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こちらアイスランド(167)おやつパラダイス!心に安らぎと幸せと楽しみをくれる日本の廉価菓子〜小倉悠加

日本のお菓子にはまっている。それも、デパチカのショーケースに飾られる「高級です。お値段お高いです。買える人を選びます」の面々ではなく、スーパーの安売りに大量に出されるあの子達だ。一昔前に言われた、百円菓子の類だ。

手軽でおいしい。最もシンプルで説得力のある存在ではなかろうか。

私も美味しいものが好きだ。食が細いため、大食いはしないし、できない。量を食べられないので、どうせ食べるなら美味しいものをいただきたい。

ジャンキーなものは好きではないし、滅多に食べない。けれど、アイスランドでは食の選択種が少な過ぎて、サバイバルのために食べざるを得ないことも多い。

食の選択、それも種類だけではなく値段もピンキリで豊富にある日本に戻り、そこでジャンキーな菓子を好むとは筋が通らない。と自分でも一瞬思ったけれど、うんにゃ、そうではない。

アイスランド滞在が長期化すると、食で本当に苦労する。頭が爆発しそうにイヤになる。私は海外の食事に関してあまり問題はなく、一年程度であれば日本食がなくても問題がない方だ。これが数年単位になると、さすがにフラストレーションが溜まってくる。アイスランドの場合は、まずは食事で頭にきて、つぎに小腹が空いた時の、「少しだけお菓子食べようかな」の選択がなくて泣く。

好きなクッキーはあるけれど、アイスランドでそれを買うとすぐに2-3千円になる。ケーキも一個千円以上で、現在は1200-1500円が相場だ。

お菓子に関しては、もしかすると私自身の好みのせいかもしれないとは思う。海外で売っているクッキーやビスケットの類が好きではないからだ。ただひとつ言えば、概して日本のチョコレートよりも海外のチョコレートの方が美味しい。これはありがたい。

日本にいた頃の夜のおやつは、大量買いしたクベルチュールのチョコと、おせんべいと決まっていた。

そう、アイスランドに決定的に欠如するのは煎餅だ。

米菓子の類がゼロかといえばそうではなく、アジア系の食品専門店へ行けば、中国やタイ製のせんべいもどきはある。ただし私の味覚には合わない。

どうしても納得のいく味を求めたい時は、自宅で炊いた残りご飯にごま油、醤油、胡麻を投入し、のして焼けば味は美味しい。米菓子ができる。舌触りは決してよくない。ひどく硬いし手間もかかる。

日本のせんべいの、あの軽快な、サクサク、パリパリというリズミカルで楽しい雰囲気とはほど遠い。

日本のスナック類がいかに充実しているかは、海外生活が長くなればなるほど身に染みる。ジャンクフードなるものをあまり食べない私でさえそう思う。もっとも、ジャンクフード歓迎の御仁であれば、海外のジャンクフードも難なく楽しめるのかもしれないけれど。

今回は日本滞在が長めであることから、いろいろなお菓子を試すことができてとても嬉しいし楽しい。栄養価や添加物等は二の次だ。なにせ100-300円程度で購入できる廉価のお菓子は、私の心に安らぎと幸せと楽しみとおいしさをもたらしてくれる。海外に出る前はショートニング入りの菓子はほとんど買わなかったが、今回はまぁ短期間だし、食べたいなら食べましょうと、原材料チェックには片目をつぶることにした。

前回、日本に来た時に気に入ったのが、「贅沢ルマンド」だ。ン十年ぶりにこの手の菓子に手を出した。思い返せば、これがきっかけで、今年のお菓子フィーバー(表現古い?)に繋がったのかもしれない。

ブルボンの贅沢シリーズがいけるということが分かり、次々と他のものにも手を出した。ブルボンで好きなのは「ルマンド」「ロアンヌ」「エリーゼ」「ホワイトロリータ」「ブランチュール」だ。全種類は制覇していないので、まだまだ好きなものが出てくる可能性はある。”贅沢”シリーズでは「ルマンド」と「ラングロール」の2点。他の種類も食べたが、私の趣味ではなかった。

そんな時、抹茶のシリーズが出てきた!うっひゃ〜。

これは今ここで食べるか、アイスランドに持ち帰るか、スーツケースのスペースとの相談になる。

それでも待ちきれず、抹茶ルマンドだけは封を開けた。去年、抹茶ルマンドが気に入り、買って帰ろうと思っていたのに、その後まったく見つからなくなったことを覚えている。毎年この抹茶シリーズは出るのだろうか?

