政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(48)悪政なのか?それとも、悪魔的政治なのか?~今滝美紀

前回は、世界的に見て悪魔主義的宗教、消失する子どもたちや若者、エプスタイン事件など横行する人身や臓器売買・児童性虐待・性犯罪、それに関わる政治家たちの疑い、について書きました。その上に、上がらない賃金、容赦のない増税、生存権を脅かす多様な過重税と社会保険、年金の削減もあります。今の政治も、悪政を超えて、悪魔的政治になっているのではないか、と感じるようになりました。

起こると思えないことが、次々と起こる状況を見ると、私のような庶民には、思いもつかない悪魔のような世界が繰り広げられてるのか…と思わざるをえなくなります。

その起源、またなぜそうなっているのか?について追ってみたいと思います。

ここでは、報道されたことや見つけたことを書きます。私の感想や予測も含みますが、それぞれの点を繋いで何が起こされようとしているのか、なぜなのかという予想やこたえは、読者の方に委ねます。

全く違うユダヤ教の人々

ユダヤ教の人々の中には、豪州でシオニスト(イスラエル建国と拡大を指示する人々)のイスラエル政府を、痛烈に批判する人々やグループもいることを紹介してきました。

不思議に思ったのは、なぜイスラエル政府と正反対の主張をし激しく非難をするユダヤ教の人々がいるのか?ということです。

その中でも公の場で、ストレートに非難の声を上げている人々がいます。

ラビ(ユダヤ教指導者)のウエイスWeiss さんは2023年10月に「ユダヤ教では殺人・窃盗・他人の土地の占領・国民全てを抑圧することは禁止されている」と証拠写真を見せながらシオニストのイスラエル政府を強く非難しました。

「シオニストとイスラエルのアンチは、反ユダヤ主義ではない、シオニストはユダヤ教を自分の利益のために利用している。ユダヤ教はシオニストではない」という投稿が添えられていました。

また、アル・ジャージーラのインタビューでは、ウエイスさんは「ユダヤ教は3千年前からある、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の人々は、仲良く調和して住んでいた。しかし150年ほど前から、土地を奪い占領する、国家主義的シオニスト出現から変わった。そして終わらない流血が始まった。それは政治的運動で、物質的運動です。多くのパレスチナ人だけでなく、ユダヤ教の人々にも苦痛と死をもたらした。世界は75年間毎日続いたこの出来事を重く受け止めていないようだ。私たちはユダヤ人としてこれを、考慮している。これは、神への犯行で私たちをも傷つけている。なぜなら、私たち(ユダヤ人)の名の下で行われているからだ。容赦なくガザに爆弾を投下している。(パレスチナ人を)動物だテロリストだと非難している。彼らの違法な占領行為を隠すためだ。パレスチナ、エジプト、モロッコ、チュニジア、イランで調和して暮らし栄えてきた。いつも(イスラム教・キリスト教の人々と)一緒に暮らしてきたという証拠がある。お互いの赤ん坊や子どもたちの世話をして助け合っていた。宗教の明確な区別さえしていなかった。敵意を持つことも無かった。シオニストの導入で、全てが変わった。なぜなら、彼らの植え付ける「恐れ」「憎しみ」「疎外」からだ。今起こっていることを見るととても怖くて仕方がない。30万人の兵士がガザのゲートに集められ、もちろんそこを爆撃する。言葉を失う。世界のりーダーたちに、この不正で、犯罪的でパレスチナ人を痛めつけることを止めることを強要することだ。私たちは、ユダヤ教の名の下に行われていることを謝罪しなければいけない」と訴えていました。

そして「彼らは、宗教的ではないユダヤ人で、イスラエルという名前とダビデの星を使用している。(ここで彼はダビデの星を否定するポスターを示しました。)それは神だと主張し、神から授かったと主張する。私たちはトーラTorah(ユダヤ教正典と律法)に従い、忠実です。断固として彼らの主張を否定してきた」というような内容を繰り返し訴えています。他の反シオニストのラビたちも同様の事を訴えています。

また、反シオニストやイスラエル政府を非難するユダヤの人々も命を奪われたり、逮捕されていることを証拠写真を見せながら訴えていました。反シオニストのラビであるウエイスさんは、この7月ブラジルで行われたBRICSでイランの外相と会談し団結を呼びかけたことから、イスラエル入国を拒否されました。イランはイスラム教の国ですが、少数派のユダヤ教のその人々も手厚く保護されているそうです。

しかしなぜ、同じユダヤ教を名乗る人々の間で全く違う教えが流布し、分裂と争いが起こっているのでしょうか?

