ここ数週間は、お互いの存続をかけた中東の争いから目が離せませんでした。パレスチナのガザから広がり、戦火は今はパレスチナのウエスト・バンク(ヨルダン川西側)、レバノン、イランと拡大し、中東全体、世界全体が経済戦争として巻きこまれました。
2023年10月に始まった、大規模なパレスチナのガザへの侵攻について、第18回(2023年11月8日投稿)から、時折この争いについて書いてきました。その投稿に記した専門家の予測通り、争いは中東全体に広がり、経済戦争として全世界を巻き込む勢いとなってしまいました。
パレスチナでの悲劇を終わらせなければ、不条理の余波が世界に打ち寄せるのではないか、という胸騒ぎから、中東での争いが気になる…。実際、豪州のSBS(NHK相当)では、ほぼ毎日パレスチナや近隣諸国の様子が報道され、画像を見るだけで、色々な思いが交錯し、決して明るい気持ちにはなれませんが、見てしまう日々でした。日本でも報道はあったのでしょうか。
戦争が広がり、物価高、食料や必需品不足などで、一番被害を被るのは、庶民でしょう。
見えたことを共有したいと思います。皆さんは、どう思うでしょうか?
トランプ大統領と戦争省Ministry of War(日本語訳ではなぜか、防衛省と訳されています)ヘグゼス氏や重鎮たちは、思いを率直に語る時がああります。
以前にも書きましたが、ベネゼエラの大統領拉致後に、一人のトランプ大統領重鎮が「私を怒らせたらこうなるんだ」とカメラに向かい言い放ちました。ルビオ国務長官は、「国連は気にしない。やりたいことをやる」トランプ大統領も「政治的正しさではなく、やりたいことをやる」と横須賀の米兵と高市首相を前にスピーチしました。
3月25日にヘグゼス戦争省長官は「敵をできるだけ残虐に叩きのめす。…爆弾で交渉する。…アメリカの利益を得るためだ…」と発言しました。この場面は豪州のSBS(NHK相当は)で放送されました。超過激で脅威を感じるのは私だけでしょうか。まさに、世界覇権のためには、糸目をつけないぞ、と告げているように感じました。
Gozukara博士はこれを次のようにコメントしました。
「仮面を脱いだ瞬間。ヘグセスは、米国がテロを外交手段として利用していることを公然と認めた。我々は爆弾で交渉しているのだ。彼はイランの都市に対する支配権を維持すると脅迫している。彼らは主権国家に対する帝国主義的な戦争犯罪を公然と告白しているのだ」
シドニーでの「抵抗勢力はこうなるんだ」と言わんばかりの警察の抗議者(高齢者や女性も含む)への荒々しい暴力は、目を疑うものでした。そこにも巨大な力が及んでいることを感じました。(こちら参照)
外交と軍事は、民主主義ではない?
