注目の新刊!
第一回は9/4(月)夜、東京・渋谷で開催! オンライン参加も!

こちらアイスランド(99)祭りだ!3年ぶりの開催!音楽フェスティバル、アイスランド・エアウエイブスが戻ってきた!!〜小倉悠加

うれしい、嬉しい、ウレシイ。私の、ワタシの、アイスランド・エアウエイブスが戻ってきた。長年の友達の行方も、消えた理由もわかっていたし、ずっといっしょに楽しませてもらったから、潮時なのかとも思っていた。最初にいなくなった時には遠隔で、家庭のスクリーンで楽しんだけれど、去年はなんだか、期待感を維持するのが難しくなり、ペシャンと風船は萎んでしまった。

その友達が戻ってきた!見た目は少し違ってるし、長髪でバサバサだった髪の毛が綺麗に整えられているけれど、見た目は違ってもあの友達だ。根っこのところでは何も変わっていない。よかった!

というのが、アイスランド最大のポピュラー音楽フェスティバル、アイスランド・エアウエイブス初日の感想だ。アイスランド・エアウエイブスと私の付き合いは長い。以下のブログにもあるように、2003年が最初だったので、もう20年の付き合いになる。

その間、人並みの紆余曲折は通ってきた。アイスランドに拠点を移してからは、音楽の関わりは以前ほど濃くはなくなった。けれど、私のルーツが音楽であることには変わりない。音楽を通して人と知り合い、あの頃ティーンエイジャーで音楽を志した若者は、今やもう、世界的存在すぎて声をかけにくくなっている。

歴史とはそういうものなのかもしれないが、年月は流れ、あの頃があれほど貴重だったとは、渦中にいた時は思いもしなかった。

という大きなお姉さんがよくする昔話は置いておいて、2022年のアイスランド・エアウエイブス。やっぱり楽しい!

街には音楽好きがあふれ、世界中からこのフェスを見に来る。私も日本からのツアー企画を作り、10年以上続けた。ご長寿ツアーだったし、自画自賛になるけど、内容はピカイチだったと思う。旅行代理店では真似ができない物事ばかりだった。今やミュージック・ツーリズムをレイキャビク市は構想していて、私が10年以上も前からやってきたまさにそれなのだ。

会場への待ち行列と、三三五五と立ち話をする人々

このフェスの特徴は、会場が街中にあり、郊外の巨大な敷地に会場が点在しているというものではない。レイキャビクの街全体がフェス会場といってもいい。メインの会場は全て徒歩で歩くことができ、食事や休息は、街中なので当然自分の好きな場所へ行ける。フェス名物の屋台はないが、その代わり、レイキャビクの飲食店の全てがフェス用に使える。

アイスランドでは今年の早い時期からコロナ規制は全廃された。フェスを企画するための時間はあった。けれど、事情がどう変化するのは読めないし、海外の対応とも関係してくる。オープニング・パーティで見かけた運営側の知り合いに尋ねると意外にも、難しいのはそこではないという。

現在レイキャビクでは、日本の俳優が参加しての映画撮影が行われている。私もエキストラとして駆り出され、先日撮影現場に身を置いた。そこで見かけたのがかつての知り合い(アイスランドではあるあるすぎる事情)。仲良しだった友人のお兄さんで、音楽バンドと劇場でかなり奇抜なことをやってた人だ。以前はアイスランド・エアウエイブスの裏方でも見かけていたので、あぁ、なるほどと頷いた。

ライブは相変わらず華やかだ。各会場には特徴があり、それは箱の大きさにも関係がある。今回会場になった場所で収容人数が一番大きいのが美術館、次にガムラ・ビオ。当然人気が高いライブはこの2会場に分散される。

教会で大音響のロックはないため、そこではアコースティック系の物事が多くなる。昨日はここでJun Futamataさんのレイキャビクでのレコーディングに参加したピアニストのMagnus Johannをとても見たかったのだが、時間が取れずで断念。アイスランド・エアウエイブスでは見たいものの時間が重なることが多く、身を二つくれ〜となる。分身の術が使えた武士が羨ましい。

アイスランド・エアウエイブスの回り方には少しばかりコツがある。基本は好き勝手にどうぞではあるけれど、どのアーティストをどれだけ見たいかの優先度、そのアーティストの人気と会場の大きさを考慮して、どう動けばいいのかをざっくり計算するといい。会場に入った後は、後ろの方に居てすぐに出られるようにすべきか、前にグイグイと進んで陣取るか。

この会場に居座る予定もなかったけれど、せっかくの最前列、最後まで見ようということになった。

ここで昨日見たライブのおさらいをば。誰も何も知らない人ばかりだと思うので(地元的には有名だけどね)、オーディオまたは動画も入れておきますね。

まずは美術館で関係者向けのオープニング・パーティがあったため、そこで若手のGugusarを見る。彼女は14歳くらいの頃から注目され始め、歌唱力は抜群だ。まだ18歳。今回はバックバンドなしで自分の声を重ねることにより、ロボット的なダンスを全面的に押し出してきた。たぶん彼女はサウンドと自分の動き、今後はもっとビジュアルに力を入れて、路線としてはビョーク的になるのかともチラっと思った。

こんなところに書くのもなんだが、フリーザニップルで乳首を晒すということよりも、ブラジャーで締め付けるのは血行にもよくないとされるため、ブラ無しか、ごく薄いサポートしか付けていない人が多い。この日のミュージアムは女性アーティストが多く、この傾向が強かった。ちなみに私、胸無し族なので余裕でノーブラ。

Gugusarはアップテンポとスローを上手に取り混ぜていた。で、動画ではなくオーディオのみのYoutubde。たぶん日本人はこういう音の方が好きかと。ポップではなくアンビエントっぽい音をセレクト。

Gugusar(ググサール)ロボティックな動きのダンスを存分に披露

次は道路を隔てた向かい側の会場でやっているJanus Rasusmsenを見たかった。私が!なのにGusgusarを最後まで見てしまい(私は早く出たかったんだけど・・・)、外に出て列に並んだ時は既に遅しで、たぶん待っても中に入れないし、演奏は終わりそうなので、列がない隣のHurraへ。

ちなみにヤヌスはKiasmosというユニットをOlafur Arnaldsと組んでいて、私はKiasmosが超絶好き。ヤヌス単体でも気持ちよく酔えるので、ぜひ〜。でもって、行けなくてごめん、ヤヌスくん。

Gaukurinnという会場に入れなかったので、お隣のHurraへ。外の列はなかったものの、会場内はけっこうな人混み。当然顔見知りを何名か見かけて、軽く挨拶して最前列へ。ん?人混みをかき分けて前の方へ行くと、案外空いてるのです。普通はね。大会場の、人気アーティストは無理よ。

ラッパーのSNNY。メロー・ファンクみたいな感じで好きだった。

とりあえず雰囲気を見たくて入ったので、2曲でお暇したけど、雰囲気はよかったし、聴いていたらそれはそれでずっと楽しく過ごせたと思う。けれど、彼がミュージアムで行われる海外からのバンドを見たいというので、それじゃ行きますか。

ちなみに、この文章は公開予定数時間前に書いてます。ササっと終わらせようと思ったところが、音楽は饒舌になりがちなので、ササっとね。ささっと。

ミュージアム(美術館の中に会場がある)に戻ると、結構な人数で思ったよりも混んでいる。Junius Meyvantはフェロー諸島出身のアーティスト。機会があればたっぷり語ります(笑)。動画は長いし少し前のものだけど、彼は基本的に変わらないのでこれでいいかと。

人気もの、ユニウスの人混みを書き分けで前へ行きたい。けれど、彼が率先して前へ行こうとしても人混みに阻まれるーーーそれでは真打ちの私が登場しましょう(そこまで大袈裟じゃない)。こういう時に小柄は役立つ。細っこいので私がまず通り、次に彼を無理やり通らせる作戦。

ほぼ前まで到着し、2曲ほどでライブ終了。もっと聴きたかったわぁ。知らない間にこれほど彼の演奏が充実していたとは!

そして人が入れ替わるスキにめざとく素早く最前列をゲット。彼が見たがったのはAmyl & the Sniffersというパンク・ポップ的なバンド。数曲見るには面白かったけど、正直私の趣味ではない。でも、家庭内のお付き合いなのでがまん。2ー3年に一度であれば、こういうのを通しで見るのも悪くない。

自分の音楽的趣味に入らないものは、見聞を広げるという意味で重要。という、ご託をくっつけての消化。最初の20-30分で切り上げれば、楽しかったで済まされた。それでも、今回海外から呼ばれた一番有名なグループだそう(夫談)。パンク好きの彼でも最後は食傷気味だったので、ましての私。

「でしょ!純粋にパンクだったら私も聴ける。しっかり付き合う。けど、ポップなのかパンクなのか、面白いけどつまんないよね」と、これだけ読んでも意味が通らない会話をして次のReykjavíkurdæturを待つ。最近はグループ名を英語にしてDaughters of Reykjavikとしている。

かっこいい女性のユニットとしてルッキズムで見ると大間違い。政治を動かす社会的なパワーさえ持つアクティビスト達だ。取り上げる話題は特に性別の不平等、人権侵害等が多い。彼女達が訴えることに賛同できないと、会場に身を置くのが辛いかと思う。アイスランド語が理解できなければ、単なるエンタメなのでそれでよしだ。

毎回、物議を呼ぶことをやる彼女達、さて今回は何かな?

ダイナミックで惚れ惚れするReykjavíkurdætur。見習いたい・・・

今回の物議はたぶん、乳頭でしょうかね。彼女達はこんな動画を作っていた。年齢制限がかかっているためログインが必要。もしかしたらここであれば制限無しで見られるかも。

タイトルも挑発的で「Hot MILF SUMMER」。ミルクではなくミルフ。MILFがどのような意味かはググればすぐにわかるかと。上手に韻を踏んだものだと感心。

この動画をバックに踊る彼女達。その内容がクライマックスに達しようという時、メンバーの一人が一段高い場所に立ち、胸を出して揉み始め、母乳を出すような行為をした。うっひゃ〜。

観光客がこれほど多くなかった頃、女性がトップレスでブルーラグーンに気軽に入っていた時代がある。たぶん北欧全般に、日本ほど裸に対しては敏感ではないとは思う。でも盛り上がるよね、生乳だもの(笑)。もちろんこれは、ストリーミングでも流された。

第二の物議は、ヒシャブの不着用で死刑になった女性を弔い、イラン政府への抗議、女性全般への暴力・不平等への抗議を声高にした。物議というのではないか。私は日本にいると、えらく自己主張が強く思われるけれど、実際は社会が怖くて引っ込みたい派だ。彼女達の主張はとても心強く、心底励まされる。

最後は楽しくパーティ。観客にシャンパンの泡をふきかけ、客席へのダイブも。

会場は大興奮、やっぱりダイブがあると盛り上がりが違う。なんてノンキなことを言っていいのかな。ダイブで死人が出たこともあるため、万が一を考えアイスランド・エアウエイブスでも一時期禁止になっていた気がする。いや、今でも禁止なのかもしれない。

そんなことはお構い無しだし、上の言うことを従順に守るのが人生じゃない。人を思いやる気持ちが彼女達を動かしているのだ。あっぱれアイスランド女性。

あと2時間ほどで二日目のアイスランド・エアウエイブスに繰り出す。久々に、速報で楽しい話題をお届けすることができてよかった。おっと、楽しいのは私だけの独りよがりかな。でもそれでいいや。つづく。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

筆者同盟の最新記事8件