政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(61)変わり始めた世界~イランは世界の政局を変えるのか!?日本はどうする?~今滝美紀

イラン攻撃は何だったの!?

世界をエネルギー危機に巻き込み、人々の生活に大打撃を与えるこのイラン攻撃は、一体何だったのでしょうか?

読者のみなさんはどう思われますか?

トランプ大統領は、4月8日午前9時(日本時間)までに停戦合意がなされなければ、「イラン文明は破壊されるだろう」という戦争犯罪的な脅迫をSNSに投稿しました。核爆弾の使用をほのめかすような脅しに、米国内やMAGAのかつての支持者たちからも「狂人じみている」など大きな非難が広がり、トランプ大統領弾劾要求まで上がりました。

イラン側からは、「ハリウッド映画に毒されたのではないか」というジョークの効いた、反論がありました。

トランプ氏は、締め切りまで90分を切った時点で、「イラン・イスラム共和国がホルムズ海峡の安全な即時開放に同意することを条件として、私はイランへの爆撃と攻撃を2週間停止することに同意する」と仲介国パキスタンの提案を受け入れる発表をしました。

停戦の理由について、トランプ氏は、米国がすでにイランにおける軍事的目的を達成したこと、そしてイランからの10項目の提案が「交渉のための実行可能な基盤」であったことを挙げました。具体的には、米軍の地域基地からの撤退、イランへの戦争賠償、制裁解除、イランによるホルムズ海峡の管理など、本当に米国は受け入れるのか、と思える大幅に譲歩した内容です。                               イランのアラグチ外相からも、イランが提唱した10項目を交渉の基とする同意を米国が受け入れる発表をしたことから、停戦に同意したことが発表されました。(こちらその投稿

この合意には、イスラエルが激しい攻撃を続けるレバノン停戦も含まれると、停戦前に仲介したパキスタン大統領は、Xで明白に示していました。(こちらその投稿

停戦合意後、イスラエルは、怒りを示すようにレバノン首都ベイルートなどに激しい攻撃をし、約250人もの死亡者が出たと発表されました。ここでの停戦破棄は、常態化しています。

イスラエルにしてみれば、この合意内容は、何の成果も無いものでしょう。野党から激しい非難を浴び、ネタニヤフ首相は水曜日の夜、「指は引き金にかかっている」とし、いつでも地域全体で戦闘を再開する可能性がある、と強硬姿勢を示しました。

国連、豪州、フランス、スペイン、イタリア、エジプト、トルコ、カタ―、仲介国パキスタン等から、レバノンでも停戦するよう非難の声が上がりました。
トランプ大統領は、イスラエルをなだめるためか、レバノンは含まれないとし、ホルムズ海峡の安全な通行が、妨げられました。トランプ氏は、“イスラエルのレバノン攻撃継続を支持するのか”または、“レバノンでの悲劇を止め、ホルムズ海峡の安全な通行を優先し、世界の人々の生活を助けるのか” 判断が問われます。

このコラム執筆(4月9日)時点では、4月10日に予定されている、終戦交渉の状況は、分かりませんが、注視したいところです。

戦争で私たちの生活も犠牲に

米イスラエルのイランへの攻撃から始まった戦争は、世界に経済戦争して、食料・物品不足、物価高危機として大影響を与えることになりました。これは事前に警告されていたことから、予測できていたことでしょう。

この戦争から、世界の一般の人々の”生活や命”などおかまいなしことが、はっきりと見えてきたのではないでしょうか。国連や多くの政治家たちと関わってきた、ユダヤ系米国人のサックス教授(Jeffrey Sachs)の次の解説が目に留まりました。

「米国の政治は、米国を破壊してきました。中東での何年もの戦争です。なぜ私たちの生活は停滞し低下しているのでしょうか?なぜ生活基盤(インフラ)は、劣化したままなのでしょうか?」

「なぜなら、何兆ドルもが、戦争に使われているからです。付け加えさせてください、トランプは、米国にとってまったく不名誉です。彼は、私たちにウソをついた。”アメリカ第一 ”だという、どの言葉もウソだった。(彼は戦争はしないと言いました。)全く逆のことをしている。もちろん米国議会は死んでいる。(議会は、共和党の多数によりトランプのイラン攻撃を承認しました)~彼らは役立たずだ。彼らは皆、シオニスト(イスラエル拡張主義)・ロビーから資金を受けている。彼らは我々の富を浪費している。彼らは、住宅供給、エレベーター、道路、電力網、私たちの生活に欠かせないあらゆるものから、私たちの注意をそらしてしまった。 戦争への数兆ドルの資金を流用するためだ。全ては、今まさに進行中の狂気(の戦争)のためだ」

