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こちらアイスランド(203)2025年シーズン初!高地の秘宝ランドマンナロイガルの温泉へ〜小倉悠加

大好きなアイスランドの内陸部の高地。今年もいの一番にかけつけたのが秘宝と呼ばれるランドマンナロイガルだ。彼の地への道路は少し前から閉鎖が解かれていた。とはいえ、まだ「通行不明」の状態。それでも閉鎖が解けたのだからきっと通れるよね、と行くことを決めていた。すると数日後に晴れて正式開通!

待ってました!フャットラバック(Fjallabak)と呼ばれる自然保護地域の山岳道(F道)のひとつが、正式に通れるようになった。

以下は2023年5月初旬に行った時のレポート。去年2024年も6月17日に行っていた。たぶん、2年連続は書かなくていいやと思い、レポートしなかったらしい。

2025年夏の道がオープンした。うれしいな、うれしいなぁ。フャットラバック大好き!

ランドマンナロイガルまでの最短コースの道はまだ閉鎖中なので、少し遠回りをすることになる。それでも、遠回りするからのお楽しみはあり、それが滝の銀座ともいうべきシグルドゥグリューブル(Sigöldugljúfur)というこの渓谷だ。

今回のアイキャッチに使った写真はここで撮った。前回のコラムと同じ場所で撮ることを思いつかなかったので、似たような場所で撮ったものをアイキャッチにした。

なんという水の色!いつもは青く見えているのが、太陽光のせいか緑に見えていた。あちこちから滝が流れているその様は、異様であり美しい。奥の方に水飛沫が見えているので、そこにも滝壺があるはずだ。

毎回この地に来る度に、「次回は時間を作ってあそこまで歩いてみよう」と言い続けてるので、次回は風呂は考えず、正式な道としては扱われないジープ道とこの奥の滝を探求することにしている。

道は開通したばかりだけあり、道路公団が道路を整備した直後なのでかなり走りやすい。とはいえ、未舗装の山岳道なので、ゴツゴツした溶岩の上も通れば、整備しきれず道路が傾いている場所などもある。

レンタカーは車を傷つけないようにとみんなノロノロ運転だ。自家用車とはいえ、我々もそれほどスピードを出せる訳ではない。こういう道は時速40キロが出ればハイウェー並みだ。道路公団が整備はするけれど、シーズン最後の時期は洗濯板状態になる道が多い。

今回はノイサポットルル(Hnausapollur)という火口湖の湖畔で持参したサンドイッチを食べた。周囲の道路が閉鎖されているため、寄り道する場所がここしかなかったのだった。

天気がよく、風も凪いでいたため湖面に何気なく映し出される空と雲が幻想的だった。小高い部分の切れ目から、さらに奥の山が見えたのも印象的だった。

彼が撮ってくれた上の写真がとても気に入っている。顔が見えないのがいい!

この湖の右手側はこんな感じだ。写真ではよく見えないのが残念なのは、地殻というか、地の表層というのか、地学用語がわからなくてもどかしいけれど、そういうクラストが肉眼ではしっかりと確認できるところがとてもいい。

ちなみに私は「卒業式に参加する父兄みたい」な格好をしていった。ユニクロの白い上下セットにスカーフを巻いている。みなさんには全くお勧めできない格好なので、真似しないようお願いします。

どんな格好をしても基本的にはいいけれど、雨風をまともに受ける出たちはアウトドアには向かない。それを認識した上での着用です。着替えもあるので大丈夫。

定点として毎回下車するフロスタスタズヴァトン(Frostastaðavatn)という湖の湖畔も、いつもに増して神聖でキリリとした空気をたたえていた。

このビューポイントは山の間のような部分にあり、背後を振り返るとそこにはこの地を通る時のシンボルのようになっているストゥトゥル(Stútur)というクレーターが見える。これを見ると、もうすぐでランドマンナロイガルだと思う。

雲ひとつない青空もいいけれど、モコモコっとした雲が広がっている様も悪くない。クレーターの縁は3歩ができるようになっている。

2024年6月には火口のふちを歩いた。その時の写真が以下。私が小さく真ん中に写っている。青いジャケットの人間がいるのがわかるだろうか。去年は小雨の中だったので、苔の色がしっとりと見えている。

