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こちらアイスランド(17)酒もってこい!アイスランド人的国内旅行〜小倉悠加

2020年の夏、外国人旅行客が不在の間に、アイスランド人の間にアイスランド国内旅行ブームが起こった。他に行く場所がなかったという消去法ではあったものの、国内は世界有数の観光地が目白押しだ。悪いはずがない。

アイスランドもコロナの影響を大いに受けた。ロックダウンはなかったし、日常生活も集会の規制と商店内でのマスク着用以外に大きな影響はなかった。けれど、観光客がコロナ後は90%以上ダウンし、観光立国として経済的に大きな打撃を受けた。現在でもそれは続いている。

2020年3月、コロナの声が本格化した頃から、観光業者は青ざめた。アイスランド共和国の総人口36万人、2019年の観光客数約200万人。掻き入れ時は夏(6ー8月)だ。その時に観光客が来なければ、ツアー会社やホテル・宿泊所はどうなるのか?

去年の夏、アイスランド人に一番人気だったÞakgilへの道(46秒)

大自然はアイスランドのどこにでもある。当たり前の風景。それが素晴らしく風光明媚だと知るのは、比較対象を認識できてのこと。アイスランドの自然が観光資源になることは、外国人が彼らに教えたことでもある。アイスランド人はあまり国内を観光しない。特に近年は、風光明媚な場所がツアーバスに占拠されてきたので、あえて行こうとも思わなかった。

なので、夏休みになると、待ってましたとばかり海外へ飛ぶ。夏休みではなくても、週末にロンドンやヨーロッパの主要都市に遊びに行く場合もある。私もそうしたことがある。

そんなところにコロナ。海外に行くのも、帰国時の隔離も厄介だ。アイスランドの国内旅行に全く興味を示さなかった輩が、重い腰を上げて国内旅行に繰り出すことになる。

ところで、欧米の夏休みが長いことは、何となくご存知かと思う。アイスランドはどうなのか?雇用形態にもよるが、私のパートナーの夏季休暇は6週間だ。数日や1-2週間ずつ細切れにとってもいいし、6週間続けても問題ない。もちろん有給。

あれは去年の5月初旬だったろうか、観光客の激減で経営が危ぶまれるホテルやゲストハウスが、夏の宿泊費を半額にした。特に衝撃だったのは、あるホテルチェーンがアイスランド語サイトに「宿泊ギフト券」の名目で大幅な値下げを発表。一泊3-5万円が相場の夏季料金が、5泊で6万円!この値段なら渋珍のアイスランド人でも宿泊する、という値つけだった。

Þakgil
Þakgil人気のハイキングコースからの眺め

ここ数年ほど、ホテルやゲストハウスが需要に追いつかず宿泊費は高値安定。その上に食費や交通費もかかるため、同じ金額であれば海外に飛んだ方がよほど楽しいし安上がりだ。私たち夫婦は毎年アイスランドを一周するが、宿泊はキャンプ、友人の家、ゲストハウスを散りばめ、費用を圧縮するのが常だった。

前年は20万円だった宿泊費が今年は6万!二名一泊1万円強なら、ひとりあたり一泊5千円。ありがた〜〜〜い!!!

テント泊の何倍も快適で、キャンプ場の屋根があるだけのコテージ以下のお値段。それにアイスランドのキャンプ地は、うるさいことが多い。特に地元民が多いと、大自然を楽しむというより、酒を飲みながら語り合うのが常なのだ。

同じ思いのアイスランド人が多かったのか、この宿泊ギフト券に多くの人が飛びついた。ホテル側もびっくりの大反響だ。

そうして外国人観光客で占められていたホテルは、地元アイスランド人が占拠。そこで私が目撃したのはーーー

超満員のバーで酒と会話を楽しむアイスランド人!
アイスランド人は飲む!底なしに飲む!さすがバイキングの末裔!

そしてアイスランドは4世界が狭いため、こういう場で昔の知り合いに会ったりする。そうなると、ビール片手に昔話が弾む、もっと飲む!つまみも頼む!

ホテルのバーはチェックイン直後から夜中までしっかりと大量のドリンクを売りさばく。ビール一杯1000-1500円、流行りのカクテル類は2500-3000円、アルコールだけで一人一万円を売り上げるのは難しくない。宿泊費1万円でも、ドリンク代が尋常ではなかったはずだ。地方の名物食堂など滅多にないお国柄なので、アイスランド人はホテルのレストランで食事をする。ホテルのレストランの食事で一人1万円もごく普通だ。

夕食代を支払った上に、大量の酒をあおるアイスランド人。なーんだ、外国人よりもいい客じゃん!

Þakgilのハイキングコースの途中で見かけた奇岩。岩の精が住んでいそうな気がする。

アイスランド人は夏季休暇なのだ。予定といっても次の宿泊地へ移動する程度しかない。飲み過ぎが観光予定に響く心配はない。部屋飲みしかしなかったが、私たちも朝は10時頃まで寝てることが多かったし、チェックアウトでレセプションに行列ができるのはだいたい10-11時頃だった。

これにはホテル側も驚きだったようだ。従業員の最低限の雇用確保だけを見ていたのが、バーとレストランの売り上げにより、経営に支障はなかった。私たちが宿泊したホテルのバーは、どこも満員。バーに収容しきれず、レセプション・エリアまであぶれ出ている人々も。話し声も賑やかで、外国人が主な宿泊客だった頃の夜の静けさとは大違いだった。

そして観光バスを全く見かけなかった代わりに、大量に出現したのがキャンピングカーだ。トラックの上に載せる式のものもあれば、大型車にキッチンからシャワー室までを詰め込んだキャラバンまで、これでもか!というほどよく見た。成功の証とされている白のランドクルーザーが、トレーラーを引っ張る姿も多く目にとまった。

いつもなら海外で豪遊していた層が、夏季休暇を国内で過ごすにあたり至った答が、夏の数ヶ月しか使えず、維持費の高いキャンピングカーなのか、とも。

Þakgilのキャンプ場

例年はいかに宿泊費を圧縮しながらも快適に過ごすかが問題のアイスランド一周旅行が、そんな訳で去年は楽だったし、何よりもホテルはどこも快適だった。

2021年4月末、宿泊ギフトが売り出された(やった、よかった!)。去年の体験に味をしめた我々は、販売開始後すぐに宿泊ギフトをゲット。今回は別のホテル・チェーンにした。

日本では聞いたことのないÞakgil(サクギル)。2020年の夏、アイスランド人に圧倒的な人気があった。今回は写真も動画も掲載したので、地図もどうぞ。

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小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。本場のロック聴きたさに高校で米国留学。学生時代に音楽評論家・湯川れい子さんの助手をつとめ、レコード会社勤務を経てフリーランスに。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。アイスランドと日本の文化の架け橋として現地新聞に大きく取り上げられる存在に。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。