11月も半ばを過ぎると、少しずつクリスマスが漂ってくる。街の雰囲気にどことな〜く、クリスマスと書いた薄紙の気配を感じるようになる。商店やストリートを煌びやかに彩る電飾が登場するのは12月に入ってからで、その前に目にとまるのが、クリスマス化粧をした食品パッケージだ。
そろろかな〜と思いながら、スーパーの売り場を眺めると、あったあった。
食品の多くを輸入に頼る島国のアイスランドにおいて、国内調達が可能で、価格も抑えられているのが乳製品。国内で生産される上、これがすこぶる美味しい!乳製品は食卓に乗る機会が多いし、パッケージを変更するのも簡単。手軽にクリスマス気分を盛り上げることのできる、最適な商品となる。
牛乳/mjólk(ミョルク) 牛乳のパッケージには必ず、13人のサンタ(クリスマス・ピープル)のイラストが描かれる。写真は普通牛乳で、は5名のサンタが描かれているのがわかる。普通牛乳はブルーが目印。 普通牛乳の他にも、脱脂牛乳(イエロー)、ビタミン強化牛乳等があり、乳清やサワーミルクなど、日本ではあまり見かけない種類の乳飲料もある。普通牛乳以外は用途が分からず、未だ購入したことがない。 普通牛乳は1リットル170円くらい。
バター/smjór(スミョル) 臭みがなく、クリーミーでとても美味しい。日本とアイスランドを往復していた時代は、日本に持ち帰り、冷凍保存してずっと食べていた。ちなみに写真は有塩バターで、写真にはないが緑色のパッケージが無塩バター。 有塩バターは500g約550円。
クリスマス・ブルーチーズJólagráðaostur(ヨゥラグラダオストゥル) クリスマス時期のみに売り出されるブルーチーズ。通常のものより熟成期間が長いと思われる。 アイスランドのブルーチーズは、ブルー独特の風味を持ちながら、臭みが少なくクリーミーな味わいが特徴。ロックフォールやゴルゴンゾーラなど、有名どころの味の深みには届かないが、若い爽やかなミルキーさが取り柄だと思う。私は好きだ。 クリスマス・ヴァージョンは通常のブルーチーズよりも若干高く、440円程度。
アイスランドは物価が高いと聞いていたのに、乳製品の値段を見て「それほどの高くないね!」と思ってはいけない。乳製品は政府が農家に補助金を出して価格を抑えている。その上、販売店間の価格の差も制限されている。なので、高級スーパーでも、ピンクの豚マークでお馴染みの安売りスーパーでも、国産乳製品の価格差は微々たるものだ。
アイスランドで安く入手できるのは、こういった乳製品とじゃがいものみだと思った方がいい。なので、毎日じゃがバターだけならとても経済的。
その他、クリスマス時期だけ見かける食品に、リーフブレッド/Laufabrauð(ロイファブロイヅ)がある。植民地であったその昔のアイスランドは貧しく、輸入品の小麦粉は貴重品だった。それをいかに美味しく、楽しく、量を増やして食べるかという条件を満たしたのが、このリーフブレッドだ。要は小麦粉のタネを薄く伸ばし、ナイフで細かな模様を描き、それを油で揚げたもの。
リーフブレッド/Laufabrauð(ロイファブロイヅ) 11月になるとスーパーで見かけ始めるのがリーフブレッド。手間がかかるため、写真のような出来合いの品を買う人が増えている。クリスマスのオーナメントの模様が多い。味はクラッカーを揚げたような感じという表現でわかるだろうか。 揚げているので結構お腹にズシンとくるアイスランドの粉物フード。 価格は15枚入りで2500-3千円ほど。手間もかかるし割れやすいので、値段的には理解できないでもない範囲。 ブレッドなので、おかずといっしょにパン代わりに頂く。バター等はつけず、小さく割って食べる。
こちらは子供のクリスマス・ドリンク。一年中売っているけれど、クリスマス独特の飲み方がある。
オレンジ・ソーダAppelsín(アペルシン)+麦芽飲料Maltextrakt(マルトエクストラクト)=クリスマス・ドリンクJólaöl(ヨゥラウル) クリスマスになるとオレンジソーダ(昔懐かしいオレンジの粉を溶かした感じの味!)と麦芽飲料のモルト(ノンアルコールの黒くて甘い飲料)をミックスして飲むのが子供たちの楽しみ。 現在ではすでにミックスしたものも売られているが、別々に自分流で混ぜた方が楽しい。泡が溢れないよう、最初にオレンジを入れるのがコツ。
クリスマス用食品やパッケージはスーパーで見かけ始めたばかり。これからが本番なので、今回ご紹介した以外の乳製品もクリスマス仕様になるし、クッキーやチョコレート等のお菓子も加わってくる。また、この時期になるとスーパーの店頭には日本のみかんに似た香り高く甘いタンジェリン(主にスペインから輸入)が大量に積み上げられる。これもなぜかクリスマス心をくすぐる。
みかんと言えば、もうすぐ日本のみかんが食べられる!うれし〜〜!!
小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら。