注目の新刊!
第一回は9/4(月)夜、東京・渋谷で開催! オンライン参加も!

こちらアイスランド(139)迫力の落差200メートル!カラフルな秘境の渓谷Markarfljótsgljúfur 〜小倉悠加

この夏の「こちらアイスランド」は「だれも知らないアイスランド」になりつつある。東京の都心部に生まれ育った私は小さい頃から僻地に憧れた。現在こうしてアイスランドのあちこちを、それも観光地ではないマニアックな場所を回るようになり、三つ子の魂百までという言葉をあらためて噛み締めている。

無論、アイスランドに拠点を移してすぐにそうなったのではなく、まずはごく普通に1号線を使ったアイスランド一周を南回り、北回りと何周かこなした。その後徐々にマニアックな道を走るようになった。

最初は彼が選んだ場所についていくだけだった。そうするうちに地図を頻繁に見るようになり、地形や道を頭の中に入れ、路線場号のない野道までも好んで走るようになっていった。彼が運転好きでよかった。

アイスランドのレンタカーは地元の会社から

今年のアイスランドの夏は極端で、6月のレイキャビクは観測史上最も晴れの日が少ない月となり、翌月の7月は最も晴れの日が多かった。

とはいえ、毎日ずっと晴天である訳がなく、平日は晴れていたのに、週末が曇ってしまった時が一度あった。さて、この日は家にいるのかと思いきや、「曇っている以外に天候は悪くない(=風がなく気温もまずまず)。渓谷へ行こう!」と彼が言い出した。

その心は、渓谷は凹凸が激しい場所で、天候がいいと写真を撮った時に濃い影が出る。曇っている時の方が光線が均一で、素人でもきれいな写真が撮れるということだ。

向かったのはマルカルフリョゥツグリューフル(Markarfljótsgljúfur)という渓谷。いや峡谷なのか。渓谷と峡谷の違いを少し調べたけれど、どちらに当たるのか定かではないので、フツーに渓谷としておきたい。

この渓谷は2000年ほど前のカトラ山の噴火の影響でできた場所だという。カトラはミルダルス氷河の下にあり、噴火時には大洪水が起こる。その時に押し出された氷の塊が、ガシガシと地層を削り、このような地形を産み出すという。ホント?

この渓谷はレイキャビクから充分に日帰りできる距離にある。普通道の261号線からF261号線(Emstruleið)に入り、30分ほど走った距離程度の右手にMarkarfljótsgljúfurへの標識がある。

と簡単に書くけれど、途中で数カ所川を渡るので、実際に行く人は事前に川の水量や車の性能、自分の運転技術や川渡りに関する注意事項を心得ておいた方がいい。

ついでなので言及すれば、このF261号線を「非常に困難、車高の高い大型ジープのみ通行可能」と書いてあるサイトをよく見かける。けれど、普通のジムニーで全く問題ない。天気のいい日を選んでいるとはいえ、この道は何度か通っているし、問題があったことは一度もない。道が狭いので、大型車は道ギリギリで身動きが取れず、逆に運転が難しいのではと思う。あくまでも私感だけど。

以下の写真、空の感じが違うのは撮影日の違いです。晴れているのは2021年7月撮影。

話を戻そう。右手にMarkarfljótsgljúfurへの標識を見たら、そこから渓谷へと下っていく。道は石がゴロゴロしている箇所がある。「これ、本当に道なのか?」という感じではあるけれど、順路なので大丈夫。そうして走るうちに、10分強程度で駐車場に到着する。

こういう場所はキチンと分かりやすく「駐車場です!」という顔をしていないので、「これが駐車場かな?」と思ったら、まずそこが駐車場だ。

ちなみに、Googleの地図にはこの駐車場がキャンプ場として表示されることがある。キャンプ場は別にあり、ここは駐車場でしかない。駐車場に到着するとかなり古くなった標識があった。どうやら渓谷は3キロ続くらしい。渓谷は目の前にあるので、3キロ歩くという意味ではない。

駐車場までたどりつくことができれば、あとは適当に歩けばいい。対岸には数組のハイキング・グループがいた。近隣のキャンプ場からもってこいのハイキング・コースになっているようだった。渓谷を正面に、右手側へ進んだ方が全貌を見渡せると聞いたので、そちらの方へ歩いてみた。

左側(北側)の景色
右側(南側)の奥には氷河が見える
対岸にハイキング・グループの人々が見えている

対岸で必ず誰かが写真を撮っている場所がある。たぶん、滝や渓谷が見渡せる、いい感じのスポットではないかと思った。対岸まで行こうとは考えていなかったため、西側の岸にとどまることにした。それでも、駐車場を中心に左右500メートルから1キロずつを歩いた気がする。

地層がくっきりと見えるし、赤いところはたぶん火山由来の鉄分が多い場所かと思う(地学が詳しい人のコメントを期待したい)。緑の部分は夏なので苔やら草が生い茂っている。渓谷の底の部分はもちろん川の水。ただし、今年のこの時期はものすごく水が少なく、ほとんど干上がっているような状態に見えていた。

もう少し水があれば、対岸に見えていた滝はもっとゴージャスではなかったかと思う。

F261号線沿いには、ゴツゴツと険しい形の岩石や、小川や小さな滝などもあり、絶景が続く。ほとんどの場所から氷河の山も見える。この渓谷の周辺は標高400メートルで、一段と空気も爽やかになる。

レイキャビクから直行で2時間半の距離だ。渓谷を1時間程度歩き、行き帰りの道中、気になる景色で停車しても往復合計8時間程度だろう。あまり人が行かない絶景を探している人には、ちょうどいい冒険日になろうかと思う。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

筆者同盟の最新記事8件