アイスランドのレンタカーは地元の会社で

去年9月に来た前回、ここからの道のりがいかにガタガタだったかをよく覚えている。道は穴だらけで水が溜まり、川沿いの道は道路が川なのかと思うほどぬかるみ水浸しだった。あまりにも酷いのでニュースにもなっていた。走っていて不快極まりない道路となっていた。

さーて、どこまできれいにしたかな?と思いきや、とても走りやすく整備されていた。土の色が周囲と全く違うので、きっとどこかから土を運び入れて穴を全部埋めてきれいにしたようだ。

山岳道でも観光の目玉、レンタカー組が多い場所なので、さてシーズン終わりまでにどれほどいい状態で道が保てるやら・・・。

そして到着したランドマンナロイガルのサービス・センター入り口。ここにはキャンプ場、シャワーなどの施設、そしてハイカー憧れのハイキング・ルート、ロイガヴェーグル(Laugavegur)の出発点(または終点)となっている。アイスランドをよく知る人はご存知かと思うが、レイキャビクのメインストリートもロイガヴェーグルだ。

センター本部に到達するには、渡河が必要だ。ここは毎日一台車が死ぬと言われている魔の川であるため、私たちは徒歩で行く。徒歩用の橋がある。

到着してすぐに目の当たりにしたのは、見事にスタックした車だった。それも地元当局のサービスカー。あれ〜、当局の車でもやっちゃいましたか・・・。思うに、川の深い部分を避けようとして、泥沼にはまったようだった。冬の間に泥が溜まったのだろうか。

結局、大型の観光バスに引っ張り出してもらった。アイスランドの高地、あるあるの風景だった。

温泉やハイキングに向かう人々は、案の定水の中を歩いていた。去年はギリギリ靴を脱がずに進めたが、一昨年は靴を脱いでの行脚だった。

私はといえば、白い上下のスーツを着用している。およそアウトドアとは無関係の格好だ。

ビシっとかっこいいアウトドア・ウエアで身を固めた人々は、私を奇異な目で見ていた。彼らは川の中を歩くため、靴を脱ぎ、パンツの裾を引っ張り上げながら、私を見て「あいつアホじゃん!」という視線を投げかけた。

チチチチッ、君たちがいかに間違った感想を持ったかを、すぐに教えてしんぜよう。

私は靴下を脱ぎ、アンクル止まりのストッキングを膝上までクルっと上げ、ウォーターシューズに履き替えた。

スポーツ・ウエアー派は私を好奇の目で見ながら、川底の石の感触を素の足裏で確かめながら、ズボンの裾が濡れないように、不快な顔をしながらのろのろと進んでいく。

ところがだ、水に足を入れた私はそんな彼らを横目にサクサクと進む。膝上丈のスカートは濡れる心配がなく、ウォーターシューズなので川底の石が足の裏に突き刺さる不快な感触もない。自ずと進むスピードは速い。

彼らは狐に摘まれたような驚きで私を見ていた。どこからから「Wow、Look at that!」という感嘆の声が聞こえてきた。夫でさえ「そこまで考えて服を選んだの?」と尋ねてきた。

そうだよ、水の中を素足で渡る可能性を考えてスカートにしたんだもん。ね、アウトドアの服装はオールマイティには正解だけど、この場所に関しては膝上の服が一番扱い易い。そういうこと!えっへん!

当日のツイートを続けてどうぞ。

https://twitter.com/YukaOgura/status/1928981449245426007

そして到着したのがこの温泉。まだ水位が高いため、温水をこの温泉内に留めきれず水温が低い場所が多い。シーズン最後の方が温泉としての居心地がいいけれど、眺めは最高だ。

道が開通したばかりであることもあり、ひどい人混みではなかったし、10分間ほどではあったけれど、彼と二人きりの貸切状態でも温泉に浸かることができた。

その後は、「いつか歩いてみたい」とこの地に来る度に話しているハイキングコースのさわりだけを偵察に。

キャンプ場の本格的なオープンは6月20日に設定されている。駐車場は事前予約が必要で有料となる。この駐車場の有料化は去年から開始された。

これだけ利用者が増えてはそれなりの整備が必要だ。整備イコール費用が嵩むのは至極当然。駐車料金はごく良心的な金額なので、次に来るのが有料の時期であれば気持ちよく支払いたい。

一年ぶりのフャットラバック、やっぱり気持ちがいいな、最高だな。夏はハイランドしかない!という爽やかな興奮をまとって家路に着いた。

小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。