日本ではイランへの攻撃への支持は約20%、オーストラリアも約25%と、支持しない人々が多数を占めます。しかし、豪州政府は国民の声を聴かず、米イスラエルに加担するために偵察機、追撃機と85人の兵士をUAEの豪州軍基地へ送りました。これは、国民の意見ではなく、同盟国同士の取り決めに従い、足並みをそろえた言動をとっているようです。ちなみに現豪州のアルバニージ首相は、パレスチナ解放でイスラエルに抗議する若者でした。今では、国際法に違反していても「英イスラエルのイラン攻撃を支持する」といち早く公言するほどになりました。そういう立場にいるのだと確信しました。
国際法は死んだ
イランのアラグチ外務大臣は、柔らかい物腰ですが、しっかりと分かりやすく、理論的にメッセージを伝えることからか、存在感を放っているようです。東日本大震災時、日本にイラン大使として滞在し、被災地に赴き炊き出しの援助活動もしていたそうです。
アラグチ外相は3月25日次のようにXに投稿しました。
「交際法は死んだ。ガザとウクライナに関する西側諸国の二重基準と、イランに対する米国イスラエルの侵略に対する沈黙がその原因だ」
これは、ドイツのシュタインマイヤー大統領が、ドイツ外務省の戦後改革75周年を記念するベルリンでの式典演説で、イランを擁護した発言に対し、敬意を表すメッセージに込められていました。
大統領は、第二次世界大戦終結から80年以上経過した今、この時代の安全保障の危険性を過小評価してはならない、最も危険にさらされているかもしれないと、米国の戦後からの対応に感謝しつつも、警告する内容でした。次はシュタインマイヤー大統領の演説内容抜粋です。
「国際法違反であることを認めないからといって、我々の外交政策がより説得力を持つようになるわけではない。我々はガザ戦争の際、この問題と向き合わなければならなかった。イラン戦争において、この問題と向き合わなければならない。私の見解では(イランへの)この戦争は国際法違反だ。その点については疑いの余地はほとんどない。米国に対する差し迫った攻撃という正当化は、米国の情報機関の間では全く説得力を持たない。この戦争は、直接関与する者にとって、政治的に破滅的な過ちでもある。それが私を最も苛立たせる点だ。これは本来なら回避可能であり、不必要な戦争なだ」「(国際法は)他国がやっているからといって、我々が脱ぎ捨てるべき古い手袋ではない」(こちらその動画と参照)
アラグチ外相のXへの投稿最後で次のように呼び掛けていました。
「イラン人に対する侵害を非難したシュタインマイヤー大統領には敬意を表する。法の支配を重んじる人々は声を上げるべきだ」
騙して始まった戦争
◆トランプ大統領は「イランの核兵器不保持のためだ」「戦争はしない」と言い、イランが前向きに核兵器不保持に承諾し、順調に合意に達する前に、突然イランに先制攻撃をしました。イランの前向きで誠実な交渉について、ガーディアン紙の取材で交渉に関与した英国国家安全保障顧問が証言し、外交官は「我々はウィトコフとクシュナーは、大統領を戦争に引きずり込んだイスラエルの工作員とみなしていた」とも述べたことが報じられ、注目されました。
クシュナー氏はトランプ大統領の娘婿、ウイットコフ氏はビジネスパートナーです。選挙で選ばれた政治家でないものの、トランプ氏の使命で特例大使として、ガザ、中東、ウクライナなど外交を仕切っています。自分たちのビジネスを政治利用しているのではないかと、非難があります。二人とも超シオニスト(イスラエル拡張主義派)で知られています。(詳しくはこちら)
◆トランプ大統領は、「イランの人々を助けるためだ」と言いながら、小学校に先制攻撃し約170人の子どもたちが命を失いました。すでに約3千人の一般のイランの人々が亡くなっています。約8万の一般住宅、数百の学校や医療機関が攻撃されたとのイランからの報告がありました。
◆トランプ大統領は「自由と民主主義」を大切にする言いながら、自分が認めたリーダーでなければならないと、リーダーたちを暗殺や拉致し続け、政権転覆で内政干渉しているようです。
イランを驚異の大国だと見なしているのでしょう。そのため本当の目的は、国を分裂させ、弱体化し、リーダーを変え、他のアラブの国々のように、従順にしたいからだ、という意見もあります。そして、石油等資源を奪い米ドルで取引し、米ドル世界覇権を保つことではないか、とも感じます。