本当の目的は、誰かのための、資源が豊かな中東でのイスラエルと米国の覇権支配の確立でしょう。

イスラエルのネタニヤフ首相が30年間望んでいたとされる、イランとの戦争を共犯できる相手(米国大統領)として、長年トランプ氏に白羽の矢が当たっていたのではないでしょうか。通常の大統領は拒否してきました。

すでに米国では、2000年に出された戦略“アメリカ防衛再構築 Rebuilding America’s Defenses: Strategy”で中東での複数域戦争継続が提案されていました。そこには、アメリカの世界的優位性を維持し、国防費を増額し、軍を改革するための戦略が書かれているそうです。

実際、アメリカが関わる中東での戦争が起こりました。今も続くパレスチナ紛争(1948~)、イランとイラク戦争(1980~1988)、イラク戦争(2003年)、アフガニスタン紛争(2001-2021年)、シリア内戦(2011年~)、イスラエルのレバノン侵攻(2006, 2024~)、イエメン紛争(2014~)、そして今回のイラン攻撃が勃発し、何十年も米国などが支援する武装組織の台頭や周辺国を巻き込んだ緊張と不安定が続きいています。

この米国の戦争政策には、親米の欧州の西側諸国や日本が繋がり、同調し歩調を合わせ、賛同し援助してきたことがうかがえます。言い換えれば、日本でもこれらの戦争のために、助けが必要な一般人への福祉や年金が削られていると、感じます。

日本は米国へ約84億円(一年間の総税収相当)の投資を決定しました。その内容は、米国産石油へのインフラ・人工ダイヤモンド(軍事品に使われるのか)・AIデータセンター(人々の管理か)とあり今本当に人々の生活に必要なものか?と疑問が湧く内容です。(こちら参照

また、豪州のファイナンシャル・レビューを基にすると、4月3日トランプ大統領は、軍事が最優先事項だとし、2027年度予算案で、国防費を約240兆億円に増額することを提案しました。これは数十年来で最大の国防費要求です。

トランプ大統領はこれについて「我々は戦争をしている。子供の世話をする余裕はない」「保育、低所得者・高齢者といった医療援助すべてを連邦政府が担当することは不可能だ」と福祉を切り捨てると述べました。(こちら参照

私たちの税金は、軍事産業の莫大な利益となっているでしょう。

私たちの生活向上や福祉にためには、増税ではなく、世界各地で続く戦争を止めることが必要だ、とまた感じました。

イランはなぜ優位に立てたのか?

①兵器

豪州ABC(NHK相当で無料)によると、米国はイランとの戦争において高性能兵器を急速に浪費していると推定されており、備蓄を補充するには数年かかる可能性があるそうです。軍事企業からは、防空システムに必要な迎撃ミサイルの世界的な備蓄が「ほぼ枯渇している」と警告されました。アナリストらは、他の紛争が勃発した場合、これらの兵器は使用できなくなる可能性があるという見解です。

これで、台湾有事は、起こりそうではないでしょう。戦争の期間と結果は、どちらの側が先に重要な兵器を使い果たすかによって左右される可能性があると言われています。トランプ氏は、米国はイランの軍事能力を「完全に破壊した」と主張していますが、低下したとはいえ実際は数千以上のドローンやミサイルを保持し、有利な状況だという事です。

イランは、中東・西アジアで数十年続く戦争、目の当たりにする譲歩する国々、米国に何度も破られる合意、制裁から何十年もこの事態を予測して、入念に備えてきたのでしょう。

②世界の政局 

中国・ロシア

先制攻撃されてから、イランは戦地のホルムズ海峡を自衛のために開放を限定していました。これに対し、国連でバーレーンが、航行安全確保のため多国籍軍出動の決議案を提出しました。ロシアと中国は「武力行使を正当化しかねない」と拒否権行使により否決されました。