キリスト教の間でも、慈愛というキリストの教えを基にする信者とシオニズム(イスラエルが成就と拡大することを願うことをもとにする信者:例えば米国でトランプ大統領を支持する福音派)、ローマ教皇を基にするカソリック信者と様々に分裂してます。

救世主というパラドックス

ヒューストン大学教授のザレツキーさん(近代ヨーロッパの思想史と文化史を専門)の、興味深い「トランプ支持者は救世主を見ているが、ユダヤの歴史家は偽の救世主を見抜く」というコラムが目につきました。(ザレツキーさんの他の関連コラムはこちら

これらのコラムを基にすると、ザレツキー教授は「人間の本質はかわらない」という事を基に、ユダヤ教の歴史の見方を展開しています。確かに田中角栄さんは「戦争を経験したことがある政治家がいるうちは大丈夫だ」と言ったように、今では辛い戦争経験のある政治家は消え、戦争に向かうような恐ろしい発言をする政治家を目にするようになりました。

1648年に、元来のユダヤ教の教えを否定し背信する、待望の「ユダヤ教の救世主だ」と名乗るサバタイ・ツヴィSabbati Zeviの出現から始まります。まさに、この理論は理解できない、「パラドックス」(一見正しそうに見える前提や論理から、矛盾した結論が導かれる状況)だと感じます。このサバタイ主義と呼ばれるユダヤ教一派は、この世か来世で救済されるという希望を切望する熱心な信者たちを大勢惹きつけ「大勢の人々は、歴史の新たな時代が到来したことを、全く単純な感覚で信じることができた」とあります。これは地中海東側のユダヤ人コミュニティーを活気づけたそうです。

しかし、1666年この勢いを恐れたオスマントルコ帝国は、サバタイに処刑か改宗かの選択を迫ります。サバタイ・ツヴィは、改宗を選びターバンを巻いて現われました。余談ですが、一般的に日本では数字「4」が不吉な数字とされますが、西洋では数字「666」は、新約聖書(キリスト教の正典)のヨハネの黙示録に出てくる「獣の数字」とされ、大衆文化では、「666」はしばしばサタン(悪魔)・悪・反キリストと結び付けられているそうです。

一般的に、この背教は、「騙された」と悟った大多数の信者にとって衝撃的な出来事でした。しかし一方で、この背教は、「新たなサバタイの始まりだ」と肯定的に捉える人々の声が、少数でも大きく、吹聴されるようになり、今でも脈々と受け継がれているようだ、ということです。これも理屈が理解できない「パラドックス」だと感じますが、信者の中には、同様にイスラム教やキリスト教に改宗しながらこの教えに従い続け、広めようとする人々もいたと言われます。

その後サバタイは、東・中ヨーロッパのユダヤ人コミュニティ―に広がり、ユダヤ人の人々の間に分裂を引き起こしたそうです。以前にも書きましたが、ユダヤ人は、東ヨーロッパでは、7世紀~11世紀にかけて存在したハザール王国が、政治的理由でユダヤ教を選んだと言われ、ここから発生した白人系の「アシュケナージュ・ユダヤ人」と、ユダヤ教の起源である中東を基とするアラブ・アジア系のユダヤ人「スファラディム・ユダヤ人」に大きく分かれ、現在世界ではアシュケナージュ・ユダヤ人が大半を占めているそうです。この起源の違いからも、「ユダヤ教とは違う」というユダヤの人々の強い意見や反発が出ているようです。

サバタイの拡大は、ガザのユダヤ教信者ネイソンというサバタイの広告塔を務めた人物と熱狂的な支持者が、貢献したとされます。現代を見ると、トランプ大統領には、主要メディアを非難し対抗するアルタネイティヴ・メディア(非主要メディア)のインフルエンサーと呼ばれる人々が、礼賛を送り、拡散していました。そして、「政治から見捨てられ苦難を強いられている」と感じている多くの人々が、その救いを求め希望を見出したいという心理からか、支援者がふえたのではないでしょうか。

日本でも同様の政治家や現象があるのではないでしょうか。このような経緯から英国で台頭しているリフォームUKの党首ファラージ氏も、選ばれるまでは大衆が聴きたいことを吹聴し、選ばれてしまえば「全く違うことを言い、行うだろう」という冷めた意見や非難が見られるようになりました。

「ゴライの悪魔(サタン)」

またザレツキー教授は、ポーランド生まれのユダヤ人でノーベル文学賞受賞者のアイザック・バシェヴィス・シンガーの「ゴライの悪魔(サタン)」を先見の明がある作品だと取り上げていました。シンガーさんは、イディッシュ語での初めての賞受賞者でした。イディッシュ語はアシュケナージュ・ユダヤ人の言語とされ、ドイツ語・ポーランド語・ヘブライ語等が混じった言語です。                   