イラクやリビア、シリアでも、外国が干渉し独裁政治だと民衆を煽り、攻撃させ、リーダーが暗殺されたり、変わったりしましたが、その後は国が分裂し内紛が続き、退廃し、以前の方が良い国だったという見方もあります。
◆3月18日米国では、国家テロ対策所長のケント氏が辞任を次のように発表しました。
「~良心に照らして、イランにおける戦争の継続を支持することはできません。イランは我が国に差し迫った脅威を与えておらず、この戦争はイスラエルとその強力なアメリカロビーからの圧力によって始まったことは明らかです。~」
これは大きな反響を呼びました。(こちらその投稿)
贔屓(ひいき)と二重基準(ダブル・スタンダード)
アイルランドのロビンソン元大統領は、3月20日、TVの生放送で次のように訴え注目されていました。
「国際法を守るために、他の国々が、声を上げることが大変重要です。国際法は人類が獲得した偉大な利益で、守るべきものです」
「二重基準はあってはならない。ロシアがウクライナに侵攻した時は多く厳しい批判がりました。しかし今、米国とイスラエルがイランに対して行っている侵略行為は、国連憲章の下では正当化されず、違法であるにもかかわらず、それについて明確に発言した国はごくわずかです。彼らはそれを避けようとしており、私もまた、海峡を開通させようとする動きに巻き込まれるのを避けるのが正しいと考えます。それは、戦争を始めた側の問題です。二重基準が取られているのは、世界にとって明らかです」
繰り返しになりますが、これは国際法やルールが軽視され、無法者が、武力やお金で報復をちらつかせるので、法に沿って声が挙げられない、アナーキー(無秩序)な状態に世界が陥っていることを浮き彫りにしているようです。
例えば以下のような、二重基準が危惧されます。
●政治家は繰り返し異口同音に「イスラエルには、自衛権がある」と言い、武器を持たない、ガザの人々への攻撃が擁護されていました。でもイランには、同じように“イランには自衛権がある”という言葉を聞きません。
イランの外務省報道官はメディアのインタビューで次のように語りました。
「私たちは、学校、病院が攻撃されても報復しませんでした。私たちの国のインフラが攻撃されれば、周辺国の米国関係のインフラを報復攻撃すると警告しました。米イスラエルの攻撃と報復で、世界に影響が出るのは理解します。それは、戦争を始めた米イスラエルの責任です。あなたは、私たちの国が攻撃されても静かに、されるがままにしろ、と言うのですか」
●3月19日 米イスラエルのイランへの侵攻攻撃により、イランは自衛のために近隣諸国にある米国関係施資産に攻撃しましたが、同じイスラム教で兄弟国と呼ぶ国々は、「米イスラエルにイランへ の攻撃を止める」ように要求せず、「イランにだけ、攻撃を止める」ように要求しました。 なぜでしょうか?(こちら参照)
それに対して、豪州SBSでも取り上げられ、ここでも紹介してきたサックス教授は、次のように反応し、理由を述べました。
「~最高指導者とその家族、リーダー40人が爆殺されたんだ。聞き間違いかと思ったよ。3ヶ国だけ、米イスラエルを非難した。ロシア、中国、ソマリアだけだ。ジョージ・オーウェルですらこんな話は作り出せないだろう。一体全体、どうなってるんだ?」「彼らは米軍基地を受け入れている…主権国家ではないからだ」(こちら参照)
3月25日、それでもイランは、近隣諸国へ次のようにメッセージを送りました。
「~イスラム教徒の兄弟たちよ、我々の地域の安全保障を保証してくれる国は、何千キロも離れたところにある国など必要ない。イスラム諸国を金づるのように見なす国も、イスラエルの安全保障を何よりも優先し、その過程で他の国々を犠牲にする国も必要ない。イスラム教徒を無価値な存在と見なし、彼らの土地の下にある石油、ガス、資源だけを価値あるものとみなす国も必要ない。~」
「私たちは、イランのためだけでなく、抑圧されたイスラム教の人々、ガザの人々のために闘っている」
●国連で記者がイスラエル国連大使に質問したことが豪州SBSで報道されました。
記者「イスラエルが核保有国であることは周知の事実です…なぜ他の中東諸国には、核保有の権利がないのでしょうか?」
イスラエル大使ダニー・ダノン「イスラエルはこの地域における安定化勢力です。我々は平和を望んでいます」
記者「私の質問に答えてください」
(こちら参照)
中東で1948年以降、最も多く戦争を始めた国は?