この停戦締結には、中国の奔走により実現されたと豪州では報道がありました。5月に北京訪問予定のトランプ氏もこれを認めています。中国は、世界経済と自国の経済安定のため、これ以上の混乱を避けたかったようです。(こちら参照
イランにとっても石油の約80%の輸出先は中国(13%の消費量)で、政治・経済的にも欠かせないパートナーです。

中国は、ヨーロッパまでの貿易路、“一路一帯”実現のためにイランは、中東と西アジアを結ぶ重要なポジションにあり、米国の傀儡政権は避けたいところでしょう。また、中国は重要兵器製作のための希少鉱物(Rare earth)を世界で約70%占める産地であり、この点でも有利な立場です。

ロシアもカスピ海を挟んで隣国であるイランが米国の傀儡政権になることは、安全保障上避けたいという思惑があるでしょう。ロシアも石油・ガスの世界的産地で、この戦争が有利に働いているようです。

また、イランは、隣国に親イランの国々や厳しい山岳地帯に囲まれ、地上侵略が難しい環境が幸いしているようです。

気になるインドの動き
もう一つの大国であるインドの動向が注目されます。親米イスラエルであり、2月のモディ首相イスラエルの公式訪問で、関係を「特別な戦略的パートナーシップ」に格上げし、技術、防衛、農業、労働移動における関係強化を重点に、多くの協定を結びました。(こちら参照
中東の紛争に関して、インドのモディ首相の声に触れることはありません。BRICSが共同声明で、米イスラエルのイラン攻撃を非難しないのは、インドが反対しているとの見方があります。
そのために、パキスタンが仲介役を引き受けているとも言われます。2025年インドとパキスタンは、イスラム教の多いインドのカシミア地方での、ヒンドゥー教徒の殺害を巡り、インドが空爆を行い衝突しました。ここでも宗教による争いが起こっているようです。

ウクライナ

このような状況で、米国から、無下に扱われるウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの石油施設やタンカーを攻撃し、世界への資源供給をより困難にし、急成長させているているウクライナの軍事産業を売りに3月末、湾岸諸国を訪問し、複数の湾岸諸国と長期安全保障協定に署名しました。協定の内容についてはほとんど詳細が明らかにされていないようです。

ゼレンスキー大統領は、いまだに選挙を行わず、戦争を長引かせ、自国民を犠牲にして、軍事産業で利益を得るという方向に進んでいるようです。

ヨーロッパ

戦争当初からのスペインやイタリアに続き、4月に入ると公の場での非難合戦が激しくなりました。西側フランスのマクロン大統領の発言は、“政治はケンカだ”を表しているようでした。トランプ氏のNATO軽視の発言、マクロン大統領の妻と結婚生活に対する侮辱的な発言を受け、次のように非難の言葉を連発しました。

「(トランプの)下品な発言はコメントに値しない」

「ホルムズ海峡を開放するために武力を行使することは反対だ」

「これはショーではない!私たち全員に必要なのは、安定、平穏、そして平和への回帰だ」

「我々は戦争について話している。今日、我々は戦闘に参加している女性と男性、そして殺されている女性、男性、民間人について話しているのだ」

「我々が真剣に取り組むときは、前日に言ったことと正反対のことは言わない」

「我々はまた、この戦争が我々の経済に与える影響についても話し合っている」

「必要なのは緊張緩和だ。停戦に焦点を当てるべきだ」

マクロン大統領に期待できるのか?がっかりさせられるのか?今後の動向が気になります。

ドイツやイギリスも民間人や民間施設への攻撃は、戦争犯罪だとし反対を表明し、豪州首相も緊張緩和を呼び掛けました。

欧州では、次は米国からのグリーンランドへの軍事的侵略が心配されているからかもしれません。

EU(欧州連合)は、2027年初頭までにロシアからのガス輸入を完全に廃止することを目指し、米国、ノルウェー、アルジェリアへ転換する決定をしたところでした。ロシアは先んじて、この4月末までにガス輸出を止める可能性があるとし、欧州は資源入手に苦しい立場に置かれることになりました。

