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こちらアイスランド(124)水のある景色で心の一服。社会の喧騒から一瞬でも離れてみませんか?〜小倉悠加

アイスランドの自然に身を置くと、世の中の動きなどどうでもよくなる。日常の些細な憤りに囚われている自分がばかばかしくなる。投票結果は気になるけれど、自然が選挙に介入することはない。昨日カフェで頼んだコーヒーが熱すぎて火傷をしたけど、だからといって世の中がひっくり返る可能性もない。

自分がポツンと存在する。生きてこの景色の中にいることが不思議だし、嬉しいとも思う。

心が静まる。ワサワサした雑念が、すぅっと消滅する。

「自然に癒されたい」という文言を見るし、かつては似たような思いを抱いてたこともある。相手に甘えて「私を癒してね」と言っているようで、ロマンチックな考えではあるけれど、今の私にはくすぐったい。

自然に人を癒そうと意図はないだろう。人間は自然から好き勝手に癒しの要素を探し出して、癒された気持ちに酔っているだけだ。人間は抱く思いを自然に勝手に押し付けたり奪ったりすればいい。自然はそんな人の心の動きには一切動じない。そして、その動じないところにこそ私たちは圧倒的な存在感を感じるのだろう。

それを自然の包容力と称するのかな。

それでいて私が日常的に付き合っている自然は手厳しい。手厳しいからこそ、時々やさしい顔を見せてくれるとうれしい。ん?それは単なるツンデレかーー。

そんな私の心のひとりごとはさて置き、今回は写真をご紹介したい。そしてサメタイの読者のみなさんに、少しだけでも日頃の緊張を解きほぐしてもらえますように。

たぶんこの場所は、以前何度か写真を出していると思う。観光地ではないけれど、西北方向へ行く時に通る機会が比較的ある場所なので、春夏秋冬の移り変わりを楽しんでいる。

ここへにたどり着くには、小高い丘を越える必要がある。この湖はその丘を超えた頂上から徐々に見え始める。思いがけない景色で、最初に来た時は、うわっと思わず声を上げていた。ごく短い動画でも、雰囲気はわかってもらえるかと思う。

ここはサンドクラフタヴァトン(Sandkluftavatn)という湖で、最後にズームしたのはLangjöll (ラングヨークトル)という氷河の山だ。Langというのは英語のlongと同じ意味で、「長い氷河」という意味だ。地図を見ると一目瞭然で、長さ約20キロに少し細長く伸びている。

動画は読み込むのに少し時間がかかるかもしれないので、しばしのご辛抱を。その間にこの湖の位置を地図で確認すると少し楽しみが膨らむかも。

訪れたこの日は雲は少しあるものの、アイスランドでは珍しく無風の瞬間があり、水面が凪いでいた。

無風の時は周囲の景色が水面に美しく反射する。その前に立つと、まるでロールシャッハの絵を見ているような不思議な気持ちになる。

拡大して、少しゆったりした気持ちで見ると、水面に吸い込まれそうにならないだろうか。

   

写真上下の明るさを調整すれば、写真の上下を入れ替えても、現実と鏡の世界を見分けられないのではと思うほどだ。

もう少し先を行ってみよう。今度は、湖のすぐ横の道をドライブしていく。氷河や近隣の山脈が水面にでてくるのがよくわかる。

上の写真はスキャルブレイヅル(Skjaldbreiður)という山だ。ウィキによれば、「約 9,500 年前の 1 回の大規模かつ長期にわたる噴火で形成されたアイスランドの溶岩の盾」であるという。ここでの「盾」という言葉が理解できない。原文を見ると「shield」となっている。なるほど、シールドね。火山学界隈での用語がわからないので、このまま放置にしておこう。

この場所に降り立つと、泥の模様に心を惹かれた。

この年齢になって、泥の模様に惹かれるとは思ってもいなかった。水の波紋にも似ているけれど、水には見られないパターンもあり、このまま洋服にプリントすると、シックなドレスになりそうだと思ったりした。

ね、なんか面白いっしょ?!といってもiPhoneではなかなか質感や雰囲気が伝わらず、自分が写真家でないことを悔やむことが多すぎる。

たかが泥、されど泥。水との境の泥の模様は、なんで?という感じで特に興味深かった。海の生物の大群にも見えなくはない。自然の模様は思いのほかクリエイティブで、これではデザイナーもお手上げだろうし、だからこそ、芸術の多くが自然の模倣からくるのかと、しみじみと思った瞬間だった。

さて、次の動画も水面関係(笑)。水の透明度が高いので、陸との境目がわからず、彼は水の中に入っていきそうになっていた。

この情景も清々しく、こういった風景を見ていると、なんかもう世の中のドロドロしたことがどうでもよくなってくる(いや、どうでもいいと投げるのではなく、本来は是正に努力しなくてはいけないのだけれど)。

少し多めに動画や写真を掲載してみた。

サメタイ読者のみなさんは、日本の社会の動きに心を砕いて、きっと疲れているのではないでしょうか。写真や動画を見て、何か感想があれば、コメント欄にぜひ一言どうぞ。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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