コミュニティ、民間インフラを破壊し国は?
長期間にわたって複数の国の領土を占領した国は?
どの国が、周辺国と一番混乱と破壊を生んでいるのでしょうか?
●ハマス(ガザ慈善・軍事組織)を口実にガザは、イスラエル軍により、ほぼ全壊されましたが、現在は、ハマスのいないパレスチナのウエスト・バンク(ヨルダン川西側)に違法にイスラエルから入植者が次々と入り、パレスチナの住民への迫害が日々続いています。10年前から、ヨルダン川西岸 で1000人以上のパレスチナ住人が殺害されましたが、イスラエルが訴追した事例はないそうです。なぜか?納得できる理由説明は耳にしません。
(こちら参照)
●隣国レバノンの南地方にも侵攻が進んでいます。イスラエルのカッツ国防相は次のように述べました。
「我々はレバノン南部の国境沿いの村々を、ガザ地区のような地域に変えてしまうだろう。避難したレバノン南部の数百人の住民は、北部のイスラエル人の安全が保障されるまで戻らないだろう」
すでに多くのコミュニティーが破壊され、今年で千人以上が亡くなり、約百万人の人々が避難し、首都ベイルート周辺でテント生活を送っています。ベイルートやテント村への攻撃もあります。
そして、イスラエル軍はイスラエル国境から約30㎞にある、リタ川に架かる全ての端を破壊し、そこに住む人々が逃げられない状況がつくられています。イスラエルは周辺を占領すると宣言しました。(こちら参照)
カナダとオーストラリアは、これを強く非難し認められないとイスラエル政府に伝えました。しかし、国や国連が行動を起こし助ける様子はうかがえません。
二重基準は、あげればきりがないほど、沢山ありそうです。
悪を善にする方法は?
パレスチナ住在だったユダヤ人のジャーナリスト、ローレンスさんによると”Willful Gullibility・意図的軽信”という一種の洗脳で、毎日メディアで繰り返し見聞きすることで、理不尽や悪行についても、それに慣れて普通のことだ、仕方ないと信じ込んで行ってしまうそうです。日本で、色々な政治汚職が起きても、あまりにも次々に起こり、忙しさもあり怒りを感じない人々がいるのは、Willful Gullibilityかもしれません。
マルコムXは、1950~60年代前半に、イスラーム教信仰をもとにしたブラック=ムスリム運動を指導し、アメリカの黒人差別に対して戦ったことで有名です。彼は、次のような言葉を残しました。
「メディアは世界で最も大きな力を持っている。なぜなら、メディアには有罪の者を無罪に、無罪の者を有罪にする力があるからだ」
イラン、パレスチナ、レバノンでのイスラエルとの紛争報道を見ていると、正にそうだと感じてしまいます。
前述のローレンスさんのアドバイスは、その土地の独立したジャーナリストを見つけて、情報を得ることをすすめていました。日本では、イランやパレスチナ攻撃に反対する抗議が各地で起こっていたことを知りました。
今は「歴史の大きな分岐点だ」という声に触れます。
世界一強、無秩序世界に突入するのか?阻止できるのか?
世界各地での抗議の声が力になっているようです。今こそ、悪を善に取り違えないように…。
終わりに
日本の皇室が、異例に声を上がている。
“ 雅子さまイラン攻撃にご心痛のなか…“姉”と慕う久子さまが「異例のご発言」”という記事が目に入りました。
イランと米イスラエルの争いでは、X等SNSを通した投稿でのバトルも目を引きます。
これは、イランから、2月28日の米イスラエルの攻撃で、命を落とした子どもたちや家族を追悼する作品でした。
これらはイランからのレゴの戦闘アニメ作品で、シリーズで投稿され、完成度が高く話題を呼んでいました。見ごたえがありました。
冒頭の写真はシドニーの街角で売られていた雑誌です。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。