甘いものはだいたいブルボンで間に合う。森永のクッキー・ビスケット類は横目に眺めつつ、「小麦だし、クッキーはアイスランドにもあるからいいや」でパス。その点、ブルボン製品は「日本ならでは!」的な企画の強さが際立つ。どこのスーパーでも置いているのもポイントが高い。

小腹が空いた時の中核であるおやつは、甘いものと塩気のあるものが欲しい。塩気のあるものとは煎餅類だ。ポテチやコーンスナックはいらない。

日本の煎餅がどれほど美味いかは、海外で「日本のせんべいもどき」を体験すれば如実だ。

アイスランド人の彼といっしょになった当初、せんべいを恋しがる私に「ほら、せんべいを買ってきたよ」とタイ製の小さなあられ煎餅が入っている袋を差し出した。私は遠慮したいと言ったが、当時の彼は細かい違いを知らなかった。タイ製のあられが入ったミックス・スナックは、ポテトチップルと比べると、ヘルシーでむしろ美味しいと思っていたという。

そんな彼の味覚も、日本に滞在してガラリと変化した。味の違いがわかっただけでも優秀だと言えるのかもしれない。違いがわからない外人も多いことだろう。

現在の彼は完全に日本の米菓子に洗脳され、タイ製や中国製は論外になった。

味覚は文化でもある。優劣ではなく慣れや味つけの違いでしかない。どちらが美味いかは主観でしかなく、タイの人からすれば、きっと日本製よりもタイ製の方が美味く感じるのではと思う。

私は特にこの煎餅が好き!というお気に入りはなかった。時々、どこかで買ったものが美味しくて、それを幾度かリピートすることはあった。けれど、絶対にこれでなくちゃ!というのはない。

そんな煎餅ジプシーが今回、理想の相手に出会った。それが「岩塚の黒豆せんべい」だ。

豆入りのせんべいは元来好きだった。以前にも黒豆入りのせんべいは出会っているけれど、これが一番美味しい!塩味が強過ぎず、黒豆の味がしっかりと伝わってくる。黒豆がこれほど優勢なせんべいがあっただろうか?ちなみに私は大の枝豆(大豆)好きだ。大好き過ぎて、小学生の時母が茹でるそばから枝豆に手を出し、夕食前に完食してしまったことが幾度あったことか。

今回の滞在はこの黒豆せんべいが甘辛の辛の中核となった。

甘辛の辛には、ベビースターラーメンも入れた。去年、味見もせず懐かしさだけで小袋をアイスランドへ持ち帰ったところ、ビールのおつまみに最高だった。かっぱえびせんも小学生の頃からのお付き合いだ。時々無性に食べたくなる。

”時々無性に食べたくなる”系のおやつが、手軽にスーパーで買えればいい。アイスランドではそれができないので、これも貴重品として持ち帰ることになる。

あとは、日本人には定番のおやつが数種類写真に写っているだろうか。

アイスランドに戻る支度をする時期なので、買い集めたものを写真にしてみた(食べかけの袋はご愛嬌)。

そんな安い、美味しい、手軽で申し分のない日本のおやつではあるが、一つだけお願いしたいことがある。それは包装だ。物価高とともに包装だけが変わらず、中身が少なくなっている。包装の形を変更するにもコストがかかるため現状維持が最善なのかとも思う。それにしても袋の半分がスカスカで、実質の中身が三分の一程度しかないなら、外袋は小さくしてもらえないだろうか。

包装が過大かつ過剰なことは、大いに気になる。

さて、この2ヶ月間、好きな時に好きな食べ物を、自由自在の価格で楽しんできた。外出時はいくらでもカフェやレストラン、飯屋があるし、夜中過ぎると前述のお菓子を好きなようにボリバリむさぼる生活をしてきた。この一週間ほどは近所のスーパーの値下げ時間を狙い、「安くて美味しい!」と母と楽しく食事を共にしてきた。

こんな生活が珍しかったのも最初の1ヶ月で、後半は普通のこととしてどっぷりと甘受してしまった。さて、果たして私はアイスランドに戻り、乏しい食生活に耐えられるのであろうか。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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