アイスランド最大の音楽フェスティバル、アイスランド・エアウエイブス。100回記念前に初日レポートをしたので、今回は2日目のレポート。3年ぶりのこのフェスティバル、さてどうなるやらとの心配をよそに、充実した内容の、バランスの取れたフェスになっていた。
今回のレポートは、臨場感あふれる当日のツイッターを中心に。
2022年11月4日(金)
フェスのライブではないが、私が大好きなホグニ・エギルソン(Högni Egilsson)が音楽を担当したというイベントにまず足を運んだ。ニューヨークの大手デザイン会社に勤務するアイスランド人デザイナーとホグニのコラボで、場所は街中にできた真新しいフードコートのHafnatorg Gallery。ギャラリーとは紛らわしい。アートギャラリーではなく、フードコート名がギャラリーなのだ。
フードコートを囲むように点在するサイネージ。大胆なデザインが映し出されると同時に、店内四箇所に設置されたスピーカーから、異なる音楽が流れるというもの。音楽はストリングスを使ったクラシカルな響きの中、ノイズもたっぷりと使用されていて、いかにもアイスランドらしい雰囲気。さすがホグニ様、私のツボるところを心得ていらっしゃる。
その後、時間が余ったのでアイスクリームを食べてからリストバンドがあれば誰でも入れるALDA/INGROOVES WARMUP PARTYの会場へ。そのパーティ用に15分程度ずつ演奏したのがSuper SeriousとGeyskiesの二組。事前情報によればBRIETも演奏する予定が、どうやら情報が錯綜していた模様。
前日に続き最前列を陣取ったため、話題のBRIETをとりあえず見ることにした。で、これが素晴らしかったぁ。これからはブリエット様と呼ぼうかと思うほどよかった。
彼女のバックを勤めたのは、いつものバック・バンドに加えて、音楽職人であるサックスのオルカル・グジョンソン(メゾフォルテの一員としても来日したことがある)。彼の活躍は特に光った。歌唱力抜群の歌手であっても、1時間も演奏すると、どうしても中弛みするものだ。そこにオスカルの渋く盛り上がる個性的なソロと、彼女の伸びやかな歌声をからませたのは、素晴らしいハイライトとなった。大きな拍手と歓声が湧き上がった。
ツイッターにも少し書いたが、オスカルと私は旧知で、15年以上前に彼とギタリストである弟オマールのライブを日本で主催したのが私だった。最前列にいた私をステージから見つけたらしく、最初は目が合い、彼が手を振ってきたので驚いた。
彼女のライブが素敵だったので、こんな下世話なことを書くのもナンだが、衣装的には前日の乳頭に続き、下乳がミソだった(笑)。女性アーティストの間では、胸を隠すとか盛るのではなく、普通に見せておくのが流行りらしい。
金曜日の夜は悩ましい。最も盛り上がる夜でもあり、見たい聴きたいアーティストが同じ時間に4組。おいおい。そんな中、彼と私は今夜のメインをHAMと決めていた。理由はといえば、次の週にHAMのヴォーカリストであるオッタルに会う予定になっているからだ。
HAMは結成30年以上のアイスランド・ロックの名物かつ伝説的なグループで、ビョークもHAMのファンだと公言している。かつては故ヨハン・ヨハンソンも在籍し、ヴォーカリストのオッタルはひょんなきっかけから政治家になり、厚生大臣まで務めた人だ。
ブリエットを見た美術館会場の外へ出ると、またしてもゴイクリンへの道は険しく長蛇の列。列の動きもノロイのでパス。Iðnóへ行きたいけど、あそこに入ると腰が落ち着いてしまう。
HAMは絶対に混むので、早く入っておきたい。けれど、他の会場のグループも見たいーーー毎年のこととはいえ、心が千々に乱れる。
熟年の我々はGamla Bíoの、実際に席のある2階にしばし陣取り、休憩しながら文字通り高みの鑑賞。HAMの前に一階に降りて前の方を陣取る。と、斜め前の女性が私に向かって何か叫んでいる。
お”〜、大学のクラスメート。カナダ出身の女性だった。ビール片手にご満悦。彼女はこの夏の終わりからアイスランド人のボーイフレンドといっしょにこの国に移ってきた人だ。胸のポヨンポヨンが目立つ出立ちで、ドヨーンと普通の格好しかしてない私とは大違い!
HAMで見かけた知り合いは、互いに百戦錬磨の音楽好きであることを認識するベテラン揃いで、「ども」と目配せをする程度で終わっていた。そこに、キャピーンとしたリアクションの彼女は、白い胸も含めて文字通り眩しかった。
安定のライブ。絶対に裏切らないあなたが好き💖。ポピュラー音楽には変わり続けることで進むアーティストと、変わらないことがアートであるアーティストがいる。この国での前者の典型がビョークだとすれば、後者はHAMだろう。ローリング・ストーンズが基本的には変わってはいけないのと同様、HAMもいつものHAMだからいいのだ。
どのような感じかといえば、こんなん。曲のタイトルを訳せばパーティタウン。
充実した時間だった。かつての私であれば、もう少しあちこちを見て回ったことだろう。でも今はレイキャビクに住んでいる。地元のバンドは後日見る機会があろうかとも思うので、アイスランド・エアウエイブス二日目、金曜日の夜はこれでお開きにした。
3日目まで入れると超長くなりそうなので、次回ということで。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。