わるロビイストの大きな支援を受けて当選しているからだとききます。日本でも救民政治の実現のためには、ロビー活動の問題解決は避けられないようです。

 寄付の透明化

チェイニー議員は以下のように訴えています。

豪州では投票後 10 ヵ月が経過するまで、誰が候補者に寄付したかわかりません。それでも、判明するのは寄付金のほんの一部だけで、主要政党の民間資金の4分の3が隠されている。私の法案では、約10万円(現在は約15万円です)を超えるすべての寄付のリアルタイム開示を含む、これに対する解決策を提案しています。私は前回の選挙でこの方法をとりました。大変ではありませんでした。

オーストラリア人は、大金が政治にあまりにも大きな影響力を及ぼすことを懸念しています。一部の寄付は許可されるべきではありません。例えば、ある政府請負企業は、寄付の10倍以上の政府契約を受けました。私の法案は、ほとんどのOECD諸国と同様に、政府請負業者からの寄付を禁止することを提案します。 

また、ギャンブルやタバコなど社会に害を与える産業からの寄付を禁止することも提案します。     

大きな問題は、彼らの政策が選挙をより公平なものにするのか、それとも二大政党制を組み込むものなのかということです。私の法案は、選挙をより公平かつ透明にすることが可能であることを示すものです。

日本では「東京都プロジェクションマッピング事業」の問題が目に留まりました。東京都は当初、受託者を隠し、その後、五輪汚職で今年8月まで指名停止の電通の子会社、電通ライブが請け負っていることが分かりました。しかも約40億円の予算です。東京は人口過密世界一で、税収が有り余っているのなら、都庁を電光で飾りたてるより、東京にエネルギーや食糧を供給している地方や災害被災地などを助けるために予算を使えないのでしょうか。そうすれば、労働者から復興税を取る必要も無いでしょう。

縁故主義と既得損益での採用禁止

スカムプス議員は以下のように訴えています。

10年以上にわたる縁故主義と重要な公職への既得損益人事により、民主主義に対する信頼と誠実さが損なわれてきました。

オーストラリア人は民主主義を支える機関を信頼する権利があるため、重要な公職の任命プロセスが専門知識に基づき、透明性があり、不当な政治的干渉がないことが大変重要です。

私の透明性と質の高い公的任命法案 2023は、それを達成するためのプロセスを定めています。具体的には

1(大臣が決定した)役割の基準を公に宣伝する。

2多様性を促進する観点から、適切な資格・能力、経験、誠実さに基づいて、選考基準に照らしてすべての応募者を評価する。

3採用プロセスの最後に、大臣に対し、少なくとも 3 人の候補者から選択できる候補者リストと、その役割への適切性を証明する書面による声明を提供します。任命後、この声明は議会に提出されます。

重要なのは、大臣は候補者リストに載っていない人を選んだり、候補者をリストに追加したりすることができないということです。(詳しくはこちら

もし、この法案が日本にあれば、岸田首相のご子息、岸田祥太郎さんが内閣総理大臣秘書官に任命されることは、なかったかもしれません。

政治広告に真実を

ステガル議員は以下のように主張しています。(こちら参照

政治広告に真実を求めることは、民主主義の勝利に必要です。現在オーストラリアの法律では政治広告での嘘は完全に合法であるため、この改革は切実に必要とされています。政治家に対する国民の信頼は時間の経過とともに失われており、その理由の一つは、政治広告で嘘をつく能力によるものです。

悲しいことに、私たちは恐怖を煽る行為や偽情報が公正な議論を妨げる可能性があることを見てきました。無駄にする時間はありません。

私の連邦選挙法改正案(嘘を止める)法案は、必要なもののモデルを示しています。私は政府と協力してこの重要な法案を通過させます。

内部告白者の保護

腐敗や汚職、違法な政治を正すには、内部者からの報告が必要になります。公益となる情報を告白ができる仕組みや、告白者を守る法案も求められています。

適切な法や制度が設定されていれば、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題に巻き込まれた赤木俊夫さんを守ることができたかもしれません。

二大政党へ闘い

豪州の次の選挙までに、二大政党が、自分たちの選挙や権力維持に縛りを与える、これらの汚職・腐敗政治防止法案を受け入れられるかが、注目されます。独立系議員と第3党のグリーン党の議席が増えたことで、既得損益よりも、国民のための誠実な政治を行うことを、二大政党に迫る状況ができました。有権者の声に耳を傾け、大切にして行動する独立系議員たちは“疑心暗鬼”ではなく、“信頼”を得ているようです。

日本でも、裏金・不正・腐敗への不満が高まる中、これを正すことを強くアピールすることは、投票率を上げるのではないか。そして、おもねらない、れいわ新選組などの議員が増えれば、牙のある腐敗・不正禁止法案が実現するのではないか、と思いが膨らみます。

泉房穂さんは、あまり政党には興味がないとおっしゃっていました。民主主義を妨害しているような今の二大政党の政治ではなく、今まさに私たち次第で、日本にあった新しい形の政治、国民に温かい光をあてる民主主義をつくることができるチャンス到来だと捉えたいと思います。

冒頭の写真は、シドニーの中心街にある古い建物の上層部に描かれている壁画です。平和と人種を超えたハーモーニーを表現しているそうです。


今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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