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こちらアイスランド(23)夏休み、アイスランドの自然紹介②Vigdísarvallavegur〜小倉悠加

この夏はアイスランドの、聞き慣れない場所を中心にご紹介予定。アイスランドは誰も何も知らない人が多いとは思うけど、世界最大の露天風呂ブルーラグーンや、間欠泉のゲイシール、世界文化遺産かつ地球の地殻の割れ目であるシングヴェトリルなどは、耳にしたことがあるのではないだろうか。

そういった有名どころの観光地は、いろいろな人が観光レポートをしているので、私は誰も目をつけてないところでマニアックにいくのでよろしく〜。

で、我が家はトヨタの小型乗用車を3年半ほど乗ってきた。燃費が最高な上に、そこそこパワフルなエンジンで加速が得意。小回りも上手で小さな駐車スペースもお手の物。本当に便利に活躍してくれた。その上、運転手(=彼)が上手なのか、小型車は困難と言われる未舗装道も上手にこなし、楽しくあちこちへ出向くことができた。世界のトヨタ、本当に素晴らしい。それも15年落ちの中古車。素晴らしすぎる。

なのに去年の後半あたりから、彼が四駆車が欲しいと言い出した。えっえ”〜〜?!

車には何の問題もなかった。が、頻繁にドライブに出るため、レイキャビクから片道2-3時間の範囲で走りたい道が無くなった。住宅街の細かい道以外は、制覇してしまったのだ。同じ道を何度も往来し、移り変わる季節の景色も楽しんだ。残されたのは、四駆専用道しかない。

四駆車が欲しい気持ちはわかるが、車体の値段と燃費がぁ〜〜〜(涙)

小国のアイスランドに自国ブランドの車はない。孤島なので、海を超えて全部運んでこなくてはならない。車の価格が非常に高い。中古車相場は日本の4-5倍ではなかろうか。新車は2-3倍だ。10年以上落ちのトヨタ車が100万だった。そして修理費もかかった。ガソリン代はリッター200円以上。日本の物価がうらやましい・・・。

車を買うのは経済的に痛い。何せこの一年間、私に仕事がなかったし、我が家は経済的にこれ以上削れるところがない。夏の間だけ四駆をレンタルすることも考えたが、これも結構高い。うーん、行き場がない。そしてもっと考えた。我々は初老の熟年夫婦だ。「この先、どれほど足腰丈夫で自然を楽しめるのか分からない。妥協するのはやめよう」と。

そして夏休みを前に、ついに新しい走る仲間を迎えた。選ばれたのは、去年から彼がほしがっていた日本のかわいい小型ジープ車。そして仲良しの銀行ローンも一緒についてきた。

前置きが長い!(と、自分で突っ込みましたので、ご容赦ください)。

さて、ここからが今回の本題。

遠出するほど時間がないけれど、レイキャビクを抜け出したい時によく行くのが、kleifarvatn(クレイファルヴァトン湖)を通る42号線だ。自宅から30分も走れば、美しい湖と起伏に飛んだ地形に囲まれる。湖を囲んで対岸の山々を見渡せるビューポイントも数カ所設けられ、湯けむりがたちのぼる温熱地帯Seltun(セルトゥン)も美しい。隠れた場所で見つけにくく、水温も低めで快適とはいえないが、天然温泉もある。

42号線のその地域の入り口近くに、もう一本の道路Vigdísarvallavegurがある。この2本の道路は同じ山脈の両側を沿うように走る。42号線は山の東側にあたるkleifarvatnの湖畔をまわり、Vigdísarvallavegurは山の西側を行く。四駆専用道ではあるが、もしや普通乗用車でも行けるか?と少し走ってみたが、歯が立たなかった。なので、42号線を通るたびに「この道、走りた〜〜い!」と思っていた。ちなみに夏専用道でもあるため、年に数ヶ月間しか通れない。

なので、四駆で最初に走る場所はここ!と決めていた。そしてここがその入り口だ。

四駆専用道。注意して運転をという標識。冬になるとゲートが閉められ通れない。無理して通れば罰金。

走り始めて5分と経たないうちに、なんとも驚いた。まるで内陸部のような雰囲気ではないか。片側に起伏に富んだ山が続き、道路を隔て反対側にはだだっ広い平地や溶岩大地が広がる。レイキャビクから30分のところに、このような場所があるとは!南海岸からソルスモルクという自然保護地区へ向かう途中の光景が、脳内でオーバーラップする。

道はそこそこ整備されていたが、途中、傾斜のきついゴツゴツの岩道があり、やはり普通乗用車では無理だった。

まず寄ったのはDjupavatn(デューパヴァトン湖)。湖畔を歩くのが困難なほど、山の傾斜が迫っていたのが印象的。冬の姿が見てみたいし、湖面が凍ればいいスケートリンクになりそうな気がした。釣りでもできるのか、クラブハウスのような小屋の側に車が数台停まっていた。

未知の地へ出向く時、安全に関わる情報は集めた方がいいが、事前に情報を得ていないからこその驚きは旅の醍醐味として持っていたい。Sog(ソグ)という場所は、そんな驚きを運んでくれた。

下の写真をご覧いただきたい。まるでランドマンナロイガル!といっても地名だけではわかる人は少ないだろうけど。

ランドマンナロイガルは内陸部の真珠と呼ばれ、色とりどりの美しい山々や天然温泉で有名だ。レイキャビクから200キロ離れたその地は、途中から四駆専用道を使い、大きな川越えもある。川越えというのは橋がなく、川を車で走行して横切るという意味だ。そんな風景にそっくりの場所が、それもレイキャビクから30キロ程度の地点に存在していたとは!

温熱地帯の山々が連なる内陸部とそっくりな見事な色彩

ここは前述の湖の横を通り、歩いて10分程度しかかからない。ハイキングの標識を見ると5キロとあるが、周囲の山などを通りぐるりと見て回るコースが5キロなのではと思う。以下、少し写真をまとめてどうぞ。

以前は盛んに温水が地表に湧いて出ていたのか、山が独特の色をしている。
高台には放牧された羊がのんびりと草を食んでいた。
川がないとまで言われるレイキャネス半島で川のある風景は珍しい。奥に見えるのは海。
風が強いので髪の毛を手で押さえていたり、耳が冷たくて手であっためていたりのポーズ
ハイキングコースの開始点。100メートル先の左手に湖がある。ソグは前の山を登ればすぐそこ。

ここだけで十分に訪れる価値はあるが、Vigdísarvallavegurを更に進めば、溶岩の柱状節理が壁のようになっている場所もあれば、小さなクレーターがいくつか集まる岩場も見つけた。14キロの道のりに、ぎゅぎゅっと地球の表情がたくさん詰められている。

この四駆専用道Vigdísarvallavegur(ヴィグディサルヴァットラヴェグル)は隠れた名勝地らしく、数年前に新聞記事になってから地元民にもその存在が知られるようになり、時々小さなブログ記事を見かけるようになった。

我が家に新しい車が加わった勢いでSogのご紹介となったが、山を隔てて平行に走る42号線も素晴らしい景色なので、折を見て写真をお裾分けしたいと思っている。


ドライブコースの地図はICELANDiaサロン内でお裾分けしているので、興味ある方はぜひご参加ください。詳細はこちら。ROMだけ参加も歓迎です。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。アイスランドと日本の文化の架け橋として現地新聞に大きく取り上げられる存在に。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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