小説「ゴライの悪魔(サタン)」は1933年ワルシャワの文芸誌に発表されました。この年は、ヒトラーがドイツで権力を握り、ソ連のスターリンがウクライナでホロドモール(飢餓)を起した年で、まさに人々は混乱と不安を余儀なくされていた時でした。今と重なるものがあるのではないでしょうか。

「ゴライの悪魔」は、ポーランドの南東にあるユダヤ人の小さな村ゴライで、偽の救世主サバタイの教え、本来のユダヤ教の教えに反し、想像し得る限りの奔放な行為に浸り、ゴライでは寝室であろうとシナゴーグであろうと、ありとあらゆる行為が許されるどころか、むしろ期待される場所へと変貌していく。理性を捨てることを拒む者たちを飲み込んで、サバタイの教えに反対するユダヤ人は村から追い出されました。

ニューヨーク・タイムズでは、その後、ゴライだけでなく他のユダヤ人コミュニティでも、奇妙な悪魔崇拝の時代が始まり、サバタイ・ツヴィの教え(ユダヤ教への背教)は、救済への道においてあらゆる悪を受け入れなければならない贖罪の最終段階の一部と解釈されたそうです。その後、奇妙な儀式、乱交、あらゆる忌まわしい行為が執り行われました。悪魔が訪れたのです、とこの物語を紹介しています。

ザレツキー教授は、希望を切望する荒廃したゴライを、偽救世主(メシア)崇拝の熱狂の波が押し寄せ、シンガーが歯切れの良い、ほとんど臨床的な言葉で描くその後の展開は、身の毛もよだつほど恐ろしいと説明します。この物語が伝えることから、現代の、トランプ大統領等リーダーや米国・欧州・日本・世界の国々またガザで起きていること(悲惨な出来事や混乱:大量虐殺・児童や性的虐待・人身売買・分断・貧富の拡大等)を考えるとどうでしょうか。同じような手法が再来し、世界各地で繰り返し起こっているのでしょうか…。

現代の悪魔的行為が、どのように行われるようになったのか、をさらに探ってみたいと思います。

ニュー・ノーマルは悪魔的か?

「ニュー・ノーマル(新しい常識)へ」と世界のリーダーたちは口にします。果たして新しい常識とは何なのでしょうか?前回からこのコラムを書くまでの間に、私には信じられないこ多くのニュースに触れました。最後に、それらのニュースを羅列したいと思います。

これらは、サバタイの「見たり、きいたりしたことを信じるのではなく、その教えを信じる」ように教えられているのではないか…。私はまるで、それを受け入れるように仕向けられている世界に居るように感じてなりません。

それに対して、オーウエルOrwellは小説「1984」(連載第14回)で、‘The Party told you to reject the evidence of your eyes and ears. It was their final, most essential command’「政党は、見たことや聞いたことの事実を否定しなさい、と教えます。これは、最後であり、最も重要な命令です」という未来の人々へ、示唆するような言葉を残しました。

今、何か焦るように、慌てるように、次々と起こる常識とは思えない出来事。世界で黙って受け入れるのか、否定の声を上げるのか…。それの選択が、未来を大きく左右する時だと思えてなりません。

進む軍事化の懸念≫

●米国では、「防衛省」が世界大戦前の「戦争省」へ名称が変更されました。(詳細はこちら) 

●大手テクノロジーの幹部が米国陸軍の中佐に任命されました。メタの最高幹部は、パランティアやオープンAIなどトップテクノロジー企業の幹部を含む国防長官らが軍事とテクノロジー業界の専門知識をよりよく統合するために設立した新しい米陸軍部隊に入隊できたことを「生涯最大の栄誉」だとしました。よりテクノロジーが戦争に組み込まれ、管理、強化されることを意味するのかもしれません。(詳細はこちら)

●イスラエルは、ガザ・シティの攻撃を始め、ガザの高層ビルが次々と破壊される光景が報道されました。カタール(親米、イスラエルで調停国)に亡命しているハマス幹部が、首都ドーハで米国との停戦協議を行う前に、イスラエルに攻撃され、5名のハマス幹部が死亡しました。(詳しくはこちら)

先日のイランと米国の核兵器の協議時にも、イスラエルの攻撃でイラン幹部が殺害され、米国はその直後イランを攻撃するという出来事もありました。停戦すると見せかけて、その実、停戦を阻止しようとしているのでは、という非難があがりました。

