今年のアイスランド一周のハイライトは、前回のアスキャの温水湖に浸かった話。まだ読んでいない方は写真や動画だけでもぜひどうぞ。
前日のアスキャへの旅が険しかったため、この日はゆるゆると過ごそうということに。
「で、今夜の宿はどうするの?キャンプ?」
今年のアイスランド一周は約二週間の予定。そのうちの一泊のみ宿泊先を決めていなかった。それがこの日だ。
「どこでキャンプするかは、どの程度進めるかにもよるから、できなりで決めよう」
「今日はどこへ行く予定?」
「走ったことがないから、最北部までとりあえず行ってみたい」
あ〜、そ〜ですか。そうですか。それって行き先はほぼ考えていないという意味でしょうねぇ。
計画性を重んじる日本人としては、とてもイヤーな予感。結果オーライであったことは最初に書いておくけど、例によって彼の計画性のなさが、夕方以降は空腹も伴ってのイライラとなった。
(「お前が計画しろ」というツッコミもあろうかと思うけど、彼は私にサプライズにしてることが結構あるので、私が細かく拘らないのはそれに対する配慮が入ってる)
前日の疲れがありまったく動きたくないが、仕方なくホテルをチェックアウト。
寄った先をささっと進みますね。地熱発電所クラプラの近くにあるヴィティ(Víti)という火口湖。え?どこかで聞いたことがあるような名前だと思ってくださったのは、「こちらアイスランド」の愛読者ですね。ありがとうございます!
そう、前回寄った温泉湖もVíti。そしてクラプラ火山の近くにあるのも火口湖のヴィティ。日本のあちこちにxx富士と呼ばれる山があるような感じ?
青い水が美しい湖で、火口の周囲をぐるりと歩けるけれど、割愛。今日はなるべくハイキングは省略したい私。
次に行ったのは、道路を隔ててこの火口湖の反対側の地域。どちらにしても同じ火山地帯に属する場所だ。火山といえば、アイスランドで新たに噴火した火山の見学記を投稿して以来、実は10回以上現地に足を運んだ。そのため、火山に関する知識や興味も深まり、実体験として溶岩の変化も知るところとなり、こういった場所を訪れるのが結構楽しくなってる。
レイルニュークル(Leirhnjúkur)の地理
噴火がいつ何日間続いたかの記載
とまぁ、火山地帯として魅力的に思ったはずだったはずが、溶岩に到達するまでの道中、私の目はその周囲の風景に釘付け。
アイスランドの植物に関する書籍で参照しているけれど、まだこのスズランが本当は何という植物なのかはわかっていない。誰かに尋ねた方が早いかな?
溶岩よりも植物。そして緑色の草なのか苔なのか分からない植物も愛おしいけど、やっぱり目立つのは花だよね〜。思わず見惚れるし、写真も撮りたくなる。で、溶岩を見たい彼がイラつく。はいはい、花はこれくらいにして、歩みを進めます、進めます。
火山ということは地熱地帯。だからこそ地熱発電所もあり、下の写真のような光景も見られる。前日の温水湖Vítiで見た色彩と同じ。茶褐色の土と硫黄の色。
ハイキングはしない予定が、彼が溶岩まで見に行きたいというので、結局小一時間歩くことに。ここまで来たからには、少々歩く程度なら許す。往復5キロ、雪の中を歩けというのでもないし。
次に向かったのが、ヨーロッパ最大の水量を誇るデティフォス。みなさんがよく観光ガイドで見る写真はデティフォスの東側で撮る写真。私たちも東側は数年前に行ったので、今回は西側にまわってみた。
ドバババン、ズズドンと落ち続ける水量はさすがの迫力。レイキャビクから日帰りで行けるグットルフォスという黄金の滝の水量もかなりのものだけど、ここには到底敵わない。
近くにセルフォスという別の滝があり、500メートル程度なので歩いてみた。
デティフォスのある川には、他にも何箇所か見るべき滝があるそうで、次回の課題とした。
ちなみに、川の水が濁っているのは汚染ではなく、氷河の水だから。この周辺はヴァトナヨークトル国立公園に属していて、この川にはヴァトナヨークトル(アイスランド最大の氷河)からの水が流れてくる。よく見る氷河の写真は澄んだ青い色をしているけれど、氷河には火山灰が降り注いでいる関係で、どうしても濁ったこのような色の水になる。
デティフォスの西側は歩く距離が思った以上にあり、他に見たいと思っていた別の滝はお預けにして、先に進むことにする。
せっかくここまで来たので、アイスランドの最北端まで走ろうと870号線を進むことに。道中、特筆したいことは何もなかった。道はあるけれど民家はないし、まして街もない。なぜ道路があるんだろう?という程度。
途中、私がトイレストップをかけた場所からたまたま穴の空いた奇岩が見えた。その上、海岸線の起伏も面白いので、機会があればまた来ようということに。
トイレ?こんな場所に公衆トイレはないので、そういうこと。
そしてやっと、彼が本日の目的地としていたアークティック・ヘンジに19時到着。朝はホテルでしっかり食べたものの、ここまでナッツとチップスで凌いできた。お腹すいたよぉ。
誰が何の目的で作ったのか分からないストーンヘンジとは違い、ここはホイクル・ハルドルソン(Haukur Halldórsson)のデザインにより、2004年から建造を開始。そしてまだ未完成。どの方向からも対象になるように作られているのがすぐに見て取れるし、石が重なってるだけとはいえ、意外にも興味深い。とても面白い。太陽や星、神話等にもつながるような作りになっているそうで、完成したら天気のいい日に観に行きたい。
で、どこに泊まるの?近くにキャンプ場あるん?お腹空いたんすけど〜。
そう言いたいところを抑え、「翌日の予定をこなすためにもう少し東に降りたい」という彼に付き合う。
車で走れどキャンプ場は見つからないし、天気もよくない。お腹がすいた。最後に通った小さな街の商店で、夕食用にと仕入れたサンドイッチとヨーグルトを、この看板の前でボソボソとかじったのが20時半。今夜、どこに泊まるの〜?!(次回に続く)
小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。アイスランドと日本の文化の架け橋として現地新聞に大きく取り上げられる存在に。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。