このような混乱した状況で、日本が自衛隊をホルムズ海峡に派遣しなかったことは、本当に胸をなで下ろします。

ブラジル

2026年4月の演説で、ブラジルのルーラ大統領は、米国がイランの核の脅威について嘘をついていると非難し、「不必要な戦争だ」「帝国主義だ」「こうした行動は国家主権を侵害し、エネルギー安全保障を脅かし、世界経済の不安定化を悪化させている」と強く訴えていました。

また、国連安全保障理事会に対し、「外交は弱さの表れではなく、人間の知性の最高の表現である」と言い、行動を起こすよう促しています。

南米では、トランプ政権によるベネズエラの大統領夫妻の拉致が続き、キューバへは制裁で貿易を止め、人々は資源・食料不足で、命が心配されます。そんな中、ロシアのタンカーが石油を届けました。

南アメリカでも、トランプ政権の強権的手法が、自国に及ぶのではないかと懸念されているようです。

世界が変化するための鍵は?

これからは、日本を含む西側諸国とBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国を中心とした新興国の経済連合)が提携して、一強独裁を止められれば、世界変化への鍵となるようです。

そして、多くの人々が指摘しているもう一つの鍵は、イランへの戦争を反対し、アメリカ国家対テロ対策局長を最近辞任したケント氏が繰り返し指摘している、「どれだけイスラエルを制御できるか」ということのようです。

ケント氏は、またトランプ大統領が、NATO(欧州諸国との軍事同盟)を脱退をほのめかすのは、イスラエルがトルコ(NATO加盟国)と衝突した場合に、イスラエル側に立つためだ、とも見ています。イスラエルの要人から「トルコは次のイランだ」という発言もありました。

③イランの人々の力

子どもの頃から、アメリカの文化に馴染んではいたものの、中東や西アジアの人々について知らなかったことを改めて感じました。

日本とイランの人々の価値観(家族の絆、控えめな表現)と相性が良く、誠実さや努力を描いた日本の作品が好まれているそうです。イランにはNHK番組「おしん」遺産があり、 過去の大ヒットにより、「日本=品質が高い、ドラマが良い」という信頼感があるそうです。最近では「進撃の巨人」「鬼滅の刃」「NARUTO -ナルト-」が若者に人気だそうです。

そして驚いたのは、今まで見たことのない、戦場とは思えない、イランの人々の様子でした。

米イスラエルから橋や鉄道、原子力施設を攻撃するから近寄らないように警告されると、人々は恐れるどころか、逆にその周辺に集まり“人々の鎖”をつくり抗議をする姿です。

原子力発電所に集まり守ろうとする人々

橋を守ろうとする人々

テヘランでは毎晩、ミサイル攻撃があるにも関わらず、多くの人々が街頭に出て政府の国防を応援しているそうです。

赤いバイクに乗った女性からのメッセージ

「トランプは狂っている。自国の人々も傷つけている。分断しようとしている。彼を止められるのは、イランだけだと思って、立ち上がっています。イランの女性であることは誇りです。トランプは私たちを救うと言ったが、米国で彼に抗議する女性の扱いを見てください。それが、“民主主義と自由だ”という国です。彼の息子は戦場に送らない。助けに来る必要はない。私たちは、自分たちで、問題を解決し上手く生きています。この戦争が終われば、私たちはスーパーパワーとなるでしょう。もし私が、それを見れなくても、あなたは見ることができる。それで私はうれしいのです」

米イスラエル戦争のさなか、民間人が担う役割が拡大し、イランの検問所でボランティア活動をする女性です。

この映像は、イスラエルがイラン全土の検問所や治安部隊を繰り返し攻撃し、複数の場所で数十人の国内治安当局者が暗殺された中で公開されたそうです。

イランの遊牧民がライフル銃で、国内で飛行していた米軍ヘリコプターを撃墜したことがイランで称賛されていました。子どもたちは、傍らで父親を声援していたそうです。なぜ?と問われると「彼らは子供を殺すから」というこたえが返ってきました。イランには遊牧民が約1千万人いるそうです。

オーストラリアは、先週末イースター・ホリデーでした。十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日目によみがえったことを祝う、キリスト教において最も重要で、最も古い祝日です。春の訪れと生命の誕生を祝うイベントでもあり、卵(イースターエッグ)やうさぎ(イースターバニー)がシンボルとして知られています。

冒頭の写真は近所のお店で飾ってあった卵のペインティングです。この風習は、イスラム教の人々にも共通しているそうです。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。