●ガザでの封鎖を無視し、連合船「グローバル・スムード・フロティラ(The Global Sumud Flotilla)」(44カ国から50隻以上の船舶からなる)は、飢餓の報告が広がる中、、食料や医薬品などの重要な支援物資を届けるという大胆なミッションを開始しました。グレタ・トゥーンベリさんを含む活動家たちは8月31日にバルセロナなどの港から出航し、イタリア、ギリシャ、チュニジアの港からさらに多くの船舶が合流しました。イスラエルによる拘束の脅迫や批判にもかかわらず、世界からの支援は拡大しており、イタリアの港湾労働者は妨害があればストライキを行うと表明しており、封鎖に対する国際的な不満の高まりを浮き彫りにしています。(詳細はこちら

その後、チュニジア沖で、その一隻にドローンのようなもので攻撃し炎上しました。ガザ支援船(GSF)はイスラエルが行ったと抗議しました。民間人にしかも他国の領海に攻撃を仕掛けたことに対して、大きな非難があがります。

犯罪やレイプの放置≫

メディアは不都合な犯罪は伝えず、警察や司法は犯罪と見られる行為を不起訴にしています。

●米国で23歳のウクライナ難民女性が、アフリカ系とみられる男性に、電車の中で刺殺されました。(詳細はこちら)容疑者は逮捕歴があり「白人の娘を捕まえた」と繰り返し発言していました。民主党が多数を占める大都市での 犯罪を取り締まると宣言する 中、この事件は火種となっています。しかし、黒人や南アメリカからの移民の被害を繰り返し取り上げていた、ニューヨーク・タイムス等全く報道しない主要メディアに、批判が高まっています。(参照はこちら

豪州の主要メディアも取り上げていませんでした。これは、なぜなのでしょうか?白人の差別と不当な移民擁護が広がっているのでは、と懸念が広がっています。

●日本では、財務省職員がひき逃げで死亡しましたが。逮捕された運転手は不起訴でした。その理由は明かされませんでした。(参照はこちら

これがニュー・ノーマルなの?≫

●殺人だけでなく、欧州、日本でもレイプの事件が後を絶ちません。英国では、レイプから逃れようと、ナイフやナタをかざした14歳の少女が逮捕され、物議を醸しだしました。(参照はこちら

●また、英国ではイスラエルのパレスチナ攻撃に対してのデモが続き、逮捕されることを覚悟で年「パレスチナ・アクションに賛同する」というプラカードを掲げる人々が相次ぎます。多くの年配や障碍者の抗議者を含む約900人の人々が、警察官に運ばれ逮捕されました。警察に「恥を知れ」という声が繰り返し叫ばれていました。(詳しくはこちら) 

その直後9月8日、ストリートアーティストのバンクシーはロンドンの王立裁判所に、裁判官がハンマーで、抗議のプラカードを持ち倒れる人を叩きつけようとしているような、挑発的な壁画を公開しました。英国における抗議活動への弾圧の中で、司法の行き過ぎと反対意見の抑圧を非難しているようです。親パレスチナ活動家の逮捕に関連したこの作品は、すぐに当局によって隠蔽され、オンラインで広範な怒りが巻き起こり、検閲と言論の自由をめぐる議論が巻き起こりました。壁画が急速に拡散するにつれ、抗議活動と国家権力をめぐる英国社会の緊張の高まりが浮き彫りになりました。(こちら参照)

●日本と同様に先住民国民の人口が十分な英国ですが、移民の政治幹部への昇進が目につきます。

レイナー副首相の辞任にともない、アフリカ系移民のラミー氏(David Lammy)が副首相と法務長官に任命されました。 パキスタン系イスラム教女性のマフムード氏(Shabana Mahmood)が内務大臣に任命され、移民政策を担当することになりました。

ロンドンの市長も2016年から、パキスタン系イスラム教のカーン市長(Sadiq Khan)です。

野党の保守党の党首も2024年からアフリカ系女性のベーデノック氏(Kemi Badenoch)です。

政治の主要ポジションに外国からの移民の人々が任命されることが、目につくようになりました。日本でも近隣諸国からの移民の人々が、国会議員に当選するようになり、「国境や国籍を無くす」という政治家の声も聞こえ、将来的に英国のようになるのでしょうか。

英国や豪州でも国民負担を増やし、移民を増やす政策にデモが続いています。

ここ数週間で触れたニュースを羅列しましたが、これらがシンガーの示した「ゴライの悪魔(サタン)」と共通するものなのでしょうか…。

冒頭の写真は、近くにある小さな公園です。小春日和の柔らかい陽日と梅か桃のような日本を思い出す花が咲いていました。空になびくのは先住民アボリジナルの人々の旗です。真ん中の黄色い円は生命の源、太陽。上半分の黒はアボリジナルの人々。下半分は土を示